外壁塗装で使う「防水塗料」にはどんな種類があるの?
我が家はどれを選べばよいの?
とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
防水塗料とは、塗料の中でも特に防水機能が高いもののことです。
種類によって工事の進め方や適する施工箇所が違ってきます。
ここでは、そんな防水塗料の種類やそれぞれの特徴と、気になる費用相場の比較や注意点もお伝えします。
ご自宅に最適な塗料を選ぶために、ぜひ最後までお読みくださいね。
目次
1章 防水塗料とは
実は「防水塗料」とは、特定の種類・カテゴリーの塗料を指す明確な言葉ではありません。
外壁屋根に使う塗料は基本的に全て防水の役割があるからです。
そのため、「防水塗料」=特に防水機能が高い塗料=「弾性塗料」の事を指す場合が多いです。
この記事では、防水塗料=弾性塗料として紹介していきます。
弾性塗料は、その名前の通り弾性(ゴムのように伸び縮みする性質)が高い塗料です。
気温20℃のとき120%以上の伸び率の塗料のことを指します。
住宅は、生活の振動や地震の揺れ、太陽光の熱、水分の出入りなどにより常に動きが出てひび割れる可能性があります。
普通の塗料であれば、下地(住宅)にひびが入れば上に乗っている塗料も一緒にひび割れてしまいます。
しかし弾性塗料はひび割れに追従して伸びてくれるため、表面には割れ目ができず、水の侵入を防いでくれるのです。
また、ベランダ床や屋上の防水で使う「防水材」とは異なる種類のものです。
〈ベランダ等の防水塗料について知りたい方はこちら〉
2章 防水塗料(弾性塗料)の種類と選び方
弾性塗料には大きく3つの種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり適する場合も異なりますので、ひとつずつ見ていきましょう。
2-1 単層弾性仕上げ|一般住宅向け
単層弾性仕上げとは、3回塗りで仕上げる一般的な工法です。
弾性塗料の上塗りによって厚みをつけてひび割れをカバーします。
メリット
・工程が少なく、上塗り2回も同じ塗料を塗るので、複層弾性仕上げより安価に施工できる。
デメリット
・弾性塗料は一般の塗料より単価が高いので、通常の塗装よりは費用がかかる。
・耐久性の高い塗料が少ない(アクリル系が多い)。
単価相場
2,600~4,000円/㎡
※塗料のグレードや施工範囲により変動
こんな場合におすすめ
モルタル外壁の戸建て住宅
2-2 複層弾性仕上げ|大型物件向け
複層弾性仕上げとは、5回塗りで仕上げる工法です。
中塗りと上塗りはそれぞれ違うものを2回ずつ塗ります。
メリット
・塗膜に厚みが出るため、防水性が非常に高い。
デメリット
・作業工程が多く施工に時間がかかるため、材料費・人件費がかさんで工事費用が高額になる。
単価相場
5,000~6,800円/㎡
※塗料のグレードや施工範囲により変動
こんな場合におすすめ
大型物件、ビル、マンションの屋上やベランダ
2-3 微弾性仕上げ|すでに細かいヒビのある一般住宅向け
微弾性仕上げとは、「微弾性フィラー」と呼ばれる下塗り材を使い、計3回塗りで仕上げる工法です。
下塗りが弾性のため、今現在すでにひび割れを起こしている部分を埋めてくれます。
メリット
・下塗りに弾性があるため、現在ある小さなひび割れを埋めて補修材の役割をしてくれる。
・工程が少なく、上塗り2回は通常の塗料を塗るので、通常の塗料と同程度の金額で施工できる。
・上塗りで選べる塗料の種類やグレードが豊富。
デメリット
・防水性は複層弾性仕上げに比べるとやや劣る。
※微弾性塗料は伸び率50~90%程度のものが多い。
単価相場
2,000~5,500円/㎡
※上塗り塗料のグレードや施工範囲により変動
こんな場合におすすめ
既に細かなひび割れがある、モルタル外壁の戸建て住宅
3章 弾性塗料の費用相場
弾性塗料による防水塗装3パターンの費用相場です。
工法 | 相場/㎡ |
単層弾性仕上げ | 2,600~4,000円/㎡ |
複層弾性仕上げ | 5,000~6,800円/㎡ |
微弾性仕上げ | 2,000~5,500円/㎡ |
※塗料のグレードや施工範囲により変動
単層弾性仕上げ:
材料費、工程も少ないため安価に施工できます。
複層弾性仕上げ:
工程が多いため、使う材料も作業日数も多くなり、費用が高くなります。
一般住宅の外壁ではあまり行われず、作業面積が広い大型物件の工事がほとんどです。
微弾性仕上げ:
通常の塗装+200~500円程度となります。
下塗りだけを微弾性フィラーにするため、その差額です。
上塗りで選ぶ塗料のグレードによって金額にも幅が出ます。
4章 弾性塗料の注意点
伸縮してひび割れを防いでくれる弾性塗料ですが、万能の塗料ではありません。
以下3つの注意点を押さえたうえで、ご自宅に使用するかどうか検討しましょう。
4-1 サイディングボードには不向き
弾性塗料は、窯業系サイディングボードの外壁には適しません。
なぜなら、弾性塗料を塗ることによって膨れ・剥がれなどの不具合が起こる可能性があるからです。
サイディングボードは、モルタル外壁よりも熱を貯めやすい性質があります。
そして弾性塗料は熱で柔らかくなる性質があるため、サイデイング上だとお餅のように膨らんでしまう場合があるのです。
サイディングボードの場合は、弾性塗料ではなく通常の塗料(硬質塗料)を使用しましょう。
4-2 モルタルのジョリパット仕上げには不向き
弾性塗料は、モルタル外壁の中の「ジョリパット仕上げ」には適しません。
なぜなら、ジョリパットには細かな凹凸があるため、そのすき間に空気が残ってしまい、年数が経つと膨れてしまうからです。
こちらも不具合の原因になりますので、ジョリパットには弾性塗料を使わないようにしましょう。
4-3 塗装では雨漏りは直らない
弾性塗料はひび割れを防いでくれる塗料ですが、今起こっている雨漏りを直してくれるわけではありません。
雨漏り=家の内部まで水が入るような隙間がある、ということだからです。
それほどの隙間は、どんな塗料でも塞ぐことはできません。
雨漏りを直すには、塗装とは別の補修・修繕工事が必要です。
(パテやコーキングで隙間を埋める、外壁や屋根材を交換する、など。)
塗装で雨漏りが止まることはありませんので、注意しましょう。
〈雨漏りの修理方法や費用相場を知りたい方はこちら〉
5章 代表的な塗料
最後に、国内の主要メーカーから販売されている代表的な弾性塗料を紹介いたします。
一般的な戸建て住宅で使われる単層弾性仕上げ用塗料と微弾性フィラーを取り上げましたので、工事を依頼する際の参考にしてみてくださいね。
■DANシリコンセラ(日本ペイント)
成分 | 水性シリコン |
耐用年数 | 10~12年 |
伸縮率 | 400% |
対応素材 | モルタル、コンクリート等 |
出典:日本ペイント
大手メーカー日本ペイントの単層弾性仕上げ用塗料です。
シリコン樹脂による高い耐候性のほか、防カビ・防藻や低汚染性、透湿性も兼ね備えた高機能塗料です。
■ビュートップフッソ弾性(菊水化学工業)
成分 | 水性フッ素 |
耐用年数 | 16~20年 |
伸縮率 | – |
対応素材 | モルタル、コンクリート等 |
出典:菊水化学工業
菊水化学工業の水系弾性フッ素樹脂塗料です。
屋内にも使えるほど安全性も高い水性塗料で、フッ素の高耐久性も期待できます。
■セラミクリーン(エスケー化研)
成分 | 水性シリコン |
耐用年数 | 8-10年 |
伸縮率 | 338% |
対応素材 | モルタル、コンクリート、ALCパネル、スレート板等 |
出典:エスケー化研
エスケー化研の高耐久・低汚染型水性セラミックシリコン単層弾性塗材です。
オリジナル技術に基づく弾性セラミックシリコン樹脂を使い、耐久性を向上させています。乾燥も早く、工期短縮に役立ちます。
■アレスホルダーGⅡ(関西ペイント)
成分 | 水性アクリル (微弾性フィラー) |
伸縮率 | 75% |
対応素材 | コンクリート、モルタル、ALC、窯業サイディング |
出典:関西ペイント カタログ(PDF)
関西ペイントの販売する、水性微弾性下地調整材です。
上塗り材は同メーカーの10種類以上から選ぶことができるため、非常に使いやすい高性能な塗料です。
■リメークプラ(スズカファイン)
成分 | 水性アクリル (微弾性フィラー) |
伸縮率 | – |
対応素材 | コンクリート、モルタル、PCパネル、ALCパネル、窯業系サイディング等 |
出典:スズカファイン
スズカファインが販売する微弾性機能形下塗り材です。
様々な下地に対応できることから、一般住宅にも大型建築物の改修にも広く使われている優秀な微弾性フィラーです。
まとめ
防水塗料とは、特定の種類の塗料を指す言葉ではないため、ここでは「特に防水性の高い塗料=弾性塗料」として紹介しました。
弾性塗料は、ゴムのように伸縮してひび割れを防いでくれる塗料です。
- ・単層弾性仕上げ
- ・複層弾性仕上げ
- ・微弾性仕上げ
の3パターンがあります。それぞれの適性や費用相場からご自宅に合う工法を選びましょう。
ただし、
- ・窯業サイディングボードには不向き
- ・モルタルのジョリパット仕上げには不向き
- ・塗装では雨漏りは直らない
という点には注意しましょう。
塗装工事は、大切なお家を水から守るための重要なメンテナンスです。
ご自宅に最適な塗料を選んで、良い工事にしてくださいね。
お読みいただきありがとうございました。
【この記事を読んだ方におすすめ】
機能性の高い塗料をお探しの方には、フッ素塗料がおすすめです。
→高耐久な外壁塗装はフッ素!メリット・デメリットと疑問解消Q&A 4選