パワーボードのお家にお住まいのあなた。
良いお家を選ばれましたね!
新築時に、「この外壁は耐久性や断熱性に優れていて、60年もつ、とっても良い建材ですよ!」と説明を受けた方は多いと思います。
ですが、この記事を見ているということは、通りがかりの業者やハウスメーカーから
「そろそろ塗装の時期ですね」と話が上がり、
「良い物だと聞いていたのに、塗装をしなきゃダメなの?」「本当に今なの?」と、疑問にお持ちなのかもしれません。
そこで今回は、パワーボードの良さと、塗装のタイミング、メンテナンス費用などをマルっと解説します。
最後まで読んでいただくことで、ご自身のお家をいつ塗装すれば良いのか判断がつきますし、更には塗装工事の注意点を押えておくことで、正しい工事をして永く良い状態が保てますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1章 パワーボートとは
パワーボードとは、そもそもどんな製品なのか改めてご説明します。
パワーボードは、主に外壁に用いられる建材で、身近な言い方をするとALC(軽量気泡コンクリート)の一種です。
元はスウェーデンで開発された建材ですが、日本では旭化成建材株式会社が製造・販売する“ヘーベルパワーボード”という製品が有名で、重厚感やスタイリッシュさが出せる、おしゃれな外壁ボードです。
【他の外壁材との比較】
1-1 パワーボードの特徴
パワーボードの特徴は大きく分けて以下の4点です。
・断熱性・防火性・遮音性に優れている
・コンクリートや窯業系サイディングよりも軽いので、耐震性が高い
・ALCの中でも厚みは薄い方だが、窯業系サイディングよりは厚くしっかりしている
・良い物なので、初期コストやメンテナンスコストは高額
パワーボードは、内部に気泡が均一に入っています。
普通のコンクリートの1/4の重さで、水に浮くほど軽く、さらに断熱性・防火性・遮音性に優れた建材です。
【パワーボードの断面図イメージ】
一般普及率が高い窯業サイディングよりも優れている点が多いです。
その分、初期費用やメンテナンスコストも高くなっていますが、メンテナンスをしっかりすれば60年もつと言われており、コストパフォーマンスも優れています。
逆を言えば、コストパフォーマンスを発揮するためには、しっかりとしたメンテナンスが必要なのです。
1-2 メンテナンスは塗装が必須
パワーボードのメンテナンスでは、塗装が必須です。
とても良い製品ですが、メンテナンスフリーで強固な状態を保てるわけではないからです。
またパワーボード自体は吸湿性が高い建材でもあるため、しっかりと塗装工事で水が入るのを防がないと、60年間良い状態で保つことはできません。
パワーボード自体は強固な建材でも、防水機能はないため、しっかりと塗装メンテナンスをすることで防水してあげましょう。
メーカー公式HPでも、このようなメンテナンスサイクルのモデルを公示しています。
出典:旭化成建材
2章 症状で見る塗装のタイミング判断
では、塗装はいつすれば適切なのか、
この章では、こんな症状が出ていたら“塗装の合図”という症状をまとめたので、ご自身のお家でこれらの症状が出ていないかチェックをしてみましょう。
1か所でもこの症状が出ていたら、塗装のタイミングが来たということです。
2-1 コーキングの割れ・痩せ
▲コーキングは、ボードのつなぎ目部分や窓サッシ周りにあります。
コーキング部分に割れや痩せが出てきたら、塗装のタイミングです。
網目状にひびが入っていれば、劣化している合図です。
割れが大きいほど重症です。急いで塗装をする準備をしましょう。
またコーキングの痩せは、通常は十分な肉厚感があるコーキング自体が、硬く委縮しくぼんだ見た目になることです。
素人目では判断つかない場合が多いので、専門業者に点検をしてもらい判断するのが一番良いでしょう。
2-2 汚れや色褪せが目立つ
見た目が汚れていたり、色あせが目立ったりするようであれば、塗装の時期が来ています。
特に黒っぽい汚れ、緑っぽい汚れは、カビコケが繁殖している可能性が非常に高いためです。
カビコケが繁殖する環境は、パワーボードが吸水状態にあり、良い状態ではありません。
そのため、この症状が出ていたら塗装をしてあげましょう。
2-3 チョーキング
外壁を触った時に、外壁の色が粉っぽく手につくなら、それはチョーキング現象が起きているので早めに塗装しましょう。
チョーキングが起きるという事は、既にボードの防水機能がなく、水をよく吸う状態だからです。
チョーキング現象は、ボードの表面に塗られている塗装の油分が経年劣化で飛び、色の顔料だけが残った状態を言います。
そのため、触るとボードの色がそのまま手に付きます。
塗装以外では状態が良くならないので、早めに塗装をしましょう。
☆もしも、適切に塗装をしなかったら… 塗装をすべき時にしてあげないと、最終的にはボードが中身から爆裂して欠けてしまいます。 これは、防水機能が無くなり水を吸うようになったボードの、内部にある補強材(鉄製)が錆びて膨張し、内側からボードを押して壊してしまうからです。 1度壊れたボードは元に戻せない為、最悪の状態まで放置せず、適切なタイミングで塗装しましょう。
|
ご自身で見て回るのも手軽で良いですが、2階部分の細かい所はご自身ではしっかり見えない部分が多いため、折角なら専門業者による点検をおすすめします。
見えなかったから気付かなかった、という失敗もなくなりますよ。
3章 メンテナンス方法と費用相場
パワーボードのメンテナンス(塗装+コーキング補修)は、おおよそ80~200万円ほどです。
折角の耐久性が高い外壁材なので、塗料も長持ちする“フッ素”や“無機”で塗装するのがおすすめです。
■塗装+コーキング補修の費用相場
塗料 | 耐用年数 | 費用相場 |
ウレタン | 8~10年 | 80~125万円 |
シリコン | 10~15年 | 100~140万円 |
フッ素 | 15~20年 | 120~165万円 |
無機 | 20~25年 | 125~200万円 |
※30坪2階建て塗装面積150~180㎡の概算
※足場代、コーキング補修、附帯塗装などを含む
金額は、使用する塗料、お家の面積や形状、目地の長さ、コーキングは打ち替えか増し打ちか、などの要因で変動します。
必ずご自宅用の詳細な見積もりを作ってもらいましょう。
「まだ塗装は先にしたいから、コーキングだけ一旦補修しておきたい」と補修のみを希望される方も、ぜひ補修と塗装を一緒に実施することをおすすめします。
コーキングの処置だけだと、塗装の保護が無いむき出しのままなので、劣化が早まってしまうからです。
塗装とコーキング補修は、セットで行うものと認識しておきましょう。
■参考:コーキング工事単価相場
目地増し打ち | 700~1,000円/m |
目地打ち替え | 800~1,200円/m |
4章 塗装前の3つの注意点
塗装をする前に気を付けてほしい注意事項があります。
それは、パワーボードならではの特徴で、注意事項を確認しながら塗装をしてもらうことで、良い品質の製品を永く使えるようにするためです。
具体的に紹介していきます。
4-1 適切な下塗り塗料を見極められる業者に依頼する
パワーボードの良さである、気泡を含んだコンクリートの状態を保つためには、下塗り選びが重要です。
それを適切に見極められる業者に依頼しましょう。
下塗り選びを間違えてしまうと、膨れや剥がれの原因になってしまいます。
▲膨れが出てしまったパワーボード
具体的には、パワーボードの性質を考慮して、肉厚に塗布できるフィラーという、粘度の高い下塗り材を使用すると良いと言われています。
但し、パワーボード自体が劣化していると、ボードは下塗り材を通常より吸い込みやすくなっています。
その場合は先に浸透性シーラーという下塗り材を塗り、下地のための下地づくりをしてから、フィラーを塗ることもあります。
状況によって材料を変えることになり、下塗り選びは少し複雑ですが、ここがちゃんとしていないと施工不良の原因になってしまうため、適切な下塗り材を選んでくれる業者に工事を依頼しましょう。
見積もりを貰った際に、「なぜこの下塗り材を使うのですか?」と質問してみて、納得できる説明をしてくれるかどうかで判断できます。
4-2 家の工法によって塗料を選ぶ
ボード系の外壁材は新築時の施工方法が2種類あり、『直貼り工法』か『通気工法』かに分かれます。
パワーボードは直貼り工法のことが多いです。
この工法によっても適した塗料選びが重要です。
◇直貼り工法なら | 防水性と透湿性*を持った塗料を選ぶ |
◇通気工法なら | 防水性を重視した塗料を選ぶ |
*透湿性とは、水分を通さず湿気は通す、という性質です。雨水は弾くが、湿気は通す状態なので、家の中の湿度を適度に保つことができます。
直貼り工法が透湿性も必要な理由は、パワーボードは吸湿性が高いものの、塗装によって湿気の逃げ道がなくなってしまうからです。
直貼り工法は空気の通り道がないので、湿気が逃げられなくなると、こもった湿気が鉄部を錆びつかせたり、外に出ようとした湿気の力で塗膜が膨れてしまうことがあります。
特に「弾性塗料」と言われるものは、透湿性が悪いので注意しましょう。
これで塗装すると、塗膜の膨張や剥がれが生じることがあり、最悪は次の塗装の時に、既存塗膜を全て除去する手間が出る可能性があります。
選ぶ際には施工業者によく質問をして、工法に対して適切な塗料が選べているか確認をしてから決定しましょう。
▲膨れや剥がれが起きたパワーボード
4-3 コーキングは塗装回数で増し打ちか打ち替えか判断
ボードのつなぎ目(目地)にあるコーキングもメンテナンスが必要な部分ですが、
「上から新しいコーキングを足す“増し打ち”」か「古い目地を撤去して新しくする“打ち替え”」かは、塗装回数を目安に判断しましょう。
パワーボードの目地撤去は非常に手間が掛かるので、工事金額も上がってしまいがちです。
そのため、劣化の少ないコーキングに対しては、少し単価の安い“増し打ち”をすることが多いのです。
▲目地のコーキング増し打ち
そこでメーカーでも推奨しているのが、築10年前後で初めての塗装なら“増し打ち”。
築20年を超えて2回目の塗装なら“打ち替え”のようなメンテナンススケジュールです。
こうすると、無駄なお金を掛けずに、且つ家の状態も良く保てます。
ご自身の家に対して、施工業者がコーキングをどう処理するのかは、事前の見積時点で確認をし、築年や塗装回数と施工方法が合ってないと感じたら、遠慮せずに質問してみましょう。
まとめ
パワーボードは、内部に気泡を含んだALCの一種で、非常に優れた外壁材です。
主に以下のような特徴があります。
- ・断熱性・防火性・遮音性に優れている
- ・コンクリートやサイディングよりも軽く耐震性が良い
- ・ALCの中でも厚みは薄い方だが、窯業系サイディングよりは厚くしっかりしている
- ・良い物なので、初期コストやメンテナンスコストは高額
パワーボードは、とても良い建材です。
その良い状態を保って永く使う為には、塗装のメンテナンスが必須です。
メンテナンスの時期の目安として、これらの症状が1つでも出ていたら塗装の時期だと判断しましょう。
- ・コーキングの割れ・痩せ
- ・汚れや色褪せが目立つ
- ・チョーキング
また塗装の費用相場はおおよそ下記の表の通りです。
塗料 | 耐用年数 | 費用相場 |
ウレタン | 8~10年 | 80~125万円 |
シリコン | 10~15年 | 100~140万円 |
フッ素 | 15~20年 | 120~165万円 |
無機 | 20~25年 | 125~200万円 |
※30坪2階建て塗装面積150~180㎡の概算
※足場代、コーキング補修、附帯塗装などを含む
また塗装をする際には、塗装前に以下の3点に注意しましょう。
- ・適切な下塗り塗料を見極められる業者に依頼する
- ・家の工法によって塗料を選ぶ
- ・コーキングは塗装回数で増し打ちか打ち替えか判断
業者に聞いて判断することが多いので、綿密な打ち合わせをして納得いく形で話をまとめましょう。
パワーボードは、60年以上もつと言われるとても良い建材です。
良い建材を選んだからには、適切なメンテナンスで良い状態を永く保ってくださいね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
◆パワーボード(ALC)の塗装費用について詳しく知りたい方はこちら
適正価格が分かる!ALC外壁塗装の費用相場とお得に良い工事4つの秘訣