「ALC」という外壁材があると知ったあなた。
しかしいかにもな専門用語ですし、具体的にどんなものなのかイメージしにくく、気になって調べているのではないでしょうか。
ALCとは、簡単に言うと、気泡を含んだ軽いコンクリート外壁材のことです。
一般住宅から高層ビル、マンションまで幅広く使われている、とても優秀な建材です。
ただ、他の素材と違う点、注意すべきところも存在します。
本記事では、そんなALCについて、特徴やメリット、デメリットなどの基礎知識をご紹介します。
これからご自宅の外壁材を決める方が最適なものを選べるように、また現状のご自宅についてより理解を深められるように、
他の建材と比べながら分かりやすく解説していきますね。
目次
1章 ALCとは
ALCとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete(高温高圧の蒸気で養生した軽量気泡コンクリート)」の略です。
コンクリートの中に細かな気泡がたくさん入っているもので、とても軽いのが特徴です。
軽いことで職人が作業しやすく、戸建住宅から高層ビルまで、様々な建築に使われています。
また、ALCは厚みの違いで2種類あり、
・薄型:35~75mm、主に木造、鉄骨造に使用
・厚型:75mm以上、主に鉄骨造、鉄筋コンクリート造に使用
というように使い分けられています。
■他の外壁材との比較
ALCは他の外壁と比べても機能性が高く、とても優秀な建材です。
特徴についてより詳しくは、次の章で解説していきます。
2章 ALC外壁のメリット
それではまず、ALCの主なメリットを5つご紹介します。
全体的にとても機能性が高いので、“快適に長く住み続けられる家にしたい”方におすすめの外壁材です。
2-1 50年以上の耐久性
ALCは50~60年も張り替えずに使えるという、高耐久の外壁材です。
定期的なメンテナンスさえしっかり行えば、お子さん・お孫さんの代まで引き継げるお家になります。
建て替えが容易でない高層ビルや大型建築にも使用されることが多いのは、この耐久性があってこそです。
2-2 軽量で地震に強い
重い建物は地震の時に揺れも大きくなってしまいますが、軽いと揺れの影響も少なくなるため、耐震性を高めるには軽さが重要です。
その点、ALCは中に気泡があるために、通常のコンクリートと比べてたった1/4の軽さで、地震にも強い外壁材です。
水に入れると、発泡スチロールのように浮いてくるほど軽いです。
また、軽いと工事の際に職人が作業しやすく、通常のコンクリート建築よりも工期が短くできるというメリットもあります。
2-3 素材・構造が火に強い
ALCは、非常に火に強いのも特徴のひとつです。
そもそもの主成分が珪石、セメント、生石灰などの無機物(燃えにくいもの)だからです。
※無機物…炭素を含まないもの。ガラス、石など。火を受けても燃えない。 ⇔有機物…炭素を含むもの。紙、木材など。燃えると二酸化炭素が発生し黒く焦げる。 |
また、ALC中に気泡があって空気の層ができているため、熱が内側まで伝わりにくいのも燃えにくい理由です。
木材は、約260度以上の熱を受けると引火する恐れがあります。
一般的な家屋火災の温度は1,000℃以上、3m離れても840℃ほどあります。
外壁面だけ火に強くても、中の木材に熱が通ってしまえば、内側から燃える可能性があるのです。
出典:旭化成建材
しかしALCなら空気層が熱を伝えにくくしてくれるので、延焼する危険を減らす事ができます。
素材、構造どちらからみても、ALCは非常に火に強い建材となっています。
2-4 断熱性が高く室内が過ごしやすい
ALC外壁は断熱性が高く、夏は涼しく冬は暖かい、快適な住宅にすることができます。
内部の気泡による空気層が、熱の伝達を遮ってくれるからです。
断熱性が高いと、外の暑さ・寒さが室内に伝わりにくいです。
反対に、室内の冷暖房の効果も外に逃げにくいため、空調の効きが良くなります。
室温を保ちやすい、常に過ごしやすい住まいには最適な外壁材です。
2-5 遮音性が高くプライバシーも安心
ALCは遮音性も非常に優れています。
気泡による空気層が音の出入りも防いでくれるからです。
自動車の騒音など外部の音を減らすことで、静かでストレスの少ない暮らしができます。
逆に、室内の音が外にも漏れにくいので、プライバシーの心配も減りますし、例えば小さなお子さんが元気に遊んでもご近所に迷惑をかけにくいです。
静かでリラックスした生活をお求めの方に、ALCの遮音性はとても安心できるメリットです。
3章 ALC外壁のデメリット
ALCは優れた外壁材ですが、デメリットになる部分もあります。
失敗しないために、長所と短所両方を踏まえて建材選びをしましょう。
3-1 水に弱い
ALCは“水に弱い”という欠点があります。
細かな気泡に水分が染み込みやすく、そこから膨張やひび割れが起こってしまうからです。
ALC自体には防水性がないため、生産時には表面に防水塗装して出荷されています。
4章でも触れますが、この防水塗装を切らさないように定期メンテナンスが必要になります。
3-2 つなぎ目が多く雨漏りしやすい
ALCはモルタルなどの塗り壁と異なり、工場で作られたパネルを現地で張り付けていくため、パネル同士のつなぎ目があります。
サイディングボードも似ていますが、ALCの方が基本のサイズが小さいため、つなぎ目の量は多くなります。
外壁に限らずあらゆるモノはつなぎ目から傷みやすいため、ALCもつなぎ目から水が入って雨漏りするリスクが増えてしまうのです。
3-3 費用が高い
ALC外壁は全体的に機能性が高い分、他の外壁と比べて初期費用は高額になってしまいます。
外壁材 | 新築時の㎡単価 |
サイディング | 3,000円~ |
モルタル | 4,500円~ |
ALC | 7,500円~ |
タイル | 9,000円~ |
ただ、通常のコンクリートよりは軽量で扱いやすいため、工期が短縮できて人件費を抑えられてはいます。
また耐久性が高くメンテナンスも少なくて済むタイル外壁は、材料費も施工の手間もかかってさらに高額です。
ALCはサイディング、モルタルよりは高いですが、タイルよりはやや安い、という位置づけになります。
4章 メンテナンスの注意点
ALCは様々な外壁の中でも、建てた後のメンテナンスに注意が必要な素材です。
ただ、正しいお手入れさえできれば長く安心して住み続けられるお家にできます。
注意点を2つ解説しますので、ここだけは必ず知ったうえで建材を選びましょう。
4-1 定期的な防水塗装が必須
ALC外壁は、表面の防水塗装を定期的に塗り替える必要があります。
ALCを水から守る塗装は、永久に持つものではなく、紫外線などで経年劣化してしまうためです。
目安としては、最初の塗装は10~15年前後で行いましょう。
(2回目以降は、使った塗料の耐久性によって時期が変わります)
防水効果が切れたまま放置してしまうと、ALCはどんどん水を吸いこみます。
するとALC自体が割れたり崩れたりするほか、内部の鉄筋が錆びてしまう危険も出てきます。
■ALCのひび割れ
せっかくの頑丈なお家も、これでは寿命が縮んでしまいます。
また、直そうとすると大がかりな改修工事になって費用もかさんでしまいます。
お家を長持ちさせるためにも、余計な費用をかけないためにも、定期的な塗装工事をきちんと行いましょう。
◆ALCの塗装について詳しくはこちら
4-2 つなぎ目(コーキング)も補修がいる
ALCは塗装するとき一緒に目地コーキングも補修が必要です。
こちらも紫外線によって痩せたりひび割れたりしてしまうからです。
補修は、上からコーキング材を追加して厚みを持たせる「増し打ち」と、古い目地を撤去して新しく入れ替える「打ち替え」の二種類あります。
1回目の塗装:増し打ち
2回目の塗装:打ち替え
とすることが多いです。
■ヘーベルのメンテナンススケジュール例
出典:旭化成建材
メーカーでもこのように推奨しています。
ただ、実際どちらの補修方法が適切かは、メンテナンス時の劣化状態によります。
点検してもらった業者に確認をして、ご自宅の状態にあった目地補修をしてもらいましょう。
5章 国内のALCメーカー
最後に、ALC外壁を製造・販売しているメーカーをご紹介します。
国内ではメーカーは3社あり、「ALC協会」という社団法人に属して、JIS規格(日本工業規格)の基準を満たしたALCを製造しています。
それぞれの商品にごとに特徴や規格の違いがありますので、ハウスメーカーの方と相談してお選びくださいね。
製品:ヘーベルパワーボード、ヘーベルライトなど
国内で最も有名なALCメーカーです。
特にヘーベルパワーボードは木造住宅向けに開発されたALCで、1980年の販売から40年近い実績がある人気建材です。
製品:クリオンライト、クリオンエースボードなど
ALCの中でも、中高層建築向けの耐震性が非常に優れた製品が特徴のメーカーです。
戸建向けALCも、指定の標準工法で施工すれば製品+コーキングの10年保証が付く安心の体制になっています。
製品:シポレックス、スーパーボードなど
日本にALCが導入され始めた1960年代当初から製造、販売をしている老舗メーカーです。
表面に様々な模様を加工したアートパネルがあり、建物の用途や街の景観などにフィットしたものを選択できます。
まとめ
ALCとは、気泡を含んだ軽いコンクリート外壁材のことです。
非常に優れた建材で、戸建住宅から高層ビルまで、様々な建築に使われています。
■他建材との比較
特に大きなメリットとして、
- ・50年以上の耐久性
- ・軽量で地震に強い
- ・素材・構造が火に強い
- ・断熱性が高く室内が過ごしやすい
- ・遮音性が高くプライバシーも安心
という点が挙げられます。
一方デメリットとしては、
- ・水に弱い
- ・つなぎ目が多く雨漏りしやすい
- ・費用が高い
というものがあります。
デメリットを補うためにメンテナンスには注意が必要で、
- ・定期的な防水塗装が必須
- ・つなぎ目(コーキング)も補修がいる
という2点はしっかり押さえておきましょう。
全体的にとても機能性が高いので、“快適に長く住み続けられる家にしたい”方におすすめの外壁材です。
将来のお手入れのことも踏まえて、ご自宅に合いそうだと思ったら、ぜひ検討してみてくださいね。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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