業者から見積もりを取ったら、塗料のところに「耐用年数」って書いてあるけど、これは何?
この年数は汚れないっていうこと?
そもそもこの年数って本当なの?
…という疑問をお持ちになった方も多いのではないでしょうか。
実はこの耐用年数とは、塗料が家を守ってくれる耐久性のことです。
外壁塗装の一番の役割は水を弾くこと・お家を水から守ることですが、永久ではありません。
年数が経つと塗料は劣化していつかはこの効果が切れてしまいます。
この耐用年数が過ぎたら、次の塗装の時期ということになります。
そこで今回は、塗料毎の正しい耐用年数と注意すべきポイントを取り上げました。
これを知っておけば業者のウソに騙される心配がなくなりますし、ご自身に合った最適な塗料を選ぶことができます。
正しい耐用年数が分かれば、お家のメンテナンススケジュールを立てることができます。
お家の将来を考えるという事は、ご家族の将来を考えることにもなりますよね。
この記事を読んでいただいて、ぜひ安心のご家族計画を作ってみてください。
目次
1章 耐用年数とは、塗料の耐久性のこと
塗装工事の見積書などに書いてある「耐用年数」というのは、塗料の「耐久性」のことです。
塗料は雨や紫外線からお家を守る役割を持っていますが、この機能は永遠に持続するものではありません。年月とともに劣化していき、やがては効果が切れてしまいます。
効果がある期間「耐用年数(期待耐用年数)」が必ずあるのです。
例えば、日焼け止めクリームも一回塗っておしまい、ではないですよね。
数時間で保護機能がなくなってしまうので、時々塗り直す必要があります。
ただ注意していただきたいのは、「耐久性」は色落ち、色褪せなどとは関係ないということです。
例えば、色はまだ外壁に残っているように見えても、外壁を水から守る機能が切れてしまっていることがあります。
見た目ではなく、お家を守ってくれる「耐久性」が塗料の「耐用年数」ということです。
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2章 主要な塗料の耐用年数一覧表
塗料の耐用年数は、塗料の種類によって様々です。
まずは代表的な塗料の耐用年数を一覧にしてご紹介します。
メーカーが違ったとしても、種類が一緒であれば耐用年数はほぼ変わりません。
これを知っておけば、業者がオーバートークをしていないか見抜けます。
安心の塗料選びのために参考にしてください。
アクリル塗料 耐用年数:3~5年 |
・安価で手軽。新築時に使用されることが多い。 ・耐候性が劣り、ひび割れしやすいので塗替えにはあまり使われない。 |
ウレタン塗料 耐用年数:8~10年 |
・比較的安価で、汚れや色褪せにも強いが、耐候性はやや劣る。 ・下地との密着性が優れている。 ・価格と機能のバランスが良く、以前は塗替えに使用されることが多かったが、近年は高耐候塗料が増え使用が減った。 |
シリコン塗料 耐用年数:10~15年 |
・耐候性に優れている。 ・汚れ、色褪せ、カビ、藻などに強い。 ・価格と機能のバランスが良い。一般住宅の塗装では最も人気がある。 |
フッ素塗料 耐用年数:15~20年 |
・耐候性に優れている。汚れに強い他、ツヤも美しく、仕上がりの見た目が良い。 ・塗り替えが少なくて済むので大型建造物に使用されることが多い。 ・コストがかかるが、近年技術開発が進んで、一般住宅にも使える価格になって普及してきた |
無機塗料 耐用年数:20~25年 |
・熱や紫外線で劣化しにくい無機成分を多く含むので、耐候性が非常に高い。 ・塗り替えが少なくて済むので大型建造物にも使われる。 ・コストはかかるが耐用年数が長いので、長期的なコストパフォーマンスを考える人向け。 |
【注意!水性の場合は耐用年数の短いものもある】
実は、ペンや絵具と同じように、塗料にも水性と油性があります。
水性塗料はもともと耐久性が低いと言われていましたが、近年は技術がすすんで油性と変わらない性能のものも多数出てきました。
そのため、現在の水性塗料は耐用年数が長いもの短いものが入り混じっている状態です。
塗料によっては耐用年数が短い場合がありますので、どれくらい持つかは、各塗料メーカーのサイトを見たり、業者に確認を取っておきましょう。
◆水性・油性の違いについて詳しくはこちら
3章 耐用年数はあくまで目安!注意すべき3つの理由
種類別の耐用年数をご紹介しましたが、「絶対にこの年数劣化しない」と断言できるものではありません。
なぜなら、以下でご紹介する3つの理由があるからです。
例えメーカーが出しているパンフレットに耐用年数が書いてあったとしても、実際には数年ほど前後する可能性もあります。あくまで目安と考えていただくのが大切です。
下記のようないくつかの理由で耐用年数が短くなる場合もありますが、少しでも長く持たせる方法については
⇒『6章 塗装の劣化を食い止める3つのコツ』をご覧くださいませ。
3-1 塗料の試験結果が元で、実際の家で試したものではない
各メーカーや塗料パンフレットの記載してある耐用年数の根拠は、
「促進対候性試験」
…太陽に見立てた強いランプを長時間当てて、劣化具合を試験する
というものを用いているのが一般的です。
■促進耐候性試験機(キセノンランプ式)
出典:スガ試験機株式会社
各メーカーはこうした専用機械を使って試験した結果で、耐用年数を算出しています。
この試験では紫外線に対する強さは分かります。
しかし外壁塗装が劣化する原因は紫外線以外にも雨や風、排気ガスなどたくさんのものが重なってきます。
そのため、実際にお家に塗った場合には、試験結果より早く劣化する可能性も当然出て来てしまいます。
このほかに、
「屋外暴露試験」
…塗料を塗った板を外に置いて劣化具合を試験する
という、実際の外気で試験を実施している塗料もありますが、やはり日当たり風当りや環境は、お家一軒ごとに大きく違ってきます。
■海上での暴露試験施設
日光を遮るもののない海上や、開けた土地を使った試験場もあります。
過酷な環境下での試験ではありますが、実際のお家とまったく同じにすることはできません。
どんな試験をした塗料であっても、記載されている耐用年数は目安程度に考えましょう。
3-2 地域、環境によって耐用年数は変わる
前項でもお伝えした通り、建物の立地条件など環境によって耐用年数は変わります。
例えば開けていて日当たりのよい建物の場合は紫外線による影響が強いため、色褪せやチョーキングなどから始まり、塗膜の劣化が起こりやすくなってしまいます。
海沿いにお住まいの方は日差しに加えて、塩害も考慮が必要です。
逆に建物が密集していて風通しの悪い建物の場合は、カビやコケの発生などが通常より早く進行してしまいます。
森林公園や畑などが隣接しているところも湿気が溜まりやすいため、こうした汚れが付きやすくなってしまいます。
繁華街や大通り沿いは、排気ガスの他、大型トラックが通る際の振動などもお家や塗膜へ負荷を与えることがあります。
このように、同じ塗料を使用したとしても建物の立地や環境、また方角によっても劣化のスピードは変わってしまいます。
外壁塗装の耐用年数は全て「目安」である、ということを知っておきましょう。
3-3 業者の考え方によって言うことが違う場合がある
例えば同じ塗料でも、
A社「10年~12年持ちますよ!」 B社「20年は持ちますよ!」 |
と、業者によって言うことが違う場合があります。
これは、その業者が「塗装の役割をどう考えているか?」によって変わってしまうからです。
塗装を「お家を守る、保護する工事」と思っている業者であれば、一番初めの表に書いてある、耐久年数で言ってくれます。
一方、「色を付けるだけ、キレイにするだけの工事」と思っている業者の場合、単に「色」が何年持つのかという年数しか考えません。
例えばウレタン塗料でも色だけなら10年以上残ることだってあります。
しかし防水効果を保っている年数(6~8年)を過ぎていればお家はどんどん劣化してしまいます。
単にキレイになれば良いという工事内容の提案は、数年後また工事(=費用が発生する)が必要になるかもしれません。
塗装はお家を長持ちさせるための「お家を守る、保護する工事」です。
きちんとそれを理解している業者にお願いしましょう。
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4章 耐用年数が過ぎたら次の塗装が必要!
それでは耐用年数が過ぎてしまったらどうしたらよいのでしょうか?
その時は、次の塗装を行いましょう。
なぜなら耐用年数が過ぎた=水を弾く力がなくなった ということだからです。
水を弾く力がなくなると、外壁はどんどん水を吸い込むようになって、様々な劣化症状を引き起こしてしまいます。
劣化は放っておくとさらに進行していって、大きな修繕工事が必要になったりすることにもつながります。
余計な費用をかけないためにも、耐用年数が過ぎたら再塗装を行いましょう。
4-1 現状を見極める4つの簡単チェックポイント
それでは我が家は今、耐用年数は大丈夫なのか?
ご自宅を目で見て確かめてみましょう。
以下の症状が出ていたら、耐用年数が過ぎているサインです。
■水をかけて吸い込む状態か
見つけやすいところ:日当たりのよい南面や西面
■壁を触って手に粉がつくか(チョーキング現象)
見つけやすいところ:日当たりのよい南面や西面
■カビ、コケが繁殖していないか
見つけやすいところ:日陰になる北面や隣家と接する面、畑や庭の近く
■小さなひび割れが起きていないか
見つけやすいところ:釘の周り、窓サッシの周り
これらの症状が出てきたら、耐用年数が過ぎてきたサインです。
大きな劣化、大規模工事になる前に、早めの塗装を検討してあげましょう。
4-2 新築は5~7年目で塗装するのがベスト
新築して初めての塗装は、5~7年目くらいに行いましょう。
なぜなら、新築時に塗られている塗料はほとんどが「アクリル系」だからです。
アクリル系塗料は5年前後で耐久性が無くなってしまいます。
これは、建築会社が手抜き工事をしているわけではありません。
新築時の建材はアルカリ性が強いため、耐久性のある強い塗料は相性が悪くて塗ることができないからです。
また、建材である木やコンクリートなどは、気温や湿気、土地の動きに合わせてわずかに動いています。
これが落ち着くまでには2~3年ほどかかりますので、長持ちする塗料の硬い塗膜は動きについていけず、逆にひび割れを起こしてしまうのです。
もちろん新築工事は非常にお金がかかるので、仕上げの塗装費用はできるだけ安く抑えたいという狙いもあるかとは思います。
しかしそれ以上に、新築すぐのお家に合う塗料ということで耐用年数の短いアクリル塗料を使っている、というわけです。
最初の塗装は、アクリルの耐用年数を迎える5年~7年でやるのが、お家をきれいに長く保つには理想的です。
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5章 ライフプランを検討してから選ぶのが◎
耐用年数は、とにかく長ければ良いというものではありません。
なぜなら、「耐用年数」を選ぶということは「次の塗り替え時期」を選ぶことだからです。
長く持つものはそれだけ金額も高くなってしまいますから、ご自身の今後のライフプランとしっかり相談して決めましょう。
例1: うちの子はまだ5歳。本人が望むなら大学までは行かせてあげたい。 お金がかかる進学時期と被らないように、15年は持つフッ素にしよう。 |
例2: 息子夫婦から、10年以内には一緒に暮らそうと言われている。 そうなったらこの家は売りに出す予定だ。最低限で済むようにウレタンにしよう。 |
…などなど、ご家族の事情は当然みなさん違ってきますよね。
塗装工事はお家を守るための工事です。ご家族の生活に直結してきます。
また、金額も決して安いものではありません。
ご家族のライフプランに合った耐久年数の塗料を選びましょう。
塗料の種類 | 耐用年数 |
アクリル塗料 | 3~5年 |
ウレタン塗料 | 8~10年 |
シリコン塗料 | 10~15年 |
フッ素塗料 | 15~20年 |
無機塗料 | 20~25年 |
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6章 塗装の劣化を食い止める3つのコツ
塗料や環境によって耐用年数は変わってしまうけれど、それでもちょっとでも長く持たせてお得にしたい、という方もいらっしゃいますよね。
実は、外壁塗装の劣化を少しでも食い止めるためにみなさんご自身で実践できることがあります。
どんなに良い塗料を選んでも劣化が早まってしまう場合というのは
①施工が良くなかった場合
②お家まわりの環境が悪い場合
③もともと家の劣化が激しかった場合
の3点です。
ここでは、この3点を解消して塗装の劣化を遅らせるためのコツをお伝えします。
ぜひやってみてくださいね。
6-1 正しい施工をしてくれる業者を選ぶ
塗料本来の耐用年数を発揮するには、当然ですが正しい施工をする必要があります。
“耐用年数を発揮するために重要な3つのポイント”
・下塗りは素材に合ったものを使っているか
・既定の塗布量を守っているか(薄めて塗っていないか)
・既定の乾燥時間を守っているか
全ての塗料には「仕様書」という、取扱説明書があります。
(大抵はカタログの裏面についています。)
きっちりこの通りに施工すれば本来の耐用年数が期待できるのですが、悪徳業者や下請け会社などは工期の短縮や人件費を抑えるために、この細かいルールを無視してしまうこともあります。
業者を選ぶ際には、上記のポイントをきちんと守るためにチェックや管理の体制などが整っているか、どんな取り組みをしているのか、を確認しておくと安心でしょう。
信頼できる業者の取り組み例: ・見積もり前の下地診断に時間をかけている、下塗り材の説明をする。 ・職人任せにせず、現場を随時チェックする部署がある。 ・塗料の使用量や日にちを全て記録して管理している。 ・毎日の工事内容を報告してくれる、写真に撮って残している。等 |
6-2 日々のお家周りの掃除、お手入れで綺麗に保つ
塗装後は、お家のまわりや植木のお手入れをきちんとしてあげることでより長く塗装を保ってあげることができます。
■お庭の草木のお手入れ
お庭や植木を手入れせず荒れ放題にしてしまうと、湿気が溜まりやすくなり、カビやコケが繁殖しやすくなってしまいます。
壁にツタ植物が張り付くのも、塗膜やお家本体にダメージを与えてしまいますので、ちゃんと除去してあげましょう。
他にも、家の裏側だからと言って使わないものをたくさん放置しておくと、風通しが非常に悪くなってしまいます。
塗装工事を機に片づけもしてすっきりさせると、お家にとっても良い環境になります。
ちょっとしたことですが、細かなケアをしてあげるだけでも外壁塗装の劣化を遅らせることができます。
こうしたお手入れをしてみると、大切なお家にもっともっと愛着が湧いてくると思います。
塗装を終えた方は是非実践してみてください。
6-3 劣化がひどくなる前に塗装をする。
外壁の劣化がひどく進んでしまった後では、塗装の効果も発揮されにくくなります。
初期症状のうちにメンテナンスをするのが最善です。
■専門家による詳細な点検
人間の健康診断と同じで、丁寧な点検による早期発見、早期対処が一番です。
劣化がひどく進む前に塗装を検討しましょう。
どんなに良い塗料で塗装しても、ボロボロになった建材が復活するわけではありません。
せっかく塗装したのに数年後、下地の建材からはがれたりすることもあります。
例えば大きなヒビが入っていたり、サビがすすんだりしていた箇所は、丁寧に補修してから塗装する必要があります。
万が一、壁の部分張り替えや木材の交換などの大きな工事になってしまうと補修費用も余計に掛かってしまいますので、出費を減らすためにも塗装時期は見逃さないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
塗料の耐用年数とは、お家を水から守ってくれる「耐久性」のことです。
種類によってかなり年数が違う上に、お家の環境などにも左右されるので注意が必要です。
耐用年数が過ぎたら次の塗装が必要になります。
今現在は耐用年数が過ぎていないかご自身でもチェックできますので、気付いたら専門業者に見てもらって、塗装の検討をしましょう。
ただ、とにかく耐用年数が長いものを選んでおけばよいわけではありません。
次の塗装の時期がご家族にどう影響するのか、しっかり考えて選ぶのが重要です。
塗装をお考えになる際は、ライフプランを改めて考える良い機会かもしれませんね。
ぜひ塗装工事を通して、ご家族が末永く安心できる住まいと将来設計を実現していただければと思います。
お読みいただきありがとうございました。
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