新築やリフォームでの外壁選び。
モルタルとサイディング、どちらを選べば良いのかお悩みではないでしょうか。
最近では、両方ともお洒落なデザインのものが増えているので迷ってしまいますよね。
モルタルとサイディングはどちらも優れた建材ですが、違いや特徴はいくつもあります。
そのため、デザインの好みはもちろん、それぞれの機能や特徴を知った上で選ぶことが重要です。
そこで、この記事では、モルタル・サイディングの機能や特徴をそれぞれ比較しながら紹介していきます。
どれにしよう…と迷っている方も、2つの違いが分かるので、ご自身に合ったものを選べます!
ぜひ、最後まで読んでみてくださいね。
目次
1章 モルタル・サイディングの特徴
モルタルとサイディングは、日本の新築一戸建てで比較的使われることが多い外壁材です。
■外壁別のシェア率
出典:一般社団法人日本窯業外装材協会
新築で最も多いのが「窯業系サイディング(セメント系)」で、78.5%ものシェアを占めています。
サイディングの一種で「金属系サイディング」というものもありますが、こちらはリフォームが中心で、新築で使用されることはまれです。
次いで多い「モルタル」は5.7%と、サイディングに比べると少ないですが、もともと日本では最もポピュラーな壁材でした。
施工できる職人が減っていることや、工事に手間暇がかかるため、新築ではシェアが減少しています。
しかし最近は、デザインの自由度の高さから再び注目を集めており、根強く人気のある外壁材です。
この章では、「窯業系サイディング」「モルタル」の2つの外壁材の特徴について紹介します。
外壁材を選ぶ前に、それぞれの特徴について把握しておきましょう。
1-1 窯業系サイディング
窯業系サイディングは、セメントと繊維質の材料を混ぜて作られた板状の外壁材です。
様々な色柄が販売されていて、工場で大量生産ができて比較的安価なため、日本の住宅の7割以上で使用されています。
また、工場であらかじめカットしお家を建てるときに組み立てるだけなので、工期が短く住むのも大きな魅力です。
1-2 モルタル
モルタルは、セメントと砂、水が材料です。
外壁に「ラス網」という網をはり、そこにモルタルを塗ることで仕上げていきます。
モルタルを塗る作業は職人による手作業の為、工事に時間はかかってしまいますが、サイディングに出せない独特の模様や風合いを出すことができるのが特長です。
新築で使用される割合は少ないですが、その意匠性の高さからお家のデザインを大事にする方に特に人気のある外壁材です。
■モルタル外壁の構造
ラス網の上に手作業でモルタルを塗り、最後に防水性を持たせる為に塗装で仕上げています。
2章 見た目の違い
ここではモルタルとサイディングの見た目の違いを紹介します。
外壁材はお家の印象を大きく左右します。
これから長く住むお家ですから、気に入ったデザインのお家にするためにも、それぞれの違いを把握しておきましょう。
■窯業系サイディング
窯業系サイディングは、シンプルなものからレンガ調の模様まで、様々なデザインから選べます。
使っている色数が多かったり、凹凸が深かったりするものほどグレードが高く、費用もかかります。
また、工場でカットした板状の建材を組み立てていくため、できあがったお家には継ぎ目(目地)があるのが特徴です。
・レンガ風の模様を生かしたデザイン
レンガ風の模様とクリーム色のツートンで、ナチュラルな印象に仕上がりました。
・部分的にサイディングを使ったお家
全体はモルタルで、下部分にだけ石材調のサイディングを入れています。メリハリの利いたデザインが素敵です。
■モルタル
モルタルはざらざらとしたあたたかみのある風合いが特徴です。
また、職人による手作業で仕上げていくので継ぎ目がなく、カーブがあるお家など凝ったデザインのお家にも適しています。
・和風のお家
温かみのある風合いは、和瓦を使ったお家ともとても相性がいいです。
・カーブのある外壁の例
外壁の角にカーブを付けたり、アーチ状にしたりしています。
こうしたデザインは、1棟1棟手で作るモルタルならではのものです。
★モルタル表面の仕上げ方の種類
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3章 メンテナンス時期・耐久性の違い
| 窯業系サイディング | モルタル |
メンテナンス時期 | 5~7年 | 3~5年 |
耐用年数 | 40年 | 30年 |
モルタルもサイディングも、建ててから何年後かにはメンテナンスが必要となります。
そのままにしていると紫外線によって傷み、雨漏りするような劣化も出てしまうからです。
そこで、ここではそれぞれのメンテナンス性と耐久性を紹介します。
3-1 メンテナンス時期
お家は、建てて最初のメンテナンスが特に重要です。
メンテナンスが必要になる目安時期についてご紹介します。
■窯業系サイディング
築後5~7年で劣化の初期症状が現れ始め、メンテナンスが必要となります。
サイディングの継ぎ目にある目地(コーキング)補修+外壁の塗装、補修が必要です。
■モルタル
築後3~5年で劣化の初期症状が現れ始め、メンテナンスが必要となります。
水と砂、セメントを混ぜ合わせて作る為、水分の蒸発でひび割れしやすくなっています。
メンテナンスの際は、外壁塗装やひび割れの補修が必要です。
3-2 耐用年数
ここでは、定期的にメンテナンスをした場合の寿命を紹介します。
■窯業系サイディング
サイディングの耐用年数は40年ほどです。
寿命を迎えると、表面がボロボロになってきて、常に水を含んでいる状態となります。
その場合は、サイディングを張り替えるか新しく上からサイディングをかぶせる「カバー工法」が必要です。
■モルタル
モルタルの耐用年数は30年ほどです。
施工時の壁の厚みや品質によってもっと寿命が長いお家も多くありますが、寿命が過ぎると外壁が一部崩れたり全体にひび割れが出始めます。
その場合は、モルタルを一から作りなおすか、カバー工法が必要です。
4章 機能の違い
ここでは、住むうえで大切な耐震性・耐火性・遮音性について紹介します。
| 窯業系サイディング | モルタル |
耐震性 | ◎ | △ |
耐火性 | ○ | ◎ |
遮音性 | ○ | ◎ |
4-1 耐震性ならサイディング
モルタルとサイディング、どちらも耐震基準はクリアしていますが、特に地震対策をしたい、という方ならサイディングがおすすめです。
■窯業系サイディング
窯業系サイディングは、地震に強い外壁材の一つです。
モルタル外壁が一棟分で約8トンもあるのに対し、窯業系サイディングは約2.9~3.8トンと、半分以下の重さ※だからです。
※お家一棟当たりの外壁面積200㎡の場合
人が重たい荷物を持っていると大きくぐらついてしまうように、お家も軽いほうが地震の影響を受けにくいです。
そのため、非常に軽量なサイディングは耐震性に優れた建材として人気を集めています。
実際に、サイディングのお家は阪神淡路大震災でも8割以上が無傷で済んだというデータがあります。
■阪神淡路大震災で被害にあったサイディングの家の割合
出典:ニチハ株式会社
被害にあったお家もありますが、サイディングの小さな亀裂や一部脱落等、比較的小さい被害で済んでいます。
■モルタル
モルタル自体はサイディングより重いため、耐震性は劣ってしまいます。
ただ、もともと日本で昔から使われていたものであり、海外のレンガや石材と比べれば十分軽いです。
これからお家を立てる方なら、今の厳しい耐震基準に沿って建てていきますのでご安心ください。
4-2 耐火性ならモルタル
耐火性は、モルタルとサイディングどちらも優れています。
ただ、サイディングの方はグレードによって多少性能に差があるため、防火認定が取れているか念のため確認しておくと良いでしょう。
■窯業系サイディング
サイディングは主成分がセメントのため、耐火性に優れていますが、性能は製品によって差があります。
性能の違いは、外壁材の火熱を遮る時間の長さを評価した「火災時の安全に関する耐火等級」を見ましょう。
サイデイングには最高の4等級の製品もありますので、特に耐火性能を求められる地域にお住まいの方などは、この等級をチェックしておきましょう。
耐火等級 | 火災による火熱を遮る時間の長さ |
4 | 60分以上 |
3 | 45分以上 |
2 | 20分以上 |
1 | 20分未満 |
■モルタル
モルタルも主成分はセメントや水等、不燃性の材料なので、非常に耐火性に優れ、火災時も燃え広がりにくいのが特長です。
そのため、木造住宅が多い日本では昔から選ばれ続けてきています。
また、建築基準法でも「不燃材料」という、最も火災に強い材料として認められています。
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不燃材料であるモルタルを壁材として使用し、一定の厚さを満たすと、建物自体が耐火構造/準耐火構造として認定されます。
準耐火建築物として認定されると火災保険料が安くなることがありますので、気になる方は設計時に建築会社へ相談しておきましょう。
4-3 遮音性ならモルタル
遮音性重視なら、モルタルがおすすめです。
■窯業系サイディング
サイディングの厚さにより、多少聞こえ方は異なりますが車の音などの騒音がほとんど気にならなくなる位の遮音性を持っています。
70db(かなり大きな声でないと会話できないレベル)の騒音なら、会話に支障のない40db~36dbにまで抑えられます(出典:ケイミュー株式会社)。
■モルタル
モルタル壁は何層も重ねる構造になるため、振動が伝わりにくく音を遮る効果が高いです。
また現場で塗り仕上げる壁なので隙間がないことも、遮音性を高めてくれています。
5章 価格の違い
材料が違えば、価格も異なります。お家を建てる際の予算に合わせて選びましょう。
一般的にはサイディングの方が安価ですが、高グレード製品だとモルタルより高価なものもあります。
■外壁材の価格目安
窯業系サイディング | 3,000円~/㎡ |
モルタル | 5,000円~/㎡ |
■窯業系サイディング
工場生産されたボードを現場で組み立てるため、施工期間の短縮、人件費の削減ができて安価です。
ただし、厚さ、デザイン性によってグレードにも幅があり、金額が違ってきます。
厚みがあって耐久性や凹凸のデザイン性が高いもの、色数の多いおしゃれなものなどの高グレード製品は、モルタルよりも高価になることがあります。
■モルタル
職人による手作業で仕上げる為、サイディングよりも時間や人件費が掛かり高額になる傾向があります。
塗るときの厚さや、仕上げ方によって価格は前後します。
6章 イメージを掴もう!おしゃれな施工事例集
性能の違いをみても、やっぱり選べないという方もいるかと思います。
そこで、最後にモルタル・サイディングそれぞれのおしゃれな施工事例をご紹介します。
完成イメージ作りの参考にしてみてくださいね。
6-1 シンプルなデザインから洋風まで|サイディング事例10選
幅広いデザインから選びたいなら、サイディングがおすすめです。
ここではサイディングを使ったお家の事例を10個紹介します。
①イエロー×ホワイトで明るい印象に
サイディングのなかでも、ラップサイディングと呼ばれる方法で仕上げています。洋風なデザインがお洒落です。
②シンプルモダンなデザインがお洒落
外壁全体はシンプルなデザインですが、黒い擁壁でメリハリをつけています。
③ホワイト×グリーンでナチュラルテイストに
落ち着いた色を使うことで、高級感ある印象に仕上がりました。お庭の植栽も映える配色です。
④ホワイト×ブラウンで温かみのある印象に
お庭の植栽ともよく合う、温かみのある色合いが素敵です。また、玄関ポーチにタイル調のサイディングを使うことで高級感のある印象に仕上げています。
⑤レンガ調の模様がお洒落なお家
一部だけレンガ調の模様のサイディングを使用しています。違う柄のサイディングを使うことで、メリハリの効いた仕上がりになっています。
⑥モノトーンの組み合わせがお洒落なお家
黒と白で統一しています。すっきりとした配色がお洒落です。
⑦タイル調のサイディングがお洒落なお家
玄関ポーチにタイル調の模様のものを使用しています。縦のラインで白いサイディングと濃い色のものを分けている為、スタイリッシュな印象です。
⑧ナチュラルで優しい印象に
ドアとレンガの擁壁がアクセントです。優しい色でシンプルに仕上げることで、飽きの来ないデザインに仕上がりました。
⑨グレーで統一した、モダンなデザイン
同系色ですっきりしたデザインに仕上がりました。サッシや雨樋の黒がアクセントです。
⑩レンガ調の外壁がアクセント
黄色の外壁で、お家が明るい印象になります。レンガの外壁がアクセントです。
6-2 独特の風合いと凝ったデザインに|モルタル事例10選
曲線的なデザイン等、凝ったデザインにしたいならモルタルがおすすめです。
ここではモルタルを使ったお家の事例を10個紹介します。
①屋根の曲線がお洒落なお家
屋根周りの外壁にカーブを付けています。継ぎ目の出ないモルタルなら、こうしたデザインも綺麗に仕上がります。
②出窓がアクセント!シンプルな色使いがモダンなお家
出窓のカーブがアクセントです。このような自由なデザインを取り入れるなら、モルタルがぴったりです。
③玄関ポーチがお洒落なお家
多角形の玄関ポーチがお洒落です。ネイビーのラインで、淡い色が引き締まった印象になりました。
④優しい印象の色使いのお家
黄色と白の組み合わせで、ナチュラルな印象に。外壁の風合いを生かした色使いが素敵です。
⑤ネイビーがアクセントカラーのお家
ネイビーとホワイトの組み合わせで、モダンな印象に。凝ったデザインも、モルタルなら綺麗に仕上がります。
⑥高級感あるデザインが素敵なお家
外壁の一部にタイルを使用しています。モルタルだけで仕上げるのも素敵ですが、タイルを使うと、さらに高級感がでます。
⑦木の窓枠がアクセント
木の窓枠やフェンスがアクセントになっています。モルタルの温かみのある風合いにもとてもよく合います。
⑧洋瓦×モルタルで外国風のお家に
洋瓦との組み合わせで、外国風のお家に仕上がりました。淡いグレーの外壁は、暗い雰囲気にしたくないという方にもおすすめです。
⑨グレー×モスグリーンで温かみのあるお家に
デザインがシンプルな分、モルタルの風合いを生かしたデザインにできます。
⑩土壁風の色合いで、和瓦にも合うデザインに
屋根を和瓦にしようかな…という方ならモルタルがおすすめです。
まとめ
窯業系サイディングは、セメントと繊維質の材料を混ぜて作られた板状の外壁材です。
あらかじめカットされたものを建築現場で組み立てていくため、工期が短く済み、比較的安価です。
シンプルなものからタイル調などの様々なデザインから選ぶことができます。
モルタルはセメントと砂、水が材料です。
左官職人の手作業で塗って仕上げるため、手間暇がかかりややコストは高くなります。
サイディングと異なり、曲線的なデザインなどにも自由に対応できるのが特徴です。
それぞれの性能、価格の違いは以下の通りです。
| 窯業系サイディング | モルタル |
メンテナンス時期 | 5~7年 | 3~5年 |
耐用年数 | 40年 | 30年 |
耐震性 | ◎ | ○ |
耐火性 | ○ | ◎ |
遮音性 | ○ | ◎ |
価格 (1㎡当たり) | 3,000円~ | 5,000円~ |
予算や求める性能にあったものを選び、後悔のないお家づくりをしていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。