築10年を過ぎて、家のあちこちが気になり始めたあなた。
点検をしてもらったら、現状の傷みの原因は経年劣化だけではなく、「屋根断熱による結露です」と言われた。
屋根断熱が原因で結露が起きるってどういう事だろう…?
そう気になって調べているのではないでしょうか。
屋根断熱は、本来はお家を快適に保つための構造です。
しかし場合によっては、目に見えないところで結露を引き起こしてしまうことがあります。
この結露は天井裏などの換気が行き届かないところで発生します。
なかなか水滴が乾かず、気付きにくい場所でもあるため、お家の構造を傷める原因になる危険なものです。
この記事では、屋根断熱による結露とはどうして起こるのか、その原因と対処法から費用、工事業者の選び方まで解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、結露を気にしなくてよい快適なお家を実現しましょう!
目次
1章 屋根断熱とは
屋根断熱とは新築住宅を建てる際に屋根に行う断熱工事の一種です。
住宅で熱の出入りが最も多いのは、窓やドアなどの開口部で58%。それに次いで外壁が15%、屋根が5%です。
断熱効果を高めて省エネ住宅にするためには、外壁・屋根と開口部の断熱性能を強化すること、が重要となります。
■熱の流出割合(冬の場合)
出典:LIXIL
屋根断熱の方法は大きく分けて2種類で、
充填断熱工法(じゅうてんだんねつこうほう)という、垂木の間に断熱する方法と
外張り断熱工法(そとばりだんねつこうほう)という、垂木の上に通気層を作り断熱する方法があります。
■充填断熱工法
■外張り断熱工法
出典:アイケンホーム
屋根断熱を行う場合、上記のどちらの工法でも最も重要なのは通気です。
どんなに優れた断熱工法を採用しても、屋根(小屋裏)に溜まる湿気を逃がすための通気経路が確保されていなければ、断熱をしたことが原因で結露を起こすことがあります。
木造住宅の場合、結露は構造体を傷める原因となり、放っておくとお家の寿命を縮めてしまいます。
■結露が原因で腐った屋根
出典:透湿ルーフィング協会
昔の木造日本家屋は100年以上経ちいまだに現存するものもありますが、それは断熱施工がされておらず木材が乾燥した状態で保たれているおかげです。
現代の住宅は生活する上での快適性は格段に上がりましたが、それが原因の弊害も起きているのです。
高気密・高断熱にこだわったお家ほど、通気経路の確保には注意が必要です。
2章 屋根断熱で結露が起きる原因
屋根断熱で結露が起きてしまう原因は2つに分かれます。
- ①新築時の工事が原因の施工不良によるもの
- ②生活環境によるもの
です。
詳しく解説していきます。
2-1 施工不良
結露が起きる原因の1つが、新築時の施工不良によるものです。
単に建物の気密性能を高めると、お家の内側と外側で温度差が大きくなり、結露が起こってしまいます。
そのため屋根断熱を行っているお家は、内部に通気層を設けて屋根の頂部に「脱気棟」を取り付けることで湿気を逃がし、結露を防ぐ構造となっています。
■脱気棟(換気棟)
しかし稀に施工不備で、通気層や脱気棟を設置していない状態だと、湿気の逃げ道がなくなって、結露が発生してしまいます。
また、断熱材に湿気が行かないようにする天井面の「防湿層」がきちんと施工されず、隙間が開いてしまう施工不備もあり得ます。
この状態だと、隙間から湿気が上がって断熱層に溜まり、結露が起こってしまいます。
■屋根断熱の構造 出典:『建築知識』2016年5月号 ■透湿層を隙間なく貼る工事 出典:『建築知識』2016年5月号 |
施工不良による結露が発生した場合は、
脱気棟の設置(→3-5)か防水シートを透湿ルーフィングへ変える(→3-3)
という工事を行ないましょう。
施工不良が原因の場合、多くは築10年前後で何かしらの問題が出はじめます。
しかしいざ問題が出てから対処を、となると既に結露が原因の劣化が進行しているので、補修に多額の費用がかかります。
ご自宅が心配なときは無料で点検を行ってくれる工事業者もありますので、依頼をして気になる箇所のチェックを行いましょう。
2-2 生活環境(室内と室外の温度差が激しい)
外が暑い時期には常に冷房をしている、外が寒い時期には常に半袖で歩き回れる様な状態まで暖房をしている、などの室内と室外の温度差が極端な生活を1年中行っていると、結露が起きやすくなります。
単純に室内と室外の温度差が大きければ大きいほど、その境界での結露は起きやすくなります。
例え湿気を逃がすための通気経路を確保していたとしても、温度差が激しければ結露の可能性は高いままです。
コップの水と同じで、常に7分目しか入っていないコップと常に満水のコップでは、こぼれる確率は満水状態のコップの方が上がります。
室の内外の温度差を出来るだけ無くすことで、外壁や窓面だけでなく屋根も結露を抑える事ができます。
3章 結露対策と費用
実際結露が起きている、もしくは結露が起きていそうで心配な場合、結露対策にどんな事を行えば効果があるのか、またその対策に費用がいくらくらいかかるのか、目安をご紹介していきます。
結露対策 | 費用相場 |
換気をこまめに行う | 無料 |
エアコン、床暖房の使用 | 無料 |
透湿ルーフィングへ変える | 200万円~ |
換気口を設置する | 20万円~ |
換気棟を設置する | 15万円~ |
上記の結露対策は、2つ、3つと組み合わせて行う事でより高い効果を得る事が出来ます。
ご自宅の状況に合わせて取り入れてください。
3-1 室内の換気をこまめに行う
費用をかけずに自分で行える対策の1つは、室内の換気をこまめに行うことです。
結露は温度差が出来る箇所に起こります。
そのため室内の空気を入れ替えて外部と温度差を無くすことで、外壁面や窓面の結露だけでなく屋根の結露にも効果があります。
夏場、冬場ともに換気、通風を意識して行いましょう。
3-2 暖房はエアコンや床暖房を使用する
冬場の暖房器具を石油ファンヒーターなどの『燃焼型暖房』からエアコンや床暖房に変えるのも、自分で行える結露対策の1つです。
『燃焼型暖房』とは、石油や灯油を燃やして暖を取るもので、使うと水蒸気が発生します。
例えば、灯油ストーブで灯油を1ℓ燃焼させると、水分も同じ1ℓ排出されます。
部屋を暖めるために何時間か継続して暖房を続けると、その分水分量が増え、室内の湿度が上がり、結露しやすくなります。
いま燃焼型暖房器具を使用されている方は、エアコンや床暖房、オイルヒーターなどの、湿気を増やさない暖房を導入してみましょう。
■暖房器具の分類
例 | 結露対策 | |
燃焼型 |
| × |
外気吸入型 | ・エアコン | ○ |
放射熱型 |
| ○ |
3-3 防水シートを透湿ルーフィングへ変える
現状使用されている屋根の下地が通気性のないルーフィング(防水シート)の場合、透湿性のあるルーフィングへ変えることで結露対策をすることができます。
費用は200~300万円程度かかります。
※屋根の下地とは 屋根を支える骨組み(垂木など)の上に屋根本体をのせるために使用する材料です。主に①野地板(のじいた)と②ルーフィング(防水シート)のことを指します。 ■屋根の構造
出典:『建築知識』2014年11月号 |
通常屋根の防水シートは、安価で施工性が良い「アスファルトルーフィング」が多く使用されています。
それと比べて、「透湿ルーフィング」は200倍以上の透湿性を発揮します。
大きな集合体の水(雨水)を通さずに、微細な水蒸気のみを通過させます。
透湿ルーフィングに変えれば湿気を効果的に屋外に排出することができ、結露の発生をなくすことで野地板の乾燥状態を保つことができます。
出典:透湿ルーフィング協会
屋根材を一度全部剥がして葺き替える必要がありますので、工事費用は高額となります。
しかし、屋根を剥がす事で現状の状態の補修や問題点を全て解決できる可能性が高いので、根本的な解決をしたい方にはおすすめです。
一度に現状起きている結露の問題を解決したいのであれば検討してみましょう
3-4 換気口の設置
現状、お家に換気口が設置されていない場合、追加で設置する事ができます。
費用はおよそ20万円~かかります。
※足場代10万円~を含めた費用の目安です。2箇所設置したら40万円~かかるというわけではありません。
小屋裏や軒に近い箇所など、ほぼ2階程度の高さに施工することがほとんどなので、足場を設置しなければ工事が出来ません。
下の写真は比較的築年数の経つお家ですが、換気口は軒下の外壁に設けられています。
同様の形の家の場合、同じような個所に換気口を設けるのが一般的です。
お家の屋根形状や小屋裏があるかどうか、によって軒下や軒部分に設ける場合もあります。
※注意点 お家の外壁の素材や、家の造りによって換気口を開けられない場合や、費用が高額になる場合もあります。 事前に工事業者にお家の状態を見てもらいアドバイスをもらいましょう。 |
3-5 換気棟の設置
現状、屋根に換気棟が設置されていない場合、追加で設置工事を行う事ができます。
費用は1箇所あたり15万円~かかります。
※こちらも換気口同様に、足場代を含めた目安です。2箇所設置したら30万円~かかる、というわけではありません。
注意点 ・片流れ屋根(一方にだけ傾斜がある屋根、棟が無い) ・勾配天井(最上階の部屋に床と平行の天井がなく、屋根と同じ角度に傾斜した天井) を採用しているお家の場合、換気棟を設置できないケースがあります。 ■片流れ屋根 ■勾配天井 工事業者に事前にお家の状態を点検してもらい、工事が可能かどうか確認を行いましょう。 |
4章 失敗しない工事業者の選び方4つ
この章では、失敗しない工事業者を選ぶために、どんな点に注意してどういう基準で見たら良いのか、ポイントを絞って4つお伝えします!
せっかく費用をかけて工事をするのであれば後悔しない、納得する内容で行いたいとお考えの方も多いかと思います。
どんな会社に依頼すればいいのか分からない方は是非、参考にして下さいね。
4-1 点検を細かくしてくれる
まず一番大切なポイントは、最初に見積もりを依頼する際、現状のお家の状態を外壁、屋根合わせて1時間~1時間半程度かけて細かく点検をしてくれる会社を選ぶ事です。
後々、見積もり後に追加料金を請求される心配が無くなり安心です。
よく、「見積もりは家の状況を見なくても図面があれば出せるだろう」とお考えの方もいると思います。
しかし図面が今お住まいの家の現状と照らし合わせた際に、違っているケースもよくあります。
また、お家の状況は築年数や立地条件、建物を建てた大工さんの腕や使用している材料によっても劣化状況が変わってきます。
安易に「近隣の同時期に建てた、建坪も近いお家がいくらだったから、うちもそのくらいだろう」、と金額だけでの比較や判断は危険です。
現状のお家の状態に合わせた補修や、修理の方法が分かる様に、細かくチェックを行ってくれる会社を選びましょう。
4-2 写真と一緒に現状報告してくれる
次に大切なポイントは、点検時に撮った写真と一緒に報告を行ってくれる会社を選ぶ事です。
見積もり書の文章だけでは、どこのどの部分にどういう傷みがあって、その補修にいくらかかる、という説明を受けてもなかなか分かりません。
特に屋根断熱の問題は表面からは見えないことが多いので、ご自身では確認も難しいです。
現状のお家の状態を全て理解していて、実際に点検も屋根から外壁、全部自分の目で見て知っている、となれば話は別ですが、お家の状態を正確に把握するのは困難です。
そのため、見積もりの内容と整合性のとれた写真をきちんと用意して、報告を行ってもらうことが重要です。
本当に?と思った箇所は、心配であれば写真を見てチェックする事ができます。
また、後から気になった細かい箇所も見積もりの内容と照らし合わせて確認出来るので安心です。
4-3 金額よりお家に合った提案をしてくれる
3つ目に大切なポイントは、ご自宅に合った提案をしてくれる会社を選ぶ事です。
お家によって予算や今後の計画、どういう生活を送りたい、というライフプランがあるはずです。
例えば金額だけを比較して安さを重視して契約した場合、その時は安く出来て有り難い!と思うかもしれません。
しかし実は安かろう、悪かろうの内容だった場合、数年後にまた補修が必要になりあの時に安さだけで決めなければ…と後悔してしまいます。
また、勧められるまま良いものを高額で契約しても、あと何年住むか分からないお家であれば無理して高いものを選ぶ必要もありません。
屋根断熱に関係する工事は費用も内容もお家の今後に大きく関わります。
ご自宅のライフスタイルや今後の人生計画、予算、お家をどれくらいの期間もたせたいか、トータルして提案をしてくれるような会社を選びましょう。
4-4 工事実績が豊富な会社を選ぶ
屋根関連の工事実績が豊富な会社を選びましょう。
どの工事会社も、得意としている工事・分野があります。
その中でも依頼したい工事の実績が豊富であれば、様々な立地条件や事例、種類の絶対数が多い為、どんなお家の状況にも対応できるノウハウがあります。
工事をご検討されている物件に近い事例があれば安心して依頼する事が出来ます。
近年、工事実績はホームぺージで見ることが出来る会社が増えていますので一度はチェックしておきましょう。
また、ホームぺージを検索した時に見てほしいのは「お客様の声」の掲載です。
”写真付きのお客様の声が多い=個人情報を載せても良い、と納得したお客様の数が多い=良い工事を行う会社”という判断材料の1つになります。
まとめ
屋根断熱とはお家の気密性、断熱性を高める為に必要な工事です。
しかし、施工不備や住環境によって結露が生じる恐れがあります。
結露対策としては
結露対策 | 費用相場 |
換気をこまめに行う | 無料 |
エアコン、床暖房の使用 | 無料 |
透湿ルーフィングへ変える | 200万円~ |
換気口を設置する | 20万円~ |
換気棟を設置する | 15万円~ |
等の方法があり、費用は掛かりますが結露が実際起きていて、解決したいのであればルーフィングを透湿ルーフィングへ変える工事を行う事をおすすめします。
また、そこまで大掛かりな工事をしなくても、と思う方は実際に工事業者に点検を依頼し、比較的安価な工事でも結露が解消できるか状況判断をしてもらいましょう。
失敗しない工事業業者を選ぶためには以下4つのポイントを押さえ、良い工事業者を見つけて納得のいく工事を行って下さいね!
- ・点検を細かくしてくれる会社を選ぶ
- ・写真と一緒に現状報告してくれる会社を選ぶ
- ・金額よりお家に合った提案をしてくれる会社を選ぶ
- ・工事実績が豊富な会社を選ぶ
最後まで読んで頂きありがとうございました!