相見積もりや、工事業者と話をしている中で、「コーキング」や「シーリング」など、似たような言葉を耳にする機会があります。
これってどう違うの?
同じような作業に聞こえるけど…?
と、疑問に思う方は多いです。
きっと何かが違うのだろうとお思いかもしれませんが、実はこの2つ、基本的には「同じこと」なのです。
建築現場では特に、会社や年代によって言い方が変わり、また厳密に区別されていないため、今も2つの言い方がよく聞かれるのが実情です。
そこで今回は、コーキングとシーリングの意味から、その種類、コーキングとシーリングでできることまで、マルっと解説していきます!
お読みいただくことで、コーキングとシーリングの意味や作業内容だけでなく、実際の工事での理解にも役立つはずです。
工事でコーキング・シーリングが分からないまま進めて不安にならないように、しっかりと理解して安心して工事に臨みましょう!
目次
1章 コーキングとシーリングは同じ作業のこと
コーキングとシーリングは同じ作業のことです。
厳密に言うと、その違いを上げようとすれば、「通称」や「JIS K6800:1985「接着剤・接着用語」の規定」などで区別できますが、実際の建築現場では同じ作業として認識されています。
そのため、「あの人とこの人で言い方が違ったから、間違った工事をされるのでは?」と言った心配は無用です。
中には「シール工事」と言う会社もありますが、シール材を施工する=シーリングという意味で使用していることがほとんどなので、これも同じ作業と思って大丈夫です。
【通称での区別】 ・コーキング…チューブ状のものを絞り出して使う ・シーリング…あらかじめ形が決まっているものを使う |
【JIS K6800:1985「接着剤・接着用語」の規定による区別】 ・コーキング…「油性コーキング材」として解説:展色材(天然油脂,合成油脂,アルキド樹脂など)と鉱物質充てん(填)剤(石綿,炭酸カルシウムなど)を混合して製造したペースト状のシーリング材。相対変位の小さな目地のシールに使用される。 ・シーリング材…構造体の目地,間げき(隙)部分に充てん(填)して防水性,気密性などの機能を発揮させる材料。 |
【辞書サイト“コトバンク”による区別】 ・コーキング…[名](スル)防水などのため、継ぎ目やすきまを埋めること。 ・シーリング…建物の継ぎ目やひび割れなどの隙間を充塡すること。→コーキング |
2章 呼び方が違う3つの理由
同じ作業と言えど、なぜ2通りの言い方が同じように普及してきたかと言うと、背景には3つの理由があります。
単純に同じと言われても不安な方は、理由まで確認しておくとご納得いただけるはずです。
詳しく見ていきましょう。
2-1 業界によって呼び方が異なるため
この2つの言葉は、建築や外壁塗装業界以外でも使用されるため、業界によって呼び方が異なります。
そのため、どちらの言葉も無くなることなく今も使用され混在しています。
蒸気船の製造が盛んだった時代は、造船作業で行われるのは「コーキング」、蒸気機関の製造で行われるのは「シーリング」と言ったように、似た作業場(業界)で呼び方が違ったため、その名残で別業界でも混合して同じ意味として使われています。
2-2 業者も呼び方を統一していないことが多いため
同じ業界・業者であっても、呼び方を統一していないことが多いため、両方の呼び方が今も使用されています。
外壁塗装の工事だけでも、同じ会社の営業担当は「コーキング」と言うのに、施工の職人は「シーリング」と言うなど、社内でも言い方が統一されていないということは、ままあるからです。
どちらも間違っている訳ではないので、自分が言いなれた方を使用し続ける方が多く、その結果統一した呼び方をしないことが起きています。
2-3 材料の製品名も統一されていないため
コーキングとシーリングについては、各製造メーカーが出している製品の名前も統一されていません。
そのため、呼び方が片方で統一されることなく今まで来ています。
例えば、モノタロウという通販サイトで「コーキング剤」と検索してみるだけで、
「○○コーク(コーキングと呼ぶ原型)」も「○○シーラント(シーリングと呼ぶ原型)」も両方出てきます。
このように、製造するメーカーもコーキングや、シーリングと両方使って名付けるので、施工する側の言葉も統一されないのも1つの理由です。
【通販サイト:モノタロウの検索画面】 ▲「コーキング剤」と検索すると、「○○シーラント」や「○○コーク」という名前が両方出てきます。 |
3章 コーキング・シーリングでできる4つのこと
コーキングやシーリングでできることはいくつがあります。
よく「コーキングで埋める」や「シーリング処理する」などの言葉が使われますが、実際にどのような目的や効果のために使用されるか確認しましょう。
もし、これ以外の目的で使用されることがあれば、違う材料を使用していたり、他の作業のことを指している可能性もあるので、業者の説明と照らし合わせてみましょう。
3-1 ひび割れの補修
コーキング・シーリングは、ひび割れの補修目的でよく使用されます。
外壁のひびを埋める補修を行うことで、雨水などの侵入を防ぐためです。
大きなひび割れほどコーキング・シーリングでの補修が必要になりますが、密着するコーキング・シーリングでしっかりとすき間を埋めることで、ひびを補修することができます。
▲ひび割れ部分
▲コーキング・シーリングで埋めて補修します。 |
3-2 固定できる接着剤
コーキング・シーリングは、物を固定できる接着剤の効果も持っています。
例えば欠けてしまった屋根の瓦も、状態が良ければコーキング・シーリング材で固定し接着することができます。
その上から塗装工事ができるので、遠目からは気付かないくらいの修繕となり、接着剤の役割としても使用されています。
▲スレート瓦の屋根の欠けを接着しています。
▲釘頭を抑える固定のためにも使えます。 |
3-3 隙間のクッション材の役割
主にサイディング・ALCの外壁に多いですが、外壁材のボード間にコーキング・シーリングを入れます。
地震などの揺れがあっても外壁材同士がぶつかって簡単に割れないようなクッション材の役割があるためです。
力が加わったときに簡単に素材が割れないような効果のために、コーキング・シーリングが役立っています。
▲目地が左右の固いボードの間でクッションになっています。 |
3-4 雨漏り・水漏れの応急処置
雨漏りや水漏れの応急処置としての効果もあります。
水が出てしまう近辺をコーキング・シーリングで塞ぐことで、被害を一時的に抑えられるからです。
但し、水が漏れている原因を解決しないと、水の出口を塞いだことで他に水が回ってしまい、被害が広がるので、あくまで応急処置や一時的な場合にしか使用はしません。
▲ガラス採光の隙間から水漏れしていたので、コーキング・シーリングで埋めています。 |
4章 種類と適した施工箇所
コーキング・シーリングはお家の様々な所で使用されています。
そして、使用する場所も家の外と水回りなど、それぞれ環境が違うため、各場所に合った製品を使い分けしています。
【コーキング・シーリングが使用されている場所】
家の中・外の多くに使用されています。
コーキング材の種類の全体を大まかに分けると次のようになります。
図を見ると、種類がとても多いように見えますが、実際には全て使うわけではないので、“自分の家の工事に使うものがどれか”、”用途は適切か”という目線で見ると分かりやすいですよ。
4-1 定形・不定形
まず最初に、定型と不定形の2種類に分かれます。
・定形…決まった形の材料。水道のパッキンや配管の継ぎ目などに使用するリング状のものが多い ・不定形…材料を絞り出して埋めるように使用する。家の内外問わずよく使用される。 |
配管工事などではリング状やシール状の定型が多いですが、修繕などの目的では不定形のものが汎用性が高いため使用されます。
▲水道配管などでリング状のものが使われています。
4-2 1液・2液
コーキング・シーリング材は更に、「1液型」、「2液型」に分かれます。
この違いは
・1液型…自然と固まるタイプ。小さな工事から外壁塗装工事まで使用され、ホームセンターでも購入可能です。 ・2液型…硬化剤を混ぜないと固まらないタイプ。専用の材料と撹拌(混ぜること)が必要で、マンションやビルなど大型の工事で使用されます。 |
2液型はより専門的で、大量に作られるもののため、一般のご家庭では1液型が使用されます。
4-3 樹脂の種類と施工箇所
主に一般的な戸建て住宅の工事で使われる種類は、4つです。
種類と施工箇所・用途を知っておくことで、実際に自分の家で使用される材料が適切かどうかの判断をしましょう。
樹脂の種類 | 施工箇所・用途・特徴 |
シリコン系 | 浴槽や流し台などの水回りなど
|
変性シリコン系 | 屋外の窓サッシ回りやコンクリートのひび割れ補修、外壁の目地など
|
ウレタン系 | コンクリートのひび割れ補修、金属目地、通気・排気口周りなど
|
アクリル系 | ALCの目地や、内装の目地、モルタルのひび割れ補修など
|
例えば、外壁塗装に使うのに、シリコン系の材料を使用しますと言われた場合、適切な材料を選んでいるとは言えません。
特にシリコン系と変成シリコン系では名前が紛らわしいので、事前によく確認し、正しい施工をしてもらえるように注意しましょう。
5章 外壁塗装ならノンブリードタイプを使用する!
様々なコーキング・シーリング材の種類について説明してきましたが、もし外壁塗装のコーキング・シーリングでお悩みの場合は、必ず「ノンブリードタイプ」を使用しましょう。
外壁塗装では、コーキング・シーリングの上から一緒に塗装をすることでコーキング部分も紫外線劣化から守ることができますが、ノンブリードタイプを使用しないと不具合が起きてしまいます。
「ブリード現象」と言い、コーキング・シーリングの成分と外壁塗料の成分が合わないことでべたつきや汚れをまとって施工不良に繋がりますので、ブリード現象が起きない「ノンブリードタイプ」の材料を使用することが大切です。
施工業者には、「この材料はノンブリードタイプですよね?」と確認しておくことでブリード現象を防げますので、必ず工事前に確認しておきましょう。
▲ブリード現象:汚れをまとって黒ずんでいます。 |
※塗装をした後からコーキング・シーリング剤を入れる「後打ち工法」の場合はブリード現象を気にしなくて済みますが、コーキング・シーリング剤自体の耐久年数は劣ります。
まとめ
いかがでしたか?
紛らわしいかもしれませんが、建設業界ではコーキングとシーリングは同じ作業のことを指します。
呼び方が違う理由は、業界や業者によって呼び方が統一されていない、また製品名も統一されていないという点がありますが、基本的に同じ作業を指しますので、ご安心ください。
コーキング・シーリングでできることは主に4つ。
- ・ひび割れの補修
- ・固定できる接着剤
- ・隙間のクッション材の役割
- ・雨漏り・水漏れの応急処置
などです。
また種類も色々ありますが、適切な用途に沿ったものを選択することが重要です。
ちなみに外壁塗装なら、必ずノンブリードタイプを使用しましょう。
呼び方が違うと紛らわしいですが、正しいコーキング・シーリングの知識を付けて良い工事にしていきましょう!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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