新築住宅やリフォームで使われる「窯業系サイディング」。
具体的にどんなものなの?実際ほかの建材と比べてどうなの?
と気になって調べている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
窯業系サイディングはセメントが主成分のボード状素材で、日本の新築住宅では一番人気が高い外壁です。
もちろんメリットだけではなくデメリットも存在しますが、それも理解したうえでぜひ多くの方におすすめしたい優れものです。
本記事では、そんな窯業系サイディングの特徴からリフォーム費用、おすすめメーカーの製品まで、徹底的に魅力をご紹介していきます。
また、最後は将来のメンテナンスについても簡単にお伝えします。
最後までお読みいただくことで窯業系サイディングの魅力がわかり、長く大事に住み続けられるお家にすることができます。
これから窯業系サイディングのお家にしたい、という方は、ぜひじっくりお読みくださいね。
目次
1章 窯業系サイディングとは
まず『サイディング(サイディングボード)』とは、板状の外壁材全般のことを指します。
その中でも『窯業系(ようぎょうけい)サイディング』は、主成分のセメントに木片パルプなどの繊維質を混ぜて作られた建材です。
窯(かま)で高熱処理して作るため、『窯業系』と呼ばれます。
他にも金属系、樹脂系などのサイディングがありますが、施工のしやすさや手頃な価格帯などの理由から、窯業系サイディングが新築戸建て7割以上のシェアを占めています。
■新築戸建て住宅の外壁材シェア 出典:日本窯業外装材協会 現在の新築住宅は、10軒中7~8軒は窯業系サイディングとなっています。
■サイディングの種類 窯業系サイディングは、安価でトータルバランスが優れていることが人気の理由です。 |
次の章から、特徴を具体的にご紹介していきます。
2章 圧倒的シェア!4つのメリット
窯業系サイディングが新築で7割以上のシェアを占めているのは、価格や性能、デザインなどの総合力がとても高いからです。
特に代表的なメリット4つを解説します。
2-1 費用がお手頃
外壁材 | 価格 |
窯業系サイディング | 3,000〜5,000円/㎡ |
金属系サイディング | 5,000~6,500円/㎡ |
樹脂系サイディング | 4,000~9,000円/㎡ |
木質系サイディング | 5,000~8,000円/㎡ |
モルタル | 4,500円~5,500円/㎡ |
ALC | 7,000~15,000円/㎡ |
※一般的なグレードのものを想定。実際の価格は製品によって前後します。
窯業系サイディングは工場で大量生産できるため、比較的安価なのが魅力です。
モルタルやALCなど他の外壁材と比べてもお手頃な価格となっています。
お家の外壁は全体で200㎡以上にもなる場合もありますから、材料の単価が少し違うだけでも数十万円の差になってきます。
お家の内装や設備など別のところに予算を使いたい方には、窯業系サイディングのコストパフォーマンスの良さはおすすめです。
2-2 デザインが豊富
窯業系サイディングは多種多様なデザインの製品があるのも特徴です。
表面の塗装と凹凸によって、シンプルなものからタイル調・石材調などの複雑な表現まで可能となっています。
美観を大切にされている方や、たくさんある中から選びたい!という方におすすめです。
2-3 耐火性、耐震性に優れている
窯業系サイディングは火に強い・地震に強い建材の一つでもあります。
災害の多い日本では非常に心強いメリットです。
まず耐火性は、主成分のセメントがもともと燃えにくい素材なうえ、窯業系サイディングは高熱処理をして作っているためです。
これによって、万一ご近隣で火事などがあった際も、もらい火しにくくなっています。
また耐震性は、建材の軽さに左右されます。
人が重たい荷物を持っていると大きくぐらついてしまうように、お家も軽いほうが地震の影響を受けにくいです。
その点、モルタル外壁が一棟分で約8トンもあるのに対し、窯業系サイディングは約2.9~3.8トンと、半分以下の重さ※で、非常に軽いことが分かります。
※出典:ニチハ株式会社 お家一棟当たりの外壁面積200㎡の場合
実際に窯業系サイディングのお家は、阪神淡路大震災でも8割以上が無傷で済んだというデータがあります。
■阪神・淡路大震災の窯業系サイディングの被害 出典:ニチハ株式会社 被害にあったお家もありますが、サイディングの小さな亀裂や一部脱落等、比較的小さい被害で済んでいます。 |
こうした性能面でも、窯業系サイディングはとても安心できます。
2-4 施工しやすく工期が短い
窯業系サイディングは職人にとって扱いやすく、短い工事期間で外壁を完成させられるのも大きなメリットです。
これは、決まった規格(サイズ、形状)で工場生産され、あとは現場に運んで組み立てるだけだからです。
とても効率よく作業ができるため、工事期間が短く済みます。
一方、モルタルは職人が手作業で厚く塗り重ねたり、タイルは1枚1枚貼り付けたり、と現場での手間がとてもかかる外壁です。
工期が長いとその分人件費などのお金もかかりますし、お住まいの方は待つ時間が長くなってしまいます。
このような点も、窯業系サイディングが新築でもリフォームでも好まれている理由の一つです。
3章 ここには注意!2つのデメリット
窯業系サイディングは優れた外壁材ですが、デメリットもあります。
これから選ぼうという方は、こちらも把握したうえで決断して、後悔のないようにしましょう。
3-1 メンテナンス頻度がやや高い
外壁材 | メンテナンス時期 |
窯業系サイディング | 7~10年 |
金属系サイディング | 10~15年 |
樹脂系サイディング | 10~20年 |
木質系サイディング | 8~10年 |
モルタル | 5~8年 |
ALC | 10~15年 |
窯業系サイディングは定期的な塗装メンテナンスが必要な外壁材です。
一般的には7~10年おきを目安に塗装工事をしてあげましょう。
これは、窯業系サイディング自体は実は水に弱く、表面を保護している塗装も日々の紫外線で防水性が失われてしまうからです。
塗装が傷んで防水性がなくなると、窯業系サイディングに水が染み込んで、ひび割れを起こしたり耐久性を落としたりしてしまいます。
外壁を長持ちさせるためには、メンテナンスは後回しにしないよう注意しましょう。
※塗装時により耐久性の長い塗料を使うことで、塗り替えの頻度を少なくすることができます。
3-2 目地のお手入れも必要
窯業系サイディングは、ボードの目地(継ぎ目)をコーキングで埋めて水が入らないようにしています。
この目地部分も築5~7年ほど経つと徐々にひび割れてしまうので、メンテナンスが必要です。
基本的には外壁塗装と一緒に交換・補修をします。
モルタル外壁などと比べると、コーキング補修費用が追加で必要になりますので、覚えておきましょう。
※コーキング打ち替え(交換)…800~1,200円/m、増し打ち(追加補修)…700~1,000円/m |
コーキングが劣化すると、隙間から水が浸入して雨漏りの原因になってしまいます。
塗装と同じく、後回しにしないでしっかりお手入れしてあげましょう。
4章 窯業系サイディングはこんな人におすすめ!
ここまでご紹介したメリット、デメリットを踏まえると、窯業系サイディングは『コスパやデザイン性重視』の人にとてもおすすめです。
他の外壁と比べて安価ですが、機能性も十分高いのでバランスが良いからです。
多様なデザイン展開もあるので、見た目にこだわりたい方もぜひ窯業系サイディングを選びましょう。
また、外壁について『迷って決めきれない』人にも窯業系サイディングをおすすめします。
全体的な総合力が優れていてシェア7割以上もの人気がある外壁材ですから、まず大きな失敗をすることはありません。
よくわからなくて迷っている方も、窯業系サイディングを選んでみてくださいね。
ただ、耐久性やメンテナンス性などをより重視したい方は、金属系サイディングやALCなど別の外壁を検討しましょう。
>外壁材の種類や選び方について詳しくはこちら
5章 窯業系サイディングへのリフォーム費用
窯業系サイディングは、新築だけでなくリフォームでも人気があります。
リフォーム方法は、カバー工事(重ね張り)か張り替え工事(交換)です。
それぞれの工事費用と内容を見ていきましょう。
5-1 カバー工事:150万円~
メリット | ・断熱性、遮音性が向上する ・張り替えよりも安価 |
デメリット | ・内部が傷んでいるときは工事不可 ・外壁が重くなり負担がかかる |
カバー工事とは、既存の外壁はそのまま、上に新しくサイディングを重ねる工事方法です。
壁が2重になるため、断熱性や遮音性の向上が期待できるのがメリットです。
もとの外壁がそこまで劣化していない場合は、このカバー工事がおすすめです。
費用はおよそ150万円~となります(2階建て30坪の場合)。
外壁の撤去処分が必要ないため、この後ご紹介する張り替え工事よりもお安く工事ができます。
ただ、既存外壁の内側まで傷んでいた場合はカバー工事ができません。
悪くなっている部分はきちんと交換しないといけないので、大きな割れや外壁からの雨漏りが無いか等チェックしてもらってから工事をすすめましょう。
また壁が2重になるので、その分お家が重くなり負荷がかかります。
窯業系サイディングも軽量なのでそのまま使って問題ないお家がほとんどですが、耐震性などが心配な方は事前に業者に相談し、場合によっては張り替え工事や、もっと軽量な金属サイディングでのカバー工事をご検討くださいね。
5-2 張り替え工事:180万円~
メリット | ・内部の傷みもすべて修繕できる ・家に負荷がかからない |
デメリット | ・撤去処分で費用が高くなる |
張り替え工事は、現状の外壁をすべてはがし、新しいサイディングに交換する工事です。
完全に新しい外壁に作り替えるため、内部構造まで傷んでいた場合にもしっかり直すことができます。
また壁の重量も増えないので、家への負荷もかからないのがメリットです。
もとの外壁の劣化が激しいときや、重量の心配があるときには、張り替え工事をおすすめします。
費用はおよそ180万円~です(2階建て30坪の場合)。
使用するサイディングの材料費以外に、もとの外壁の素材が何なのかによって撤去処分費も変動します。
壁を作り替える大きな工事なので、どうしても費用は高額になってしまいますが、劣化したものを交換して直せる最終手段でもあります。
このリフォームを機に外壁の傷んだ部分をすべて直したい方は、張り替え工事を行いましょう。
6章 窯業系サイディングの施工方法
窯業系サイディングで外壁を作るときには、2種類の工法があります。
それぞれの特徴や施工条件が異なりますので、新築の方もリフォームの方も確認しておきましょう。
6-1 釘留め工法
釘留め工法とは、その名の通り釘を使って窯業サイディングを固定する方法です。
専用の長い釘を使い、下地(胴縁という木材)にサイディングボードを打ち付けます。
これは厚さ14mmの一般的なボードのときに使われます。
メリットは施工が簡単で費用も抑えられるということ。
逆にデメリットとしては、将来的に釘周りからひび割れしやすかったり、釘が錆びて錆汁の汚れが目立つ可能性があります。
ただ、定期的なメンテナンス塗装をしっかりすればひび割れや汚れは防ぐことができるので、一般的な戸建住宅の多くが釘留め工法で建てられています。
6-2 金具留め工法
金具留め工法とは、釘を使わず内側の金具にひっかける形でサイディングを固定する方法です。
下地(胴縁)に、錆びにくいステンレス製の金具をビス留めし、そこに窯業系サイディングをひっかけながら外壁を貼っていきます。
(ひっかけ金具工法、と呼ぶこともあります。)
こちらは主に厚さ15mm以上のサイディングに使用されます。
金具にひっかけることで、外壁が上下左右に少しずつ動く余裕ができるので、地震の揺れや、熱・水分などで窯業サイディングが伸び縮みしても、建材に負荷がかかりにくいのがメリットです。
ただ費用は釘留め工法よりも高額になってしまいます。
施工費用がかかっても窯業系サイディング自体が傷みにくくなるので、長期的なコストパフォーマンスを良くしたいなら金具留め工法がおすすめです。
7章 厳選!おすすめメーカー製品3選
ここでは、うちの外壁もサイディングにしよう!という方に向けて、特におすすめの製品をご紹介します。
国内シェア上位の3メーカーからそれぞれ厳選しましたので、迷っている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
7-1 ニチハ:モエンエクセラード
ニチハ株式会社は、国内最大手の建材メーカーです。
窯業系サイディングの「モエンエクセラード」シリーズは、微妙な色合いやリアルな質感を高いレベルで表現した、風格あるデザインが揃っています。
また、汚れがつきにくい「マイクロガード」という表面塗装で、美しい外観を長く楽しむことができます。
価格:5,513円/㎡
ピースごとの色彩が変化を生んで、非常におしゃれな外観に仕上がります。
価格:3,917円/㎡
バリエーションが非常に多く、木材のような素朴で温かみのあるデザインもあります。
7-2 ケイミュー:光セラ
ケイミュー株式会社は、老舗メーカー「クボタ」と「松下電工(現パナソニック)」の住宅外装建材部門が統合してできた会社です。
「光セラ」シリーズは、汚れをセルフクリーニングしてくれる光触媒の技術を使っています。
長い実績があり、実際に10年以上経ったお家の施工事例もホームページ上で多数公開しているところも信頼できるポイントです。
価格:5,840円/㎡
シンプルですっきりしたデザインで、カラーバリエーションも豊富です。
価格:5,840円/㎡
レンガのような重厚感ある住宅にしたい方にもピッタリです。
7-3 旭トステム:AT-WALL
旭トステム外装株式会社は、暮らしの総合メーカー「LIXIL」と樹脂・ガラスの大手「旭硝子(AGC)」の外装部門が統合してできたメーカーです。
住まいに関する総合的なノウハウや高い技術力が魅力的な製品を多数販売しています。
「AT-WALL」シリーズの中でも特に、独自技術「セルフッ素コート」を使用したものはとても色褪せに強くおすすめです。
価格:5,513円/㎡
大きな石材を積み上げたような、シックなデザインです。
価格:6,762円/㎡
細やかなストライプによって都会的な印象のお家に仕上がります。
8章 劣化症状とメンテナンス方法
最後に、将来出てくる劣化症状とメンテナンスについて解説します。
窯業系サイディングは建てた後にしっかりメンテナンスすることで、40年以上も使い続けられる優れた建材です。
劣化症状によるSOSサインを見逃さず、適切な時期にお手入れしてあげてくださいね。
8-1 塗装工事
窯業系サイディングは、7~10年を目安に塗装します。
- ・チョーキング(壁を触ると手に粉がつく)
- ・色褪せ
- ・コケ
- ・ひび割れ
などが症状として現れてきたら、塗装のタイミングです。
劣化症状に気付かずに放っておいてしまうと傷みが進行して、サイディングの寿命が縮んだり、大きな補修工事が必要になったりしてしまいます。
窯業サイディングを長持ちさせるためにいちばん低コストでできるのが塗装工事です。
時期を見逃さず、しっかりメンテナンスしてあげてくださいね。
>サイディング塗装のポイントや費用相場はこちら
8-2 カバーor張り替え工事
塗装で直せないほど劣化が進んでしまった場合は、カバー工事(重ね張り)か張り替え(交換)を行ないます。
- ・多数の割れ、欠け
- ・反り(歪み)
- ・外壁からの雨漏り
- ・内部の木材の腐食
- ・全体の強度低下
などの状態になっていたら、カバーか張り替えでしっかり修繕しましょう。
この時には、もちろん同じような窯業サイディングでも良いですが、少し費用が高くてもより性能の良い金属サイディングなどを使う方が多いです。
ご予算や将来のライフスタイルなどを考えて、素材を選びましょう。
>外壁カバー、張り替えにについて詳しくはこちら
8-3 コーキングの打ち替え・増し打ち
外壁の境目にある目地コーキングは、ゴムのような素材です。
紫外線によって劣化してしまいますので、
- ・ひび割れ
- ・縮み
- ・切れ
が現れたときにはコーキング補修を行いましょう。
一般的には外壁塗装工事のときに一緒に行います。
ただし、コーキングの方が窯業サイディングより劣化が早いことも多いので、そのときはコーキングに合わせて早めに全体のメンテナンスをしてあげましょう。
補修方法は、基本的には「打ち替え(交換)」で、窓サッシ周りなど交換が難しい場所は「増し打ち(追加)」となります。
>コーキングの補修について詳しくはこちら
まとめ
窯業系サイディングは安価かつ高性能で、現在の戸建て住宅でもっとも選ばれている外壁材です。
コストパフォーマンスやデザイン性を重視したい人のほか、迷って決めきれないという人にもおすすめします。
これからリフォームする場合は、製品や工法などにもよりますが、
カバー工事:150万円~
張り替え工事:180万円~
ほどの費用がかかります。
塗装やコーキングのメンテナンスをすることで40年以上使い続けられる外壁ですので、劣化症状などのサインを見落とさないようにしましょう。
これから窯業系サイディングを選ぼうとしている方も、すでにこの外壁のお家にお住まいの方も、長く安心して暮らすためにお役に立てれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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