「パミールって、本当に葺き替えまでやらないといけないの?」
と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
まずパミールは、一般的なスレート屋根のような塗装メンテナンスができません。
表面から剥がれるように傷んでしまうため、塗っても長持ちさせられないからです。
そのため、お手入れは葺き替えかカバー工事が必要になります。
ただ、葺き替えとカバーどちらを選ぶべきかは、皆さまそれぞれのお考えや屋根の状態によっても変わります。
そこで本記事では、パミールを葺き替えるメリット・デメリットを、カバー工法と比較しながら解説します。
まずは本当に葺き替えを行うかどうかを判断しましょう。
後半は、実際の費用相場やおすすめの葺き替え屋根材をご紹介します。
うちは葺き替えしよう、という方はこちらもしっかりお読みください。
屋根はお家を守る要です。
正しい方法でしっかりメンテナンスできるようになるために、どうぞ最後までご覧くださいね。
目次
1章 パミールとは:塗装できない理由
パミールとは、ニチハ株式会社が製造していたスレート屋根材のひとつです。
製造期間は1996~2008年で、製品に問題がみつかり、現在は製造中止になっています。
通常のスレート屋根は定期的な塗装で長持ちさせることができますが、例外的にパミールは塗装ができません。
なぜなら、パミールは『層状剥離』という劣化症状が出るからです。
屋根材自体がミルフィーユのようにパリパリと剥がれてくるため、上に塗装をしても全く意味がなくなってしまうのです。
■層状剥離
屋根が先端からめくれあがっています。
塗装しても、塗装ごと薄く剥がれ落ちてしまいます。
もし業者に塗装をすすめられても絶対に断ってください。
パミールのメンテナンスは葺き替えかカバー工事が必要になります。
>パミールに塗装してしまったお家の被害などはこちらの記事もご覧ください
2章 パミールを葺き替えるメリット・デメリット
『葺き替え』とは、屋根を丸ごと取り替える工事のことです。
一方『カバー工事』とは、上に新しい屋根を被せる、重ね葺き工事です。
今回は、カバー工事と比較したときの葺き替えのメリット・デメリットを、分かりやすくお伝えしていきます。
自分はどちらの工事をすべきなのか、を決める判断基準としてご覧ください。
| 葺き替え | カバー |
下地の修繕 | できる | できない |
屋根全体の重さ | 軽くなる | 重くなる |
費用 | 100~200万円 | 80~150万円 |
工期 | 10~15日 | 7~10日 |
〇 下地ごと屋根を交換できる
葺き替え工事は今の屋根を撤去して新品を取り付けます。
そのため、内部が傷んでいないか点検したり、傷んだ下地や内部の古いところを補修・交換することができるのが大きな長所です。
カバーでは内部を見たり直したりすることはできません。
屋根の中までチェックしておきたい、完全に新しくしてしまいたい、という場合には、葺き替えの方が適しています。
〇 屋根が軽くなる
リフォームで使われる屋根材は、パミールよりも軽いものがほどんとです。
そのため、葺き替えをすると前よりも屋根が軽くなり、家にかかる負担を減らすことができます。
建物が重たいと地震の際に揺れの影響が大きくなるため、屋根の軽量化は耐震性の向上につながります。
※ただ、カバー工法は重くなるといっても、お家の耐久性や耐震性には問題ない程度でしかありませんのでご安心ください。
× 費用が高い
葺き替え工事はカバー工事と比べて、20~30万円ほど金額が高くなります。
これは既存屋根の撤去・処分や、下地板の交換・補修があるからです。
作業工程の多さ、必要な人件費や材料費などがどうしてもかかってしまいます。
× 工期が4~5日長い
費用と同じく、作業が増えた分だけ工事日数もかかります。
・カバー工事…7~10日前後
・葺き替え工事…10~15日前後
新しく使う屋根材やお家の形状にもよりますが、カバーと比べるとおよそ4~5日程度は長くなることが多いです。
3章 葺き替えはこんな人におすすめ!
2章を踏まえて、パミールの葺き替えはどんな人におすすめなのかをご紹介します。
あなたの考え方や屋根の状態と照らし合わせてチェックしましょう!
3-1 傷んだ部分は全て取り替えて安心したい
葺き替え工事は、とにかく屋根を全て新品にしたい、古い部分は取り除いて安心したい、という方におすすめです。
パミールのお家は築10~20年ほどが多いですから、もうこれを機に一新してしまおうというお考えの方もいらっしゃいますよね。
古いものはその分劣化が進んでいる可能性もあります。
不安要素を少しでも減らしたい、という方にはカバーよりも葺き替えがおすすめです。
3-2 雨漏りの心配がある
パミールの劣化が激しくて、そのうち雨漏りしそう、あるいはすでに雨漏りが起こり始めている、という場合には葺き替えを行いましょう。
カバー工法では、雨漏りで傷んだ部分を直すことはできません。
湿気を含んだ部材などにそのままフタをすると余計に悪化する恐れがありますので、葺き替えでしっかり修繕するのがベストです。
☆基本的にはカバーで十分!
ここまでパミールの葺き替えについてご紹介してきましたが、
逆に言うと、上記に当てはまる人以外はカバー工法の方が良い、ということです。
当ブログ運営元のユーコーコミュニティーでも、パミール屋根のお手入れには基本的にはカバー工法をおすすめしています。
雨漏りしている、どうしても屋根全てを交換して安心したい、というような事情がない限りは、カバーの方がコストパフォーマンスも良く、お客様のためになるからです。
カバー工法の話を一切せずに高額な葺き替え工事だけを進めてくる業者には、注意してくださいね。
4章 パミール葺き替え工事の費用相場
葺き替え後の屋根材 | 費用相場 |
スレート屋根 | 90~130万円 |
アスファルトシングル | 90~150万円 |
ガルバリウム鋼板 | 100~180万円 |
ジンカリウム鋼板 | 120~200万円 |
軽量瓦 | 120~180万円 |
※2階建て、屋根面積80㎡の場合の概算。詳細は屋根の形状や施工内容などにより変動。
パミールの葺き替え費用は、使用する屋根材によって変わります。
また、実際には屋根の形状によって細かい部材(金具、役物)の数量も変わるため、上記の表は参考としてご覧くださいね。
>工事の細かい内訳などはこちらの記事をお読みください
☆助成金を活用しよう!
やっぱり葺き替えって高いな…とお困りの方は、「助成金(補助金)」の活用を検討してみましょう。
パミールよりも軽量の屋根に葺き替える場合、耐震リフォームとして助成金がもらえる場合があります。
また、葺き替えた屋根材によって遮熱効果や断熱効果が得られる場合は、エコリフォームとして助成金対象になることがあります。
ただし、そもそもの補助金の有無、条件、貰える金額などは自治体次第です。
ご自宅に適用できる補助金制度があるかどうか、まずは各自治体に問い合わせてみましょう。
>参考サイト
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
↑こちらのサイトでは、地方公共自治体による支援制度を検索できます。
>補助金の申請方法など詳しくはこちら
5章 葺き替えにおすすめの屋根材3選
続いては、パミールの葺き替えにおすすめの屋根材の種類をご紹介します。
費用だけでなく、見た目や性能・特徴などにも違いがありますので、葺き替えをご検討の際には全体的な比較をしてくださいね。
① ガルバリウム鋼板
ガルバリム鋼板とは、一般に金属屋根と言われる屋根材のことです。ガルバ屋根、などとも言います。
アルミニウム・亜鉛合金めっきの加工金属で、さびや腐食に強い金属です。
リフォームでは最も多く選ばれているスタンダードな種類で、シンプルな見た目が好きな方におすすめです。
人気の素材なのでグレードに幅があり、断熱材の有無、表面のデザイン加工などが製品によって異なりますので、選ぶ際は業者からカタログをもらうなどして詳細を見ておきましょう。
ガルバリウム鋼板 | |
デザイン | シンプルですっきりした見た目。表面は平滑なものが標準だが、細かい凹凸をつけて落ち着いたデザインにした高級タイプもある。 |
単価 | 5,000~10,000円/㎡ |
耐久性 | 20~30年 |
メリット | 価格と性能のバランスが良い。非常に軽量で地震の際の負担が少ない。トタンよりも錆びにくく、耐候性が高い。 |
デメリット | 薄い金属のため、雨音などが響く可能性がある。(厚みのあるもの、断熱材付のものであれば軽減される。)色褪せすることがあるため、見た目が気になる場合は再塗装が必要。 |
② ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板とは、もとはある海外メーカー製品の商標名でしたが、日本では「自然石粒付き鋼板」全般のことを指します。
・ジンカリウム鋼板
・自然石粒付き鋼板
・石粒付鋼鈑
・自然石粒付化粧鋼板
などと呼ばれますが、どれも同じものです。
ガルバリウム鋼板→一般的な錆びにくい金属
ジンカリウム鋼板→ガルバリウム鋼板の表面に石粒コーティングをしたもの
と覚えておけば問題ないでしょう。
表面を細かい石粒でコーティングしているため、ガルバリウムよりも耐久性が高い、色褪せしにくい、塩害に対して強い、など全体的な性能が高まっています。
その分費用はかかりますが、より高性能な屋根材をお求めの方におすすめです。
ジンカリウム鋼板 | |
デザイン | 細かい石粒がコーティングされておりザラザラしたマットな質感。カラーバリエーションも豊富。 |
単価 | 8,500~15,000円/㎡ |
耐久性 | 30~50年 |
メリット | 長期間塗り替えの必要がない。非常に軽量で地震の際の負担が少ない。ガルバリウムより遮音・断熱効果が高く、塩害に強い。 |
デメリット | 費用が高額。日本ではまだ認知度が低く、輸入屋根材がメイン。扱っている業者がやや少ない。 |
>ジンカリウム鋼板についてより詳しくはこちら
③ アルファルトシングル
アスファルトシングル屋根とは、シート状の屋根材です。
もともと北米で長らく使われていて、柔軟性のあるシートにアスファルトや石材の砂粒を圧着しています。
金属屋根よりさらに軽さを求める方、また洋風な見た目にしたい方におすすめです。
アスファルトシングル | |
デザイン | 洋風でおしゃれな外観。カラーバリエーションも豊富にある。複雑な形の屋根(半円、ドーム型など)にも対応しやすい。 |
単価 | 5,000~8,500円/㎡ |
耐久性 | 15~30年 |
メリット | 価格と耐久性のバランスが良い。非常に軽量で地震の際の負担が少ない。色褪せしにくい。 |
デメリット | 商品によってグレードの幅がある。塗装が適さないため、再塗装で色を変えることができない。断熱性がない。 |
6章 パミールのお手入れは実績豊富な専門店へ
ご自宅の屋根がパミールでメンテナンスはどうしよう…とお考えの方は、業者への問い合わせの時に屋根がパミールであることを必ず伝えて、
「点検したうえで提案を作ってくれるか」を確認して、見積もりを依頼しましょう。
残念ながら業者の中には、すべてのお家に「葺き替えないとダメです!」と言うようなところもあります。
カバーよりも高い金額で契約を取りたいから、という場合や、
そもそもカバー工事は経験がない、葺き替えしかやったことがない、だから葺き替えしか提案しない、というような業者もあります。
しかしそれでは、皆さまにとっては大きな損失の危険があります。
本当に皆さまにとって最善の対応ができるのは、
・パミールについて正しい知識があり、
・状態に合わせてカバー工事か葺き替え工事かの提案・施工ができる
業者です。
事前にホームページの施工事例や電話問合せなどで、パミール屋根に適切な提案ができるか確認して、経験・実績がきちんとある業者に依頼しましょう。
まとめ
パミールとは、層状に剥離してしまうため塗装できず、葺き替えかカバー工事が必要な屋根材です。
カバーと比較すると、葺き替えのメリットは「下地ごと屋根を交換できる」「屋根が軽くなる」こと、
デメリットは「費用が高い」「工期が4~5日長い」ことです。
そのため、傷んだ部分は全て取り替えて安心したい方や、雨漏りの心配がある方には葺き替えがおすすめです。
逆に言うと、それ以外の方は基本的にカバーで大丈夫です。
葺き替え費用は屋根材によって変わりますが、90~200万円ほどかかります。
パミールを葺き替えるかどうかは、専門家の点検診断が必須です。
きちんと点検したうえで提案を作ってくれる、実績豊富な専門店へ見積もり依頼しましょう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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