「ハイブリッド塗料」というものを、外壁塗装の業者から勧められて初めて知った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ハイブリッド塗料とは、主に「無機成分と有機成分を組み合わせて作られた塗料(無機ハイブリッド塗料)」のことです。
無機と有機の長所を併せ持った、新しい技術の塗料です。
これまで最高級とされていたフッ素樹脂塗料よりもさらに上の耐久性を誇ると言われ、業界でも注目されています。
しかし、具体的な特徴やほかの塗料との違いまでは、業者が詳しく説明してくれないことも多いでしょう。
それでは大事な塗料選びに不安が残ってしまいます。
そこで本記事では、今注目のハイブリッド塗料について、メリット、デメリットとおすすめ塗料を分かりやすく解説します。
ハイブリッド塗料は非常に優れた塗料ですが、当然注意点もあります。
きちんと全体の情報を知ったうえで、ご自宅の塗装に使うかどうか判断してくださいね。
※「ハイブリッド」とは二つ以上の異なる成分を混ぜる、という意味なので、ハイブリッド塗料にも様々な種類があります。 本記事では最も一般的な「無機ハイブリッド塗料」について解説していきます。 |
目次
1章 いま話題の「無機ハイブリッド塗料」とは
無機ハイブリッド塗料とは、「無機成分と有機成分を分子レベル~ナノレベルで組み合わせて作られた塗料」のことです。
無機塗料、無機有機ハイブリッド塗料、とも呼ばれます。
耐久性が高いけれどもひび割れやすい「無機物」と、柔軟性があるけれども劣化しやすい「有機物」の成分を、うまく組み合わせて弱点を補い合うことで、より優れた性能を発揮できる塗料となっています。
近年は塗料メーカー各社が無機ハイブリッド塗料を開発・販売しており、業界でも非常に注目されている技術です。
例えば、無機物とは、ガラスや石など紫外線を浴びても劣化しないものです。
しかしガラスが強い衝撃で割れてしまうように、柔軟性がないので、無機成分100%では塗料になりません。
一方有機物とは、私たちの皮膚や髪の毛、植物、でんぷんなど、柔軟性があるものです。
塗料でよく聞くフッ素樹脂やシリコン樹脂などの「樹脂」も有機物です。
紫外線を受けると劣化してしまうのが弱点です。
この二つを組み合わせることで、塗装に適した柔軟性と高い耐久性をもたせたのが、無機ハイブリッド塗料です。
どんな成分同士を組み合わせるのか、どうやって組み合わせるのか、などは製品やメーカーによって異なります。
そのため、一言に「無機ハイブリッド塗料」と言っても、様々な種類や性能の塗料があるのも特徴のひとつです。
次の章からは、無機ハイブリッド塗料の具体的なメリットやデメリットについて解説していきます。
2章 無機ハイブリッド塗料のメリット
無機成分と有機成分を配合して作る無機ハイブリッド塗料は、様々な性質を持っています。
製品やメーカーによって配合比率や成分の組み合わせ方法が異なるので、機能のバリエーションも豊富にあります。
この章では、一般的に共通していることが多い無機ハイブリッド塗料のメリットを解説していきます。
※全ての塗料に全く同じメリットがあるわけではないのでご注意ください。
2-1 高い耐久性
無機ハイブリッド塗料最大の特徴は、紫外線や熱に強く耐久性が高い点です。
ガラスや石が何十年も紫外線を浴びてもほとんど劣化しないように、無機成分を多く含む無機ハイブリッド塗料は劣化しにくいからです。
一般的なシリコン樹脂塗料は10~15年、フッ素樹脂塗料は15~20年ほどの耐久性です。
それに対して無機ハイブリッド塗料は、20年以上の耐久性を持つものが多くあります。
1回の塗装で長く持たせたい、高耐久な塗装を求める方にぜひおすすめです。
2-2 カビ・コケが繁殖しにくい
無機ハイブリッド塗料は、一般的な有機塗料と比べてカビ・コケ・藻が生えにくい性質(防カビ・防藻性)を持っています。
なぜなら、カビ・コケなどの栄養分である有機物の含有量が普通よりも少ないからです。
(完全に滅菌するわけではありません。)
カビ・コケは建物の見た目を悪くしてしまいますし、根を張ることで建材自体を傷めてしまいます。
無機ハイブリッド塗料を使うことによって、見た目を綺麗に保つこともでき、壁や屋根の素材そのものも保護することができます。
2-3 汚れにくく光沢が長持ちする
汚れが付きにくく美しい外観を長く保てるのも、無機ハイブリッド塗料の特徴です。
無機ハイブリッド塗料の多くは水となじみやすい「親水性」という性質を持っているためです(低汚染性とも言います)。
例えば外壁に汚れが付いても、雨が降ると水が入り込んで汚れを流してくれます。
※汚れが全て完全に流れるわけではありません。
また無機成分は静電気が起こりにくいため、ホコリやチリなどの引き寄せが少なく、そもそも汚れが付着しにくくなります。
こうした性能によって、長期間にわたって美しい光沢を保てるのも大きなメリットのひとつです。
2-4 燃えにくい
無機ハイブリッド塗料は非常に火に強く、燃えにくいという利点があります。
そもそも無機物が燃えにくい(不燃性の)ものだからです。
有機物は燃えると二酸化炭素が発生し、黒く焦げて炭になります。
一方、無機物であるガラスや石は火をつけても燃えてなくなったりしませんよね。
無機塗料は100%無機ではなく、有機成分も含んでいるので、全く燃えないわけではないのですが、それでも有機塗料と比べて十分燃えにくいです。
万が一近隣の火事などが飛び火してきても燃え移りにくいため、二次災害の確率を低くすることができます。
3章 無機ハイブリット塗料のデメリット
最新技術で高性能な無機ハイブリッド塗料ですが、万能なわけではありません。
この章では無機ハイブリッド塗料のデメリット部分をお伝えします。
大切なお家の塗装工事ですから、注意点もしっかり理解したうえで塗料選びをしましょう。
3-1 金額が高い
無機ハイブリッド塗料は高性能な塗料ですが、その分費用は高めです。
■塗料の単価相場
単価相場/㎡ | |
アクリル | 1,400~1,600円 |
ウレタン | 1,700~2,500円 |
シリコン | 2,300~3,500円 |
フッ素 | 3,500~4,800円 |
無機ハイブリッド塗料 | 4,300~5,500円 |
塗装は家全体を塗っていきますから、単価だと数百円の差でも、工事全体だと数万~十数万円の差になってきます。
ただ、耐久性が高ければ塗り替え頻度も少なく済むため、長い目で見るとコストパフォーマンスは良いです。
1回の工事費用で見るのか、長期的なトータルコストで見るのかは、ご家庭の都合や予算などと合わせてしっかり考えましょう。
3-2 完全な艶消しができない
一般的に塗料には艶があり、艶消し材などを入れることで艶を抑えてマットな仕上がりに調整することができます。
しかし無機ハイブリッド塗料は、艶を消しにくいという性質があります。
そのため、完全な艶消し塗料はまだ販売されていません。
調整しても5分艶~3分艶ほどになりますので、仕上がりの艶感にこだわりのある方は注意しましょう。
>塗料の艶について詳しくはこちら
3-3 きちんと扱える業者を選ぶ必要がある
これは無機ハイブリッド塗料に限ったことではありませんが、塗装工事は職人の知識・技術が重要です。
どんなに素晴らしい塗料でも、施工の質が悪ければその性能を発揮することができないからです。
特に無機ハイブリッド塗料は新しい種類ですので、まだ使った経験がない・知識がない業者も当然存在します。
さらに、元々が性能の良い塗料だからこそ、万が一工事品質が悪かった場合の落差というのも激しくなってしまいます。
せっかく真剣に選んで塗装したのに、無駄になってしまっては意味がありませんよね。
無機ハイブリッド塗料での塗装をお考えの方は、きちんとその塗料の施工実績が豊富な業者に依頼するようにしましょう。
3-4 無機ハイブリッド塗料内でも耐用年数に幅がある
無機ハイブリッド塗料と一口で言っても、実は性能や耐久性にはやや幅があります。
なぜなら、“無機成分と有機成分の比率が何パーセントなら無機ハイブリッド塗料と言える”という定義は決まっていないからです。
例えば、普通の塗料にほんの少し無機成分を加えただけでも、無機ハイブリッド塗料と言えてしまいます。
また、どんな樹脂(有機成分)を組み合わせるかによっても性能は変わります。
例えばシリコン樹脂+無機成分の塗料で12~20年ほど、フッ素樹脂+無機成分となると15~25年ほどの耐久性のものが多く、この場合は3~5年も幅があります。
質のよい無機ハイブリッド塗料を選ぶには、実績のある大手塗料メーカーの製品で、カタログなどにきちんと試験結果(促進耐候試験や屋外暴露試験という、紫外線に当てて劣化度合いを見る試験)が掲載されているか確認しましょう。
■試験結果の例
出典:関西ペイント
これは、太陽に見立てた強いランプを長時間当てて劣化具合を試験したものです。
この無機ハイブリッド塗料は、フッ素やシリコンの塗料と比べて長時間ランプを浴びても光沢を90%以上保っており、塗膜が非常に強いことが分かります。
見積書には“どのメーカーの”“なんという塗料なのか”を明記してもらいましょう。
単に「ハイブリッド塗料」としか書いていない業者は要注意です。
中には、あまり質の良くない塗料を高値で販売する悪徳業者も存在します。
万が一にも騙されないように、具体的な塗料名は確認しておきましょう。
4章 厳選!おすすめ無機ハイブリッド塗料3選
無機ハイブリッド塗料は様々な製品が各社から販売されています。
ここでは信頼できるメーカー製で、耐久性が15~20年以上と高品質なおすすめ塗料を紹介します。
4-1 セラスターウォール
出典:ジャパンカーボライン
塗料名 | セラスターウォール |
メーカー | ジャパンカーボライン |
水性/油性 | 水性 |
特徴 | 世界規模の有名メーカー。著名な建築物での実績が豊富。 通常の着色、クリヤー、屋根用とラインナップが充実している。 |
世界的に有名な重防食塗料メーカー・カーボライン社の無機塗料です。
東京国際フォーラムや中部国際空港などの大型建築にも採用されている実績から、耐久性も信頼できます。
・通常の外壁用の「セラスターウォール」
・多色サイディング用の「クリヤースターウォール」
・屋根用の「セラスタールーフ」
とシリーズが揃っていて、選びやすいのもポイントです。
4-2 アレスダイナミックMUKI
出典:関西ペイント
塗料名 | アレスダイナミックMUKI |
メーカー | 関西ペイント |
水性/油性 | 水性 |
特徴 | 高性能フッ素樹脂と信頼性の高い「アレスダイナミックTOP」のラジカル制御技術を用いて、高い耐久性を実現。 |
大手メーカー関西ペイントの塗料で、最高グレードのフッ素樹脂と無機成分を合わせた高機能塗料です。
フッ素樹脂のおかげで弾性下地にも追従する柔軟性があるため、ひび割れに強いしなやかな塗膜を形成できます。
また、同社の大ヒット塗料「アレスダイナミックTOP」に採用したラジカル制御技術も加えることで、より紫外線に強い塗膜を作り、建物を過酷な環境から長期間守ります。
>ラジカル制御塗料についてはこちら
4-3 アプラウドシェラスターⅡ
出典:日本ペイント
塗料名 | アプラウドシェラスターⅡ |
メーカー | 日本ペイント |
水性/油性 | 水性 |
特徴 | “建物寿命の最大化”をコンセプトに開発。 人気商品のリニューアルで実績、性能ともに信頼できる。 |
老舗メーカー日本ペイントの水性無機塗料です。
非常に紫外線に強い「超高耐候性」をもち、日本ペイント内でも最高ランクに位置付けられています。
以前の人気商品「アプラウドシェラスターNEO」の性能をさらにアップさせた、2019年発売の次世代塗料です。
汚れにもとても強いですが、オプションとして「クリスタコート」というコーティング塗料を重ね塗りすることで、さらに低汚染性能を高めることもできます。
まとめ
無機ハイブリッド塗料とは、無機成分と有機成分を組み合わせて作られた高性能塗料のことです。
メリット
・高い耐久性
・カビ・コケが繁殖しにくい
・汚れにくく光沢が長持ちする
・燃えにくい
デメリット
・金額が高い
・完全な艶消しができない
・きちんと扱える業者を選ぶ必要がある
・無機ハイブリッド塗料内でも耐用年数に幅がある
無機ハイブリッド塗料の中にも様々な種類・性能の製品がありますので、信頼できるメーカーの製品を選ぶと安心です。
本記事の内容が、皆さまの塗料選び、そして大切なお家の塗り替え工事のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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