
「うちもそろそろだとは思うけど……ふつう屋根塗装って何年ぐらいでやるものなの?」
「塗ったら何年くらい持つの?」
と気になる方も多いのではないでしょうか。
実は、屋根塗装がどのくらい持つかについては、明確な年数を一概に示すことはできません。
塗料や屋根材のカタログ上の耐用年数があっても、それがすべての住宅にそのまま当てはまるとは限らないためです。
なぜなら、屋根の劣化スピードは、屋根材の種類や使用されている塗料、さらには立地や気候などの環境条件によって大きく変わるからです。
同じ塗料を使っていても、地域や環境、施工状況によって持ち具合に差が出ることは珍しくありません。
そのため、「何年経ったからそろそろ」という判断ではなく、現在の屋根の状態をしっかり確認したうえで塗装のタイミングを見極めることが重要です。
屋根はご自身で確認しにくいため、何もしないまま放置してしまうと、将来的に大がかりな修繕が必要になる可能性があります。
そうならないためにも、専門業者による点検を受け、現在の状態や必要なメンテナンスを正しく把握しておくことをおすすめします。
この記事では、屋根塗装は何年ごとに行うのが適切か、屋根材別のメンテナンスの目安、塗装以外の対処法を、わかりやすく解説します。
今すぐ塗装が必要なのか、もう少し様子を見てよいのか、ご自宅にとってベストなタイミングを見極めるために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1章 屋根塗装の目安が何年かは屋根材によって変わる
「屋根塗装は10年に一度」と言われることもありますが、実際には屋根の素材によって、適切な塗装時期は異なります。
屋根材ごとに耐久性や劣化の進み方に違いがあるため、一律に「何年ごと」と判断するのは難しいのが現実です。
この章では、一般的な住宅に使われている代表的な屋根材ごとに、塗装が必要になる目安の年数や注意点をわかりやすくご紹介します。
1-1 スレート屋根(5〜10年)
スレート屋根の塗り替え目安時期は新築時から5~10年です。
スレート屋根は、多くの住宅に採用されている代表的な屋根材です。セメントを主成分としており、軽量で施工しやすいのが特長です。
表面の塗膜が劣化して水分を吸収するようになると、ひび割れや反り、コケの発生などさまざまな劣化症状が起こり、最悪の場合は雨漏りにつながることもあります。
1-2 セメント瓦(10年)
セメント瓦の塗り替え目安時期は新築時から10年です。
セメント瓦は、セメントを型に流して成形された屋根材で、重厚感のある外観が特徴です。
セメントには吸水性があるため、表面に防水目的の塗装が施されていますが、経年劣化によって塗膜が剥がれると雨水が浸透し、内部の腐食や雨漏りを招く恐れがあります。
1-3 モニエル瓦(10〜15年)
モニエル瓦の塗り替え目安時期は新築時から10~15年です。
モニエル瓦は、セメントと川砂を混ぜて作られたセメント瓦の一種で、軽量でデザイン性にも優れ、かつて多くの住宅で使用されました。
主成分がセメントのため吸水性が高く、防水のために塗装が必要です。
塗膜が劣化すると雨水が浸透し、内部の腐食や雨漏りを引き起こすリスクがあります。
なお、モニエル瓦は2010年に国内での生産が終了しているため、新品への交換ができません。
そのため、今後も長く使うためには適切なメンテナンスが重要です。
1-4 トタン屋根(5〜10年)
トタン屋根の塗り替え目安時期は新築時から5~10年です。
トタン屋根は、鉄板に亜鉛メッキを施した金属屋根で、軽量かつ施工しやすいのが特長です。
ただし、サビに弱いため、塗膜が劣化するとすぐに腐食が進行し、穴あきや雨漏りを引き起こすリスクがあります。
1-5 ガルバリウム鋼板(10〜15年)
ガルバリウム鋼板の塗り替え目安時期は新築時から10~15年です。
ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛の合金でメッキされた耐久性の高い金属屋根材です。
サビに強く、雨や雪による傷みにも強いことから、近年ではリフォームでもよく採用されています。
ただし、金属なので潮風の影響を受けやすい沿岸部では耐用年数が短くなる場合があるため注意が必要です。
1-6 和瓦(塗装不要)
和瓦は塗装不要ですが、漆喰や下地の補修が必要で、目安時期は新築時から10~20年です。
和瓦は、粘土を高温で焼成して作られた屋根材で、非常に高い耐久性と耐火性を持ち、半世紀以上使えるケースもあります。
屋根材自体は塗装不要ですが、漆喰の補修や、瓦を支える下地材の劣化、棟瓦のズレや落下などには注意が必要です。
2章 塗装が必要か判断する5つのポイント
屋根塗装は「何年経ったか」だけで判断できません。
年数だけでなく、環境影響などで劣化が進むからです。
屋根の劣化は見た目にもサインとして現れます。
ここでは、ご自宅の屋根に塗装が必要かどうかを判断するための5つのチェックポイントをご紹介します。
2-1 色があせている・ツヤがない
屋根の色が薄くなってきたり、ツヤが失われてきたり、雨が降ると水を吸い込んで色が濃くなる場合は、塗膜の劣化が進んでいるサインです。
紫外線や雨風の影響によって防水機能が失われている状態です。
そのまま放置すると、屋根材が水を吸いやすくなり、ひび割れや剥がれの原因になります。
塗装の寿命が切れている可能性があるため、再塗装を検討する時期といえるでしょう。
2-2 カビ・コケの繁殖
屋根に緑色、黄色、黒っぽい汚れや白い丸い汚れが見られる場合は、カビやコケが繁殖しているサインです。
これは屋根材が水分を吸収しやすくなっている証拠で、湿気がこもりやすい状態になっています。
特に北側の屋根は日当たりが悪く、カビやコケが生えやすいため、重点的なチェックが必要です。
そのまま放置すると屋根材が傷み、雨漏りの原因にもなるため、早めの洗浄や塗装が効果的です。
2-3 ひび割れや剥がれ
屋根材のひび割れや剥がれが見られる場合は、防水性能が低下している証拠です。
劣化が進行すると、そこから雨水が浸入し、下地材や屋根裏の木部が腐食する恐れがあります。
症状によっては塗装だけでは補修が難しいこともあるため、発見した場合は専門業者に点検を依頼することをおすすめします。
2-4 ズレや歪みがある
台風や地震の影響で、屋根材がズレたり、歪みが生じたりすることがあります。
また、瓦屋根などでは経年劣化によって固定力が弱まり、ひびや割れが原因でズレが起こるケースもあります。
ズレを放置すると、風で飛ばされたり落下したりする危険性があるため、早めの補修が必要です。
2-5 サビがある
金属屋根(トタン・ガルバリウム鋼板など)では、表面にサビが出てきたら要注意です。
サビが進行すると、屋根材に穴があき、雨漏りが発生するリスクが高まります。
特に潮風にさらされる地域ではサビの進行が早くなるため注意が必要です。
サビが見られたら、小規模でも早めに業者による洗浄や塗装などのメンテナンスを検討しましょう。
3章 屋根塗装に使われる塗料と選び方のポイント
屋根塗装を行う際は、塗料の種類によって、価格・耐久性・機能性が大きく異なります。
「安く済ませたい」「長くもたせたい」など、ご自宅の状況や予算、将来の住み方に合わせて、最適な塗料を選ぶことが大切です。
また、屋根は外壁に比べて紫外線や風雨の影響を強く受けるため、同じ塗料でも塗り替えの目安は屋根の方が2年ほど早くなるのが一般的です。
例えば、外壁で10年持つ塗料でも、屋根では6〜8年程度で塗り替えが必要になるケースがあります。
※ただし、実際の塗装時期は屋根材や現在の劣化状態によって異なります。
ここでは、代表的な4種類の塗料の特徴と耐用年数、単価相場をわかりやすくご紹介します。
3-1 ウレタン系塗料(耐用年数:約6〜8年)
耐用年数 | 約6~8年 |
単価相場 | 1,700~2,500円/㎡ |
主成分 | ウレタン樹脂 |
ウレタン塗料は価格が安く、密着性にも優れているため扱いやすい塗料です。
ただし耐候性がやや低いため、こまめな塗り替えが必要となります。
「まずは費用を抑えたい」「短期間での再塗装でも問題ない」という方に適しています。
3-2 シリコン塗料(耐用年数:約10〜12年)
耐用年数 | 約10~12年 |
単価相場 | 2,300~3,500円/㎡ |
主成分 | シリコン樹脂 |
シリコン塗料は価格と耐久性のバランスが良く、最も広く使われている塗料のひとつです。
耐水性・防汚性・透湿性にも優れており、結露が発生しにくい点も特長です。
「コストパフォーマンスを重視したい」「10年ごとにきちんと塗り替えを考えている」という方に適しています。
3-3 フッ素塗料(耐用年数:約15〜18年)
耐用年数 | 約15~18年 |
単価相場 | 3,500~4,800円/㎡ |
主成分 | フッ素樹脂 |
フッ素塗料は、高耐久で長持ちする高機能塗料です。
価格はやや高めですが、塗り替え頻度が少なく済むため、長期的には経済的です。
耐候性・防汚性に優れ、風雨や紫外線の影響を強く受ける屋根や、塩害のある地域にも適しています。
「できるだけメンテナンス回数を減らしたい」「過酷な環境にも耐えられる塗料を選びたい」という方に適しています。
3-4 無機塗料(耐用年数:約20〜25年)
耐用年数 | 約20~25年 |
単価相場 | 4,300~5,500円/㎡ |
主成分 | 無機物(セラミック・ケイ素など) |
無機塗料は、セラミックやケイ素などの無機成分を主原料とした高耐久塗料です。
炭素を含まないため、紫外線や熱による劣化が起こりにくく、塗膜が長持ちしやすいのが特長です。
また、塩分による腐食や塗膜の劣化にも強いため、海沿いなど塩害の影響を受けやすい地域でも安心して使用できます。
初期費用はやや高めですが、耐久性に優れているため塗り替えの回数を大幅に減らすことができ、結果的にトータルのメンテナンスコストを抑えられます。
特に塗装工事では、毎回必ず必要になる足場代(通常20〜30万円程度)も節約できるため、長期的に見ると非常に大きな差につながります。
さらに、他の塗料と異なり、屋根と外壁を同じタイミングで塗装しても、どちらも同じサイクルで長持ちするため、メンテナンス計画が立てやすいのも大きなメリットです。
「とにかく長持ちさせたい」「塩害地域に住んでいる」「将来のメンテナンス回数を減らしたい」という方に適した塗料です。
4章 劣化が進んだ屋根の正しいメンテナンス法
屋根の劣化が軽度であれば、塗装によるメンテナンスで十分対応できます。
しかし、劣化が進んでいる場合、また、下地に傷みがある場合は、塗装だけでは解決しないケースもあります。
屋根材そのものが劣化している状態で塗装をしても、ひび割れや破損のリスクが残ったままになってしまうため、根本的な解決にはなりません。
そのような場合に検討されるのが、「屋根カバー工法(重ね葺き)」と「屋根の葺き替え」です。
それぞれの特徴と違いを理解し、ご自宅の状態に合った方法を選びましょう。
4-1 屋根カバー工法(重ね葺き)
屋根カバー工法とは、元の屋根の上に新しい屋根材を重ねる工法です。
元々ある屋根を撤去しないため、工期が短い、廃材が少ない、費用を抑えられるというメリットがあります。
特に、スレート屋根など比較的軽量な屋根材に劣化が見られる場合に選ばれることが多く、屋根の下にある下地材がまだ傷んでいないことが前提です。
屋根カバー工法の費用相場は80~150万円です。
カバー工法で使われる屋根材はグレードにもよりますが、20年~40年ほどの耐久性があり、工事の回数を減らして長期的なコストパフォーマンスを良くしたい方にはおすすめです。
ただし、屋根カバー工法は元々の屋根を残すため重量が重くなり、耐震性が低下する恐れがあるため、建物にかかる負担が十分に耐えられるかどうか、構造から判断する必要があります。
▼カバー工法の様子。既存の屋根の上に防水シートを被せ、さらにその上に新しい屋根材を載せていきます
4-2 屋根の葺き替え
屋根の葺き替えは、既存の屋根材と下地をすべて撤去し、新しい屋根材に張り替える工事のことで、下地も新しく張り替えることが一般的です。
初期費用は高めですが、屋根の性能を向上させ、建物の寿命を延ばす効果があります。
また、元々の屋根材が和瓦など重い屋根の場合は、軽量の屋根材に葺き替えることで、耐震性を向上させることができます。
葺き替え工事にかかる費用は、元の屋根の種類により撤去・処分費に差が出るため、一般的な30坪のお家でも90~250万円と幅があります。
屋根の葺き替え工事が必要になる目安は、築30年程度とされています。
ただし、実際のタイミングはそれまでのメンテナンス状況や劣化の進行具合によって前後するため、一律ではありません。
定期的に塗装などのメンテナンスを行っていても、屋根材や下地(野地板や防水シート)には必ず寿命があり、いずれは葺き替えが必要になることを前提に考えることが大切です。
5章 まずはプロに点検を!信頼できる業者を見分ける4つのポイント
「高いところは平気だから、自分で屋根を点検してみようかな」
そう思われる方もいるかもしれませんが、一般の方が屋根に上るのは非常に危険です。
一般的な2階建て住宅の屋根は、地上から6〜8メートルほどの高さがあり、傾斜もきつく、足元も不安定です。
さらに、屋根の表面にはコケや汚れが付着していることも多く、想像以上に滑りやすいため、バランスを崩して落下する危険性があります。
また、歩いた場所によっては屋根材が割れたり、傷んだりする可能性もあります。
このように、自分で点検をしようとすること自体が落下や屋根の損傷といった大きなリスクを伴いますので、屋根点検はプロに任せるのが、安全かつ確実な方法です。
専門業者は、訓練を受けたうえで、安全装備を整えて点検を行います。
ここからは、安心して任せられる、信頼できる業者の選び方をご紹介します。
5-1 実績や提案力があるか
信頼できる業者かどうかを見極めるためには、ホームページで施工事例や実績が公開されているかどうかを確認しましょう。
目安として、1,000件以上の施工実績がある業者であれば、経験や技術力があり、地域での信頼を積み重ねてきたと判断できます。
実績のある業者は、屋根の状態だけでなく、お住まいの状況やご家庭の予算も踏まえた柔軟な提案をしてくれます。
一方で、「今すぐ工事しないと危険です!」と根拠なく不安をあおり、高額なプランばかりをすすめる業者には注意が必要です。
見積書の内容や提案の幅を比較しながら、「本当に自分に合った提案かどうか?」を冷静に見極めることが、後悔のない業者選びにつながります。
5-2 地元に店舗があるか
屋根工事や点検を依頼するなら、地元に店舗があるかどうかも大切なチェックポイントです。
点検後に不具合が見つかったり、施工後に気になることが出てきたりしても、近くの業者であれば迅速に相談・対応してもらえる可能性が高く、アフターフォローの面でも安心できます。
「困ったときにすぐ相談できる距離感」は、信頼して長く付き合える業者を選ぶうえで欠かせない要素です。
対応の早さや柔軟さに強みのある、地域密着型の業者を選ぶとより安心です。
5-3 点検写真を細かく撮ってくれるか
信頼できる業者は、点検の際に屋根の状態を詳細に写真で記録してくれます。
しっかり点検すれば、30枚以上の写真を撮るのが一般的で、どの部分がどう劣化しているのかが分かるよう、丁寧に説明付きで写真を撮ってくれる業者を選びましょう。
最近では、ドローンを使用して屋根全体を撮影する業者も増えており、屋根に直接上らずに点検できるため、屋根材を傷つける心配がありません。
安全かつ正確に点検してくれるかどうかも、大切なチェックポイントです。
5-4 火災保険の活用提案があるか
台風や大雪などの自然災害による破損の場合、火災保険を活用できる可能性があります。
そのことをしっかり説明し、手続きのサポートまでしてくれる業者は信頼できるでしょう。
ただし、「火災保険が使えるから無料で直せます!」と最初から言い切るような業者は悪質なケースもあるため注意が必要です。
屋根点検は、プロに任せることで安全性も正確性も格段に高まります。
無理に自分で確認しようとせず、まずは信頼できる業者に無料点検を依頼して、現状を正しく把握することが大切です。
まとめ
屋根は普段なかなか目にする機会がないため、劣化に気づきにくい場所です。
しかし、そのまま放置してしまうと、雨漏りや大がかりな修繕工事につながる恐れもあります。
屋根塗装の時期は、「築何年か」だけでなく、屋根材の種類や劣化の状態によっても異なります。
また、使用する塗料によって耐用年数や費用にも差が出るため、今後の暮らし方に合わせた選択が大切です。
もし劣化が進んでいる場合は、塗装だけでなく、屋根カバー工法や葺き替えといった選択肢も視野に入れる必要があります。
そして何より、屋根の点検は自分で行うのではなく、専門の業者に任せることが安全かつ確実です。
信頼できる業者を選び、現状を正しく知ることが、住まいを長持ちさせる第一歩となります。
「うちはまだ大丈夫かな?」と感じたそのときが、屋根と向き合うちょうどいいタイミングかもしれません。
まずは屋根の状態を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。
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