住み始めてから数年経ったときに、ふとご自宅の外壁を見てみると、なんだか継ぎ目の部分が随分と汚れて見えるような…
または業者から指摘を受けて、初めてまじまじと見たという方もいるかもしれません。
その部分は「コーキング」(またはシーリング)と言い、よく見てみると家のあちこちにあるものです。
実はこのコーキング、とても重要で、なくてはならないものなんです。
そこで今回は、そんな気になる“コーキング”について徹底的にお伝えします。
この記事を読んでいただくことで、外壁のコーキングに関する全般が分かります。
知識があることで、ご自身のお家に適切なメンテナンスができますし、適切なメンテナンスができるということは、損や失敗をしなくなることに繋がります。
せっかく気になったコーキングのことです、しっかりと知識を得て重要性を理解し、正しいメンテナンスで大切に維持していきましょう。
目次
1章 コーキングの役割と重要性
コーキングは、サイディングやALC外壁のボード同士のつなぎ目や、サッシ回りにある、半練りのゴム状の物を言います。
何のためにあるのかいまいち分かりづらいかもしれませんが、ボード系の外壁には必須のもので、大事な役割と重要性を持っています。
1-1 役割は防水と耐久性のUP
このコーキングの役割は2つあります。
- ・雨水の侵入を防ぐ『防水性』
- ・地震の揺れや熱膨張の動きでも緩衝力で支える『耐久性』
この2つの機能を持っていることで、より外壁が傷みにくく長持ちします。
防水性
サイディングボードのつなぎ目やサッシ周りにピッタリと密着していることで、雨を家の中に浸水させることなく、防水する機能です。
耐久性
地震の揺れや、夏の暑さによる熱膨張が起きてサイディングやサッシに動きが出ても、緩衝材となり耐える機能です。
コーキングが良い状態であればあるほど、この機能がしっかりと働いてくれます。
1-2 劣化すると外壁の寿命が縮む
コーキングが劣化すると、外壁自体の寿命が縮んでしまいます。
もし防水性や耐久性が失われたら、外壁自体を雨や揺れから守れなくなり、ボロボロにしてしまうからです。
コーキングの隙間から雨水が入れば外壁材を傷めて、崩れることもあります。
同じくサッシ周りから水が入れば、雨漏りや木材を腐らせてしまう原因となり、修理に莫大な費用が掛かります。
そういった最悪の事態から守ってくれるのがコーキングです。
それくらい、コーキングは大切なパーツなのです。
▲コーキングの間から雨水を吸い続け、コーキングもサイディングも劣化した結果、どちらも割れてしまった事例。
こうなるとサイディングは元に戻せず、張替えになります。
▲コーキングの隙間が雨を吸い続けるとサイディング自体が反り返ってしまい、元に戻らなくなるため、張替えが必要です。
▲コーキングの隙間から雨が入り続けると、躯体の木部まで腐らせてしまいます。
2章 コーキングの劣化症状と対策一覧
コーキングの劣化症状は、築後5~10年で必ず出てくるものです。
ですが、“症状が出てくる時期”は、あくまで目安です。
“日当たりの良い平地”と“寒暖差が大きい山際”では環境が異なるため、劣化症状の出方も違ってきます。
家の立地条件で劣化の時期は異なるため、時期だけではなく、実際に出ている症状で判断をしましょう。
2-1 肉痩せ・ひび
肉痩せやひびは、コーキングが劣化により、厚みや弾力がなくなることです。
今すぐ何かしなければという症状ではありませんが、劣化の初期症状と覚えておくと良いでしょう。
▲肉痩せ
▲ひび
出てくる時期
築後5年~6年
原因
経年劣化で、コーキングの表面が溶け出し厚みが減る。新築時の施工不良も原因になる。
太陽の紫外線による劣化でひびが起きる。
対策
状態が良好なら経過観察か、コーキングを上から充填する“増し打ち”を行う。
2-2 剥離
剥離は、コーキングの接面部分が剥がれて隙間が空いている状態です。
経年劣化が原因のものもあれば、施工不良の場合もあります。
隙間が空いていると、雨水がつたって家の中に入ってしまうため、対策が必要です。
出てくる時期
築後6年~
原因
経年劣化
プライマーという接着剤が不足していた
3面接着という施工不良が起きていた
外壁の動きにコーキングが耐えられなかった
対策
コーキングの“打ち替え”を行う。
打ち替え時に接着剤のプライマーをしっかり入れる。
3面接着という施工をしないように下地を直してからコーキングをする。
2-3 破断
破断とは、コーキング自体が裂けて中が見えてしまうような状態です。
コーキング自体の劣化が主な原因で、ここまで割れてしまったら、新しいコーキングを早め打ち替えしないと、家の内部まで傷める原因になります。
出てくる時期
築後6年~
原因
経年劣化
コーキング材の厚み不足
対策
コーキングの“打ち替え”を行う。
厚みがちゃんと確保できる状態か確認し、万一初期の施工不良で難しい場合は、“ブリッジ工法”で対応する。
2-4 欠落
欠落とは、コーキングが既に剥がれ落ちてなくなってしまっている状態です。
経年劣化や、まれにプライマーという接着剤が不足している施工不良で起きてしまいます。
欠落してしまうと守るものが何もない状態なので、早急な対応が必要です。
出てくる時期
築後7年~
原因
経年劣化
プライマーという接着剤が不足していた
コーキング材の選定ミス
対策
コーキングの“打ち替え”
既にコーキングの役割を成していないので、早めの工事が望まれる。
2-5 黒ずみ
黒ずみは、塗装をした後なのに、コーキングの部分だけが汚れて黒っぽく見えるものです。
適切なコーキング材を使用していれば問題は起きませんが、相性を誤った材料の使用や、悪い施工方法をすることで起きてしまいます。
出てくる時期
塗装後、数か月
原因
可塑剤(かそざい)という成分が入っているコーキングの上から塗装をしてしまうと起きる「ブリード現象」。
表面がベタつき、汚れを集めやすくなる。
対策
打ち替えをして「ノンブリードタイプ」のコーキング材にしてもらう。
一時的な対策として、“可塑剤移行防止剤”を塗る。
▲ノンブリードタイプのコーキング
3章 施工種類・方法・費用の比較
コーキングの施工の種類や工法について説明します。
主に4種類あり、それぞれの特徴があるので、比較しながら見てみましょう。
違いや特徴を理解することで、ご自身の家に合った適切な施工方法が分かります。
3-1 4つの工事種類と費用の比較
コーキングの工事には4種類あります。
それぞれの特徴は、このようになっています。
・「増し打ち」、「打ち替え」…塗装時によく使用される工法です。
・「カバー工法」…耐久性を上げたい、メンテナンスをこまめにしたくない方向けです。
・「ブリッジ工法」…構造上、コーキングの厚みが付けられない時の処置です。
増し打ち
増し打ちは、既存のコーキングを剥がさず、上からコーキング材を充填する方法です。
既存のコーキングの状態が良い場合や、窓やドアのサッシ回りに対して行います。
★窓などのサッシ回りは基本的に増し打ちです
打ち替えでカッターを入れると、誤って奥の”防水紙”を切ってしまいやすい場所のため、ほとんどは増し打ちの対応となります。
打ち替え
打ち替えは、既存のコーキングをきれいに剥がしてから、新しいコーキングを打ち直す方法です。
増し打ちより手間が掛かりますが、コーキングが新品になるので、その分持ちも良くなります。
カバー工法
出典:シャイン
カバー工法は、厚みを確保できない目地や、もうコーキングのメンテナンスをしたくない方におすすめです。
コーキングを取り除き、空いたスペースを金属でカバーをしてコーキングの代わりにし、割れや雨水の侵入を防ぎます。
表面の金属カバーによって、紫外線でのコーキング劣化も防げるので、こまめなコーキングのメンテナンスも不要になります。
ブリッジ工法
出典:防水市場
ブリッジ工法は、構造上厚みを確保できない目地に対して行います。
コーキング材を他の部材を使って厚みを形成するので、カバー工事と比較すると安価にできるのがポイントです。
3-2 先打ちと後打ち
コーキングの施工手順には、「先打ち」と「後打ち」の2種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自身が気になる仕上がりと比べて良いと思う方法を業者に相談してみましょう。
| メリット | デメリット |
先打ち | コーキングの上に塗装をするので、塗膜が紫外線や雨風から守ってくれる。 | コーキングが伸縮すると上の塗膜表面が割れて、見た目に影響がでることがある。 |
後打ち | コーキングの上に塗膜がないので、伸縮による塗膜割れなどの不具合が起きない。 | 塗膜の保護がないので、劣化が早くなる。 |
※先打ち・後打ちで費用が変わることはありません。
先打ち
先打ちは、外壁を塗る前の段階でコーキング作業をすることです。
先に打っておくと、コーキングの上から塗装ができるので、色の違和感がなくなり、コーキング自体も塗膜によって紫外線や雨から守られます。
そのためコーキングの寿命自体も長持ちします。
ただし、コーキングは塗膜よりも伸縮性が良いので、それに塗膜が追い付けず数年で表面塗膜にひびが入る可能性があります。
コーキングの色自体もできるだけ塗装に近いものにしておくと悪目立ちしなくて済みます。
▲コーキングの色をベージュ系に、外壁の色もベージュ系に。
表面の塗膜が割れても、コーキングも同系色なのでひびが目立ちにくいです。
後打ち
後打ちは、外壁を塗った後の段階でコーキング作業をすることです。
コーキングが紫外線や雨からのダメージを直接受けるため、先打ち工法よりも劣化が早くなります。
またコーキングの色もそのままのため、外壁に馴染む色のコーキングを使用しないと返って悪目立ちしてしまう可能性があります。
▲外壁とコーキングの色に差があり、コーキングが目立っている例
塗料メーカーの多くは、先打ち工法で生じる塗膜の割れや、塗料とコーキングの相性に関しては施工する人間のチョイスなので責任が持てず、後打ちを勧めています。
ですが、仕上がりの色味や劣化の速さを考えると、先打ちの方がコストパフォーマンスが良いのでおすすめです。
4章 コーキングの施工手順
ここでは、コーキングの「打ち替え」施工手順をプロのやり方で解説します。
コーキングがちゃんと施工できていないと見た目も悪く、万一家の中に雨水が浸水してしまうと早期劣化に繋がりますので、丁寧な作業が必要です。
作業期間は2~3日程度です。
コーキングが多い家かどうかによっても異なってきますが、プロの場合、どんな家でも大体3日程度あれば完了します。
■工程と日数
1日 | 古いコーキングの撤去 マスキング貼り付け |
2日目 | コーキングの打ち込み マスキングの撤去 |
3日目 | 片付け |
※お家の大きさや目地・施工箇所の数により多少異なります。
①劣化しているコーキングを切り取る
外壁とコーキングの間にカッターなどの刃を入れ、劣化しているコーキングを切り取ります。
外壁を傷つけないように注意して行い、古いコーキングがサイディングに残らないように、丁寧に撤去します。
②マスキングテープをコーキングの両サイドに付ける
コーキングを打ち込む両サイドに、マスキングテープを貼り付けます。
マスキングの端を折り込むと最後に剥がしやすく作業効率が良いです。
凹凸のある外壁には、しっかりと密着させて貼り付けます。
③プライマー(接着剤)を塗る
サイディングの断面にシールプライマー(接着剤)を塗ります。
コーキング材が密着するようにしっかり塗り、30~40分ほど乾燥させます。
④コーキングを打ち込む
コーキング材をセットし、溝に沿ってコーキングを充てんします。
たくさん出しすぎるとはみ出してしまうので、適度な圧で注入するコツが必要です。
⑤ヘラで均(なら)す
打ち込んだらすぐにヘラで均します。
ヘラを奥に押し込むように、空気が入らないように均すのがポイントです。
こうすることで、隙間なく奥まで充てんします。
⑥マスキングを剥がす
均したら時間を置かずにマスキングテープを剥がします。
中途半端に乾いてから剥がすと、コーキングがテープに引っ張られ、仕上がりが汚くなってしまいます。
⑦完成!
きれいにしっかり目地が埋まったコーキングです。
☆どうしても手が届く範囲をDIYでやりたい!という方は、こちらの記事をお読みください。 |
5章 DIYがおすすめできない3つの理由
少しだけの補修ならDIYでやりたい!という方もいるかもしれませんが、DIYでのコーキング施工はおすすめできません。
危険が伴い、品質も落ちてしまうためです。
コーキングは命を懸けてまで自分でやるものではありませんので、なぜDIYはダメか理解した上で、業者へ依頼をしましょう。
5-1 高い場所は施工できない
高い場所のコーキングの施工はDIYではできません。
コーキングの目地は2階や屋根の近くまであるので、はしごを使った作業をすると、落下の危険が非常に高いためです。
専門業者でも、高所作業は必ず足場を組んで、安定した環境で行います。
2m以上の高所作業は足場が必要と労働安全基準法でも定められています。
かといって1階の手が届く範囲だけをDIYをしたところで、雨は高いところから下に流れるので、2階周りが補修できていなければ意味はありません。
高い場所が施工できないDIYは、意味がないうえに危険が伴うのです。
5-2 塗装までの一時しのぎでしかない
DIYでコーキングの補修をしても、塗装工事までの一時しのぎでしかありません。
コーキングが補修しなければいけないほど劣化しているなら、外壁も劣化が進んでいるということです。
そのため、コーキングだけを補修しても、数年以内に外壁塗装をするタイミングがやってきます。
苦労してDIYをするくらいなら、プロに外壁塗装を依頼することを視野に入れて考えた方が労力も少なく済みます。
5-3 失敗しやすい
コーキングは、家によってはとてもたくさん必要な場合があります。
広い範囲を素人がやろうとすると、非常に失敗しやすいです。
脚立やはしごを使った作業は不安定で、正確性に欠けます。
プロでも、しっかりと手順を踏んで、安定した環境で作業することで初めて品質が保たれます。
また数年後に塗装をすることになった場合は、自分でどんなコーキング材を使ったかによって、利用できる塗料が制限されたり、せっかくやったコーキングを全て撤去しなくてはいけなくなったりするリスクもあります。
DIYでコーキング補修することは、何かと不具合や不都合・事故を生み出す素になってしまい、結果失敗につながることが多いのです。
6章 コーキングメンテナンスは塗装と一緒がおすすめ!
コーキングのメンテナンスは、塗装と一緒に行うのが一番おすすめです。
おすすめの理由は
・足場代が1回分で済む
・プロに高所や細部までしっかりとメンテナンスしてもらえる
・塗装と一緒に行うことで、コーキングも長持ちする
・家全体のメンテナンスをすることで、傷みが出にくくなる
という点があります。
家全体のメンテナンスを行うことで、コーキング以外も長く良い状態を保てます。
コーキングの手入れが気になったときは、塗装のメンテナンスと一緒の工事を検討するのがおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
外壁のコーキングの役割は2つ、お家の
- ・『防水性』
- ・『耐久性』
のために非常に重要な場所です。
もしコーキングの劣化を放置してしまうと、外壁材や家の木材自体が傷んで家がボロボロになってしまいます。
そのため、コーキングの劣化症状と対策を知りましょう。
症状 | 対策 |
肉痩せ・ひび | 状態が良好なら経過観察か、コーキングを上から充填する“増し打ち”を行う。 |
剥離 | コーキングの“打ち替え”を行う。 打ち替え時に接着剤のプライマーをしっかり入れる。 3面接着という施工をしないように下地を直してからコーキングをする。 |
破断 | コーキングの“打ち替え”を行う。 厚みがちゃんと確保できる状態か確認し、万一初期の施工不良で難しい場合は、“ブリッジ工法”で対応する。 |
欠落 | コーキングの“打ち替え”。 既にコーキングの役割を成していないので、早めの工事が望まれる。 |
黒ずみ | 打ち替えをするときは「ノンブリードタイプ」のコーキング材にしてもらう。 一時的な対策として、“可塑剤移行防止剤”を塗っておく。 |
施工種類・方法の比較については以下のようになります。
※足場代別
また工法手順として『先打ち』『後打ち』がありますが、打った後に塗装ができる、先打ちをおすすめします。
コーキングの施工手順は次の通りで、プロであれば、およそ2~3日でできます。
- ①劣化しているコーキングを切り取る
- ②マスキングテープをコーキングの端に付ける
- ③プライマー(接着剤)を塗る
- ④コーキングを打ち込む
- ⑤ヘラで均(なら)す
- ⑥マスキングを剥がす
- ⑦完成!
またDIYコーキングはおすすめできず、その理由は3つあります。
- ・高い場所は施工できない
- ・塗装までの一時しのぎでしかない
- ・失敗しやすい
以上の点から、おすすめできません。
そういった点も含めて、コーキングメンテナンスは塗装と一緒に業者に任せるのがおすすめです。
- ・足場代が1回分で済む
- ・プロに高所や細部までしっかりとメンテナンスしてもらえる
- ・塗装と一緒に行うことで、コーキングも長持ちする
- ・家全体のメンテナンスをすることで、傷みが出にくくなる
という利点があります。
折角お家のことを思ってメンテナンスするなら、コーキングと一緒に塗装工事も視野に入れて検討するとよいでしょう。
お読みくださりありがとうございました。
◆コーキングが気になり始めたら、お家全体もチェックしてみましょう。症状は早期発見が大切です。
外壁はプロによる点検が必要!内容・チェックポイントと業者の選び方