うちのALC外壁もそのうちメンテナンスしないと、ってメーカーの人も言ってたけど本当?
実際どのタイミングでどんなお手入れをすればいいの?
と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
ALC(Autoclaved Light weight Concrete、軽量気泡コンクリート)とは、セメントの中に気泡を入れて軽量化したコンクリートボード外壁です。
非常に強度が高く地震や火事にも強い優秀な建材ですが、メンテナンスは必要です。
実は“水に弱い“という性質があり、外壁に防水効果を持たせてALCを保護しなければならないためです。
ALCを扱う大手ハウスメーカーも必ずメンテナンスのご案内をしているのは、こういった理由があるからです。
ただ、一般のサイディングボード外壁などと比べるとALC造の戸建て住宅は希少です。
身近で詳しい人もなかなかいなくて、ご不安な方もいらっしゃいますよね。
そこで本記事では、ALC外壁のメンテナンスについて、適切な時期の目安、メンテナンス方法、費用相場、注意点などの基礎知識を解説します。
ALCはお手入れさえすれば50年以上も使える優れた素材です。
せっかくの素晴らしいお家ですから、長く大事に住み続けるためのメンテナンス知識を身につけましょう。
目次
1章 メンテナンス時期の目安
ALC外壁のメンテナンスのタイミングは、主に築年数か劣化症状で判断します。
ポイントはどちらも「防水効果が切れる時期」です。
それぞれ目安をご紹介しますので、あてはまる場合はメンテナンスをご検討ください。
1-1 築10年前後で行うのがベスト!
ALC外壁のメンテナンスは、築10年前後を目安に行いましょう。
外壁の表面を守ってくれている防水機能が切れている頃だからです。
地震や火事に強いALCですが、実は“水に弱い”という弱点があります。
ALCはコンクリートの中に小さな気泡がたくさん入っており、言ってしまえばスポンジのようなつくりをしています。
そのため非常に水を吸い込みやすく、吸水するととても脆く崩れやすくなってしまうのです。
また、中は鉄骨造ですから、鉄に水が触れると錆びて強度も落ちます。
■大きく崩れてしまったALC外壁
何か目立つ症状が出てから直せばよいと思う方もいるかもしれませんが、ALCは非常に高価で、扱いが難しい建材です。
崩れた部分の補修や錆びた鉄骨の修繕は、手間も費用もかかってしまうため、劣化が進む前のお手入れが重要です。
そのための目安として、築10年前後のメンテナンスを予定しましょう。
1-2 見つけたらメンテ時期:目安となる劣化症状
ALC外壁は、お家のつくりや立地条件などによって築10年になる前に劣化が始まることも多いです。
劣化症状があるということは、既に防水機能が切れてしまっていますので、築年数に関係なくメンテナンスの必要な時期です。
目安となる劣化症状を紹介しますので、1つでも当てはまった方はメンテナンスを検討しましょう。
①触ると手に粉が付く(チョーキング)
外壁を触ると粉が付きます。新築時の防水塗装が劣化すると起こる症状です。
水を弾く成分(樹脂)が紫外線で飛んで無くなり、既に水を吸い込む状態になっています。
防水メンテナンスが必要です。
②カビ、コケ、藻、ツタの発生
カビ、コケ、藻の胞子は湿気の多い場所を好みます。
これらが繁殖しているということは、ALCが水を吸い込んでいる証拠です。
また、茶色い点々はツタの跡です。植物も水分のあるところに根を張って、ALCの内部を弱らせてしまいますので、早急に対処が必要です。
③コーキングのひび割れ
ALCはボード状の建材を組み立てるため、必ず目地(つなぎ目)ができます。
目地に入っているコーキング(シーリング)はゴムのような素材で、紫外線を浴び続けると縮んだり硬くなったりして割れてしまいます。
放っておくとどんどん水が侵入してしまいますので、ここもメンテナンスが必要です。
④外壁のひび割れ
外壁自体のひび割れです。
ALCは水を吸い込むとスポンジのように膨らみ、乾くと縮みます。
この伸び縮みを繰り返すことで負荷がかかり、頑丈なALCでも割れてしまいます。
ALCが吸水を繰り返している状態ですので、早急にメンテナンスが必要です。
これらの症状が一つでも当てはまったら、メンテナンスの時期です。お家をぐるっとチェックしてみましょう。
2章 ALC外壁のメンテナンス方法
ALC外壁の定期メンテナンスは、主に外壁塗装とコーキング工事で行ないます。
どちらも、ALCにとって大敵である“水”からお家を守る為のものです。
それぞれどのようなものなのか見ていきましょう。
2-1 外壁塗装
外壁塗装=外壁に防水効果を持たせてALCの劣化・水の侵入を防ぐ工事です。
前章でもお伝えしましたが、ALCは水にとても弱いです。
塗装工事によって防水することで、ALCが吸水して劣化するのを防ぐことができます。
■塗装工事の様子
■塗装後の防水されている(水を弾く)状態
塗装の効果が続く年数は、使う塗料のグレードによって異なります。
次回のメンテナンスを何年後にしたいかによって選びましょう。
◆塗料の種類と選び方はこちら
2-2 コーキング部分の増し打ち、交換
ALCはボード状の外壁のため、つなぎ目(目地)にコーキングが使われています。
ここも劣化すると水が侵入してしまうため、メンテナンスが必要です。
痩せた目地の上に新しいコーキングを足す「増し打ち」と、
古い目地を全て撤去して新しく交換する「打ち換え」があります。
コーキングのひび割れや隙間が大きい場合は、しっかり打ち換えをしてあげる必要があります。
ただし、ALC目地の撤去は非常に手間がかかり、金額も増えます。
コーキング劣化が少ない場合は増し打ちで十分で、コストも抑えた工事にすることが多いです。
■目地コーキング増し打ち
そのためよくメーカーも推奨しているのは、築10年前後で初めての塗装のときは増し打ち、20年を超えて2回目の塗装のときは打ち替え、としてあげるようなメンテナンススケジュールです。
今回のコーキング工事をどちらで行うのかは、業者に確認しておきましょう。
また、コーキング工事は必ず外壁塗装とセットで行います。
コーキングの表面がむき出しだとまた紫外線で劣化してしまいますので、塗膜で守ってあげる必要があるからです。
外壁塗装とコーキング、この二つのメンテナンスを適切な時期に実施してあげましょう。
3章 メンテナンスの費用相場
ALCの塗装メンテナンス費用は、使う塗料によっても変わりますが、おおよそ80~200万円程度になります。
■塗装+コーキング補修の費用相場
塗料 | 耐用年数 | 費用相場 |
ウレタン | 8~10年 | 80~125万円 |
シリコン | 10~15年 | 100~140万円 |
フッ素 | 15~20年 | 120~165万円 |
無機 | 20~25年 | 125~200万円 |
※30坪2階建て塗装面積150~180㎡の概算
※足場代、コーキング補修、附帯塗装などを含む
実際の金額は、使用塗料、お家の面積や形状、目地の長さ、打ち替えと増し打ちどちらにするか、などによって変動します。
メンテナンス時には、必ずご自宅用の詳細な見積もりを作ってもらいましょう。
ALCは特に耐久性の高い建材なので、塗料も長くもつフッ素や無機がおすすめです!
■参考:塗装単価相場
ウレタン | 1,700~2,500円/㎡ |
シリコン | 2,300~3,500円/㎡ |
フッ素 | 3,500~4,800円/㎡ |
無機 | 4,300~5,500円/㎡ |
■参考:コーキング工事単価相場
目地増し打ち | 700~1,000円/m |
目地打ち替え | 800~1,200円/m |
4章 メンテナンスの注意点
ALCは非常に優れた建材ですが、メンテナンス時には注意が必要なところもあります。
必ず押さえてほしいポイントを3つご紹介しますので、時期が来た方はチェックしておきましょう。
4-1 下塗りは必ずALC用のものを使う
ALCを塗装メンテナンスする際は、適切な下塗り塗料を使いましょう。
下塗りがALCに合っているものでないと、塗料の性能が発揮されなかったり、将来的に剥がれやすくなったりしてしまうからです。
下塗りとは、基本的な3回塗りのうち1回目の塗り工程です。
外壁材と上塗り塗料との間の接着剤のような役割を果たしています。
例えばお家にあるボンドや接着剤も、プラスチックや紙なら使えるけど金属は使えないもの、など素材を選びますよね。
塗料も、塗る素材にあった下塗りが非常に重要です。
ALCに適した下塗りかどうかは、メーカーのホームページや塗料カタログの「適用下地」の欄を確認しましょう。
■ALCに使える塗料カタログの例 「ALC」や「コンクリート」という記載があるものを使います。 |
業者に塗装の提案を貰ったら、使う塗料のカタログも借りて、適用下地をチェックしましょう。
4-2 下地が弱っているときは補強効果のある下塗りを使う
ALCのメンテナンスをするとき、古い塗膜が弱っていて剥がれやすそうだと診断されたり、すでに細かなひび割れが多数生じているような状態だった場合は、
カチオン系塗料や微弾性フィラーなどの、補強効果のある下塗り材を選定してもらいましょう。
■カチオン系…旧塗膜や素材との密着性が高く、剥がれにくくしてくれる成分の下塗り
■微弾性フィラー…細かなひび割れに入り込んで追従して、ひび割れ予防をしてくれる下塗り |
しっかりした塗装店なら、ALCの状態に合わせた下塗り塗料を選定してくれます。
劣化状態が心配な方は、「うちはこの下塗りで大丈夫ですか?」と念のため聞いておき、そこで丁寧な回答が返ってくれば安心でしょう。
4-3 屋根・防水も一緒にメンテナンスする
ALC外壁をメンテナンスするときは、屋根や屋上防水、ベランダ防水も合わせてお手入れをしてあげましょう。
どんなにALC外壁をお手入れしても、その上にある屋根や屋上が傷んで水が回ってしまったら、結局ALCを弱らせてしまうからです。
ALCの塗装時期である築10年前後は、屋根なども丁度お手入れ時期です。
点検・見積もりをお願いするときは、お家の全体をしっかり見てもらい、一緒にできる工事はまとめて実施しましょう。
特に、ALCのお家は軽量鉄骨造で、普通よりも少し大きいお家が多いです。
そうすると足場代金も他のお家より高くなるため、何回も足場を立てるとその分費用もかかってきます。
しっかりした造りのALCのお家だからこそ、無駄なくメンテナンスして長く住み続けたいですよね。
外壁と一緒に屋根や防水部分もメンテナンスを検討しましょう。
◆屋根塗装について時期や費用はこちら
◆屋上・ベランダの防水工事について詳しくはこちら
5章 塗装後も定期点検を実施しよう!
ALCのメンテナンスで重要なのは、定期点検です。
なぜなら、ALCは非常に高耐久な外壁で、お手入れも今後何回も繰り返していくものだからです。
一度メンテナンスしたら、その後も5年に1度は専門家に点検をしてもらいましょう。
お家はこれまでずっと、日光の紫外線や風雨からご家族を守ってくれていました。これから先も同じです。
台風のような自然災害もいつ起こるかわかりません。
例えば、何かものがぶつかって塗装やALCが傷ついてしまったら、そこからすぐ劣化が始まってお家の寿命を縮めます。
こうした異常に早く気づければ、軽傷のうちに直せて費用もかからず、お家にも良いです。
長く住むお家だからこそ、塗装・コーキング工事をした後も、定期的に点検してもらいましょう。
まとめ
ALC外壁は耐久性に優れた建材ですが、水には弱いため、防水のためのメンテナンスが必要です。
築10年前後、あるいは劣化症状が出始めたころを目安にメンテナンスをしましょう。
メンテナンスは外壁塗装とコーキング工事で行います。
塗装は長くもつフッ素や無機塗料がおすすめです。
コーキングは、増し打ちと打ち替えどちらにするかは業者に診断してもらいましょう。
メンテナンス時は、
・下塗りは必ずALC用のものを使う
・下地が弱っているときは補強効果のある下塗りを使う
・屋根・防水も一緒にメンテナンスする
この3点を注意して行います。
工事後も5年に一度は点検してあげましょう。
ALCはとても素晴らしい建材です。これからも長く大事にお住まいいただけるように、しっかりメンテナンスをしてあげてくださいね。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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