外壁塗装をご検討中のあなた。
“養生(ようじょう)”という言葉を目にし、
「どんな作業なの?」
「どんなことをされるの?」
「何か注意することはあるの?」
と、具体的なことが分からず、お調べになっているのではないでしょうか。
塗装工事の養生とは、塗料が飛んでほしくない所にカバーをしたり、塗装しない場所や見切り線の仕上がりがきれいになるように行ったりする作業です。
これは高品質な工事のために欠かせない、重要な作業です。
一見、重要な作業というイメージはないかもしれませんが、この記事を見て頂くことで、養生の役割や重要性が理解できます。
またどんな養生がどの場所にされるのか、いつまでが養生期間なのかまで、マルっと分かるように解説します。
最後まで読んでいただくことで、良い養生・良い工事にできますので、ぜひお読みください。
目次
1章 養生の目的は『保護』と『きれいな仕上がり』
塗装工事の養生は、『汚したくない場所の保護』と『きれいな仕上がり』の2つを目的として行います。
工事中ペンキが飛んでしまうこともありますし、仕上がり面では塗る場所のはみ出しが出ないようきれいに仕上げるためです。
どちらも良品質の塗装のために重要な目的なので、その重要性を理解しましょう。
1-1 保護のための養生
保護を目的とする養生は
・建物を塗料の飛散から守る
・自宅やご近隣も塗料や洗浄水の汚れから守る
というものがあり、それぞれの用途に適した養生方法を取ります。
足場が立った時にグルっと囲まれているメッシュシートや、塗装をしない玄関タイル、また庭木が汚れないように、工事の汚れや飛び散りから保護するのが最大の目的です。
▲周り近所への飛散防止のメッシュシート
1-2 きれいな仕上がりのための養生
きれいな仕上がりのための養生は、汚さないという保護レベルから美しい見た目・仕上がりという高品質の塗装にするのが目的です。
色の境目にテープを貼って、まっすぐなラインがよりきれいに出せるようにするような、見た目を更に良くするための養生です。
▲窓サッシに養生をすることで、ギリギリまで塗装も出来ますし、はみ出しも起きずきれいに塗れます。
2章 養生の種類と期間
塗装工事は、天候にもよりますが、通常の一戸建てで10~14日間で行われます。
全体の工程としては以下のような流れで行われますので、どの養生が、どのくらいの期間必要とされているかを事前に知っておくことで工事の際の不安や戸惑いがなくなるでしょう。
養生が必要な場所はこんなところです。
・窓やドア周り ・エアコンの室外機 ・車 ・玄関、ベランダ周り ・塗装の材料置き場、通路 ・郵便受け ・植物や花壇 |
必要な養生については、工程に対してこのような内容と期間になっています。
その時に実施する施工内容によって必要な養生を行い、作業が完了すれば取り払われます。
養生期間は工事の進捗に左右されますので、取り払うタイミングが気になる方は、施工業者にいつ養生が取れるか確認してみるのも良いでしょう。
2-1 窓や植栽|4~8日間
窓や植栽をカバーするのに、テープにビニールシートが一緒になった、「マスカー」という道具を使って覆い保護します。
開口部にはガラスがあるので、基本的に全ての窓は養生をする必要があります。
植栽は大きさにより使う道具を変えることもありますが、広めの面積を覆うのに、シート部分のバリエーションが多く、テープが付いていることで作業効率も良くなるため、塗装現場では比較的多用される養生です。
使うもの | マスカー |
特徴 | テープにビニールシートが ビニール部分は頑丈ではないので、簡単に破って通気を確保することができる。 |
期間目安 | 4~8日間(洗浄後~片付け前まで) |
▲後で塗る庇(ひさし)の飛散防止カバーに
▲間接照明のカバーに
▲メーターをカバーして結べば、しっかり保護に
▲換気口の保護に
▲ポストの保護に
▲植物を汚れから守るために
▲際部分は刷毛をしっかり入れても、周りが汚れません
2-2 エアコン室外機|8日間
エアコンがあるご家庭には、室外機が汚れないように「室外機カバー」を使い室外機を覆います。
室外機は汚れては困る場所ですが、密閉するように覆ってしまうとエアコンが使えなくなるため、覆うだけでOKの室外機カバーを使用する業者が多いです。
正しい室外機の養生をすることで、工事中でもエアコンが利用可能です。
ビニールシートやマスカーを使って覆う会社もありますが、正しくカバーしないと、空気の道を塞いでしまい、エアコンが故障する原因になります。
使うもの | 室外機カバー |
特徴 | 室外機に上から掛けるだけでカバーができる。空気の道も塞がないので、エアコンも問題なく使用できる。 |
期間目安 | 約8日間(洗浄後~片付け前まで) |
▲マスカーで養生する場合は、保護しつつ空気の逃げ道を作らないと故障の原因になります。
(写真では手前下部分はビニールで覆っていないので空気が通る)
上から掛けるだけで適切にカバーができる室外機カバーは、作業効率や事故を防ぐ養生です。
2-3 カーシート|3日間~
「カーシート」は、施主様や近隣で影響があるかもしれない範囲の車に被せる養生です。
特に高圧洗浄や、風が吹いている日などは汚水や塗料の飛散がしやすいため、ご近所トラブルを防ぐためにも重要な役割を持っています。
施主様以外の敷地外の車に対しては、高圧洗浄日や、その車に近い場所を塗装する際に使用するのが良いとされています。
使うもの | カーシート |
特徴 | 車をまるごと覆うように被せられるシート。不織布状なので車も傷つきにくく、ワンタッチで付け外しが可能。 |
期間目安 | 約3日間(高圧洗浄中、塗り作業の期間中) |
2-4 玄関やベランダ、下屋根|8~9日間
▲下屋根の滑りにくい足場に
「ノンスリップマスカー」は、玄関やベランダなど、人が通る場所のための養生です。
滑りにくく破れにくい材質のテープ付きビニールシートを使用するため、人が通る場所に適しています。
安全に配慮したノンスリップマスカーは、汚れ対策だけでなくご家族や工事作業者の安全確保の役割も持っています。
使うもの | ノンスリップマスカー |
特徴 | 普通のマスカーと形状は似ているが、それよりも滑りにくく破れにくいのが特徴。養生の効果も安全性も持っている。 |
期間目安 | 8~9日間(洗浄後~片付け前まで) |
▲玄関先に
▲ベランダの内側に
▲パティオ内の足場にも
2-5 塗り分け部分|7日間
仕上がりの美しさのために使用する養生が、「マスキングテープ」です。
真っすぐな線を出したい時や、細かい場所ではみ出しがないようにするために使用すると、より綺麗な見た目になります。
使用するのは施工の瞬間だけなので、施主様はあまり目にすることがないかもしれません。
使うもの | マスキングテープ |
特徴 | 仕上がりがより美しくなる。色分けがあったり、家の形が少し複雑だったりする時は、特によく使われる。 |
期間目安 | 約7日間(随時使用、使用した当日中に除去される。) |
▲仕上がりのムラや歪みがなくなります。
2-6 建物全体|11日前後
「飛散防止ネット」は、足場を建てたときから足場の鉄パイプに付けられているメッシュシートです。
このシートが足場回りにあることで、シートの外に高圧洗浄の汚水や塗料、ほこりが飛散しにくくなります。
足場が解体されるまでは終始ついていますが、工事の進捗や、風が強い日などには捲くって開放することも可能です。
この飛散防止ネットがあれば、これより外に汚れなどが飛ぶことはほとんどありません。
使うもの | 飛散防止ネット |
特徴 | 建物の外に高圧洗浄水や塗料など飛散しないように、全体を覆うシート。工事の進捗や状況により、捲くって開けることができる。 |
期間目安 | 約11日間(足場架設~足場解体まで) |
2-7 塗料回りや通路|9日間
「ブルーシート」は、工事で使う塗料や道具回りを中心としたエリアや通路の汚れ防止のために使用されます。
他の養生よりも厚みがあり丈夫なので、重いものが乗る場所や、人の通りが多い場所などに適しています。
通路のブルーシートは、ずれて滑らないように端をテープ止めすることが多く、その丈夫さから工事の最初から最後まで安定した保護をしてくれます。
使うもの | ブルーシート |
特徴 | ロール状のブルーシートを必要な大きさでカットして使います。雨が当たならない玄関先で使用しても、滑りにくいので効果的です。 |
期間目安 | 約9日間(高圧洗浄後~片付けの時まで) |
▲屋根のある場所なら濡れにくいので、玄関回りの養生にも使用できます。
☆養生の仕方はさまざまです!
養生の目的は「汚れの飛散などを防ぎ、仕上がりを綺麗にすること」です。
そのため、今回ご紹介した方法以外でも、ケースバイケースで道具を使い分けます。
養生する場所によっては、ガムテープを使ったり、熱が出るボイラーがあればアルミホイルを巻いたり…
業者は適材適所を見極めて養生をするため、“何を使って”養生をしているかというより、“ちゃんと丁寧に養生をしているか”を重視しましょう。
▲養生用布粘着テープ
▲コンクリートには粘着力が高い養生用布粘着テープの方が適しています。
3章 養生の費用相場
養生の費用相場は、300~500円/㎡です。
一般的な30坪2階建ての住宅であれば、家の構造や窓の数によりますが、おおよそ40,000~60,000円程度が目安です。
養生の費用について気を付けておきたいのは、植栽など、「汚して欲しくないけど、動かせないもの」がどの程度あるのか、見積の前段階で業者に伝えることです。
事前に伝えておかないと、業者も「思っていたより養生が必要なようなので、金額が高くなる」と言わざるを得ません。
最初にこちらの要望を伝えておくことで、金額や汚して欲しくないものの共通認識ができますので、養生については見積もり段階で要望を伝えられるようにしましょう。
4章 養生の3つの注意点
養生については、3つ注意してほしいことがあります。
塗装工事の中でも重要な役割を持つ養生ですが、少しでも快適な工事になるように事前に注意点を抑えておきましょう。
4-1 養生中は窓が開けられなくなる
養生中は、窓が開けられなくなります。
養生は、窓全体をビニールシートなどで覆ってしまうためです。
窓ガラスやサッシを汚さないために必要な作業なので、養生自体を避けることはできませんが、希望を業者に伝えれば、ビニールに穴を空けて換気することも可能です。
養生がされた窓は自由な意思で開け閉めできなくなるため、換気がしたい時は事前に業者に相談しましょう。
4-2 植物の長期間養生は枯れの原因になる
植物の養生を長期間すると、枯れの原因になってしまいます。
酸素や日照が不足するためです。
そのため、大切で汚したくない庭木などに対しては、特にペンキが付くと落ちにくいため、塗料を使う期間の3日程度に絞って養生してもらうと良いでしょう。
それ以上の期間、養生をしていると植物は弱り枯れやすくなってしまいます。
4-3 養生が適当だと大きなトラブルになる
養生が適当だと、大きなトラブルの元になってしまいます。
養生は、塗装品質の保護と美観のために重要です。
もし、養生が適当だと…
- ・塗料の汚れが大切にしていた庭木に付いてしまって落ちない。
- ・色分け部分が非常に汚い仕上がりで不満足。
- ・塗り終えたところに別の塗料が飛んでしまい、直してもらうのに工期が延びた。
- ・隣の家の車にペンキが飛んでしまった!
など…
考えただけでも頭の痛いトラブルの原因となるのです。
そのため、養生の役割・大切さをしっかり理解している業者を選びましょう。
養生が適当な業者はトラブルを引き寄せます。
5章 業者との打ち合わせ・相談が重要!
養生については、業者との打ち合わせや相談が何よりも重要です。
養生は高品質の塗装工事には欠かせない重要なものなので、しっかりと打ち合わせをすれば、窮屈な思いも最低限に、良い工事が実現できるからです。
【工事前】
・何を養生してほしいと思っているか
【工事中】
・エアコンは使えるか
・換気や洗濯のため、窓を開けてもよいか
・植物はどの期間養生してもらうか
【工事後】
・養生の剥がし忘れがないか
・片付け忘れがないか
気になったり、もし可能ならやってほしい、と思っていることは遠慮せず業者に相談して、対応をしてもらいましょう。
まとめ
養生について色々お分かりいただけましたか?
養生の最大の目的は『保護』と『きれいな仕上がり』です。
正しい養生によって、汚れからの保護と美しい仕上がりに差が出てきます。
また養生の種類と期間については、それぞれ以下の通りです。
- ●窓や植栽|4~8日間
- ●エアコン室外機|8日間
- ●カーシート|3日間~
- ●玄関やベランダ、下屋根|8~9日間
- ●塗り分け部分|7日間
- ●建物全体|11日前後
- ●塗料周りや通路|9日間
養生の費用相場は、300~500円/㎡です。
一般的な30坪2階建ての住宅であれば、家の構造や窓の数によりますが、おおよそ40,000~60,000円程度が目安です。
養生で注意してほしい3つのポイントは
- 1 養生中は窓が開けられなくなる
- 2 植物の長期間養生は枯れの原因になる
- 3 養生が適当だと大きなトラブルになる
です。
知っておかないと、いざその場になって困ってしまうので、施工中にトラブルにならないようにしましょう。
注意事項がある以上、なんといっても大切なのが業者との打ち合わせ・相談です。
工事前の事前相談から、施工中の相談まで、気になることはなんでも無理に我慢せず業者に相談しましょう。
きっと解決策を探してくれます。
養生の大切さを理解して、良い工事にしてくださいね。
◆塗装工事の各工程について、詳しくはこちら
>【全工程写真付!】外壁塗装の工程と高品質工事にする3つの確認方法