そろそろうちの屋根も葺き替え工事…
でも費用が見当もつかない!どれくらいかかるんだろう?
とご不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
葺き替え工事は一生のうちに何回もやるものではないですから、なかなか費用感は分かりませんよね。
しかも工事費用はお家の状況や施工業者によっても変わるため、単純に“これ!”という定価が無いのが現状です。
ただ、過去の事例や傾向などからおおよその相場を出すことはできます。
そこで本記事では、屋根葺き替え工事の費用相場と見積もりの内容、見積もり事例を解説します。
それでもお家によって差が出ることが多い工事ですから、相場よりも高くなるケースも合わせて紹介していきます。
見積もりを取ったときに慌てずに済むように、知識をつけましょう。
後半では、ご自宅に合った適正な見積もりを貰うコツや少しでも費用を抑える方法をまとめました。
実践することで、適正価格の良い工事ができるようになります。
ぜひ最後までじっくりお読みくださいね。
目次
1章 屋根葺き替えの費用相場
屋根の葺き替え工事費用は、一般的な30坪程度のお家でも90~250万円ほどと、かなり幅があります。
現在の屋根 | 葺き替え費用相場 |
瓦 | 120~250万円 |
スレート | 95~220万円 |
金属(トタン) | 90~200万円 |
※2階建て、屋根面積100㎡とした場合の概算
これは、「現在の屋根材」によって撤去・処分費が、「新しく使う屋根材」によって材料・施工費が大きく変わるからです。
今のお家がどんなもので、これからどんな屋根に変えるのかは人それぞれですので、費用に幅が出てきます。
それでは具体的にこの費用の内訳はどうなっているのか、次の章で見ていきましょう。
2章 葺き替え費用の内訳
屋根の葺き替え費用はいくつもの工程から成り立っています。
それぞれの作業量や、使う材料によって費用が変わってきますので、ここでは屋根材による違いや細かい工事内容や紹介していきます。
2-1 屋根材の種類
金額は新しく設置する屋根の種類によって大きく異なります。
ここでは、葺き替えで良く使われる屋根材4種類について簡単にご紹介します。
ご自分のお家にはどんな屋根を使いたいのか大体の見当をつけて、費用感も掴みやすくしましょう。
①ガルバリウム鋼板
ガルバリム鋼板とは、「アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板」と呼ばれることもある素材で、金属鋼板をアルミニウム・亜鉛・シリコンでめっきしたものです。
金属の中でもさびや腐食に強いのが特徴です。
スタンダードなものから断熱材入りの高機能商品まで、種類が非常に豊富です。
雨音が響くのが心配な方も、断熱材入りを選べば音が通りにくくなり安心です。
シンプルなデザインがお好みの方におすすめです。
★よりおしゃれでハイグレードな『ジンカリウム鋼板』という種類の金属屋根も近年増えてきました。詳しくはこちら |
②アスファルトシングル
アスファルトシングル屋根とは、シート状の屋根材です。
ガラス繊維(グラスファイバ―)のマットにアスファルトをコーティングし、砂粒を圧着して着色しています。
もともと北米で長らく使われていて、最近日本の新築にも増えてきました。
洋風の屋根に憧れのある方におすすめです。
③瓦(軽量瓦)
出典:ケイミュー『ルーガ』
軽量瓦は、従来の和瓦(粘土瓦、陶器瓦など)の弱点である重さを解消した瓦です。
厚み、重厚感はそのままに、セメントが主成分のため、粘土を焼いた瓦よりも軽くなります。※メーカーによっては金属製の瓦もあります。
現在の瓦の和風のイメージを保ちたいという方におすすめです。
④スレート
スレート屋根は、セメントが主成分で、現在日本の新築では最も多く使われている屋根材です。
セメントを薄くして焼き固めており、軽量で、施工もしやすいため比較的安価です。
ただ、10年前後で塗装メンテナンスが必要なため、葺き替え屋根材としてはあまりおすすめしておらず、まず今回の工事の費用を安く抑えたいという方向けです。
2-2 各工程の単価と内容
見積もりに記載される各工程の単価相場と内容を解説します。
どんな作業にどれくらい費用が掛かるのか把握しましょう。
■見積もりの内訳 単価相場
■各項目の内容
足場代
葺き替え工事は、安全な作業を行うために足場を立てる必要があります。
3階建て以上のお家や、狭小地など足場が組みにくい立地の場合は単価が高くなる可能性が有ります。
既存屋根撤去・処分
今ある屋根材を取り外して処分します。
重たい素材や複雑な形状だと、手間がかかる分費用が高くなります。
野地板補修・交換
屋根材の下の板(コンパネ等とも呼ばれます)を補強します。
劣化が進んでいた場合は、増張りまたは新しく交換します。
ルーフィング(防水シート)
野地板の上に、防水性を持たせるためのシートを張ります。
新しい屋根材の施工
新しい屋根を取り付けます。
使う屋根材と施工面積によって費用が変わります。
棟板金設置
屋根の頂上を押さえる棟板金(むねばんきん)を設置します。
※瓦の場合は棟瓦(むねがわら)になります。
各所板金処理
屋根の先端(ケラバ)や壁際、谷間の部分などから水が入らないように、板金を取り付けます。
雪止め設置
積雪が滑り落ちてこないようにするための部材を取り付けます。
特に家が密集している住宅地などは、隣家の敷地に雪が落ちたりしないように、設置する方が増えています。
諸経費、管理費など
工事にかかる細かな手間や、交通費、資材の運搬費などが含まれます。
業者によって、一式で定額○万円の場合と、全体の工事費の○%の場合があります。
3章 よくある見積もり事例5選
実際に屋根葺き替えをしたお家の見積もり事例をご紹介します。
現在の屋根→新しい屋根の組み合せでも様々なパターンがありますが、良くあるものを集めましたので、ご自身のお家に近いものを参考にしてみてくださいね。
事例1 スレートからガルバリウム鋼板へ
施工面積:97㎡
スレート屋根のひび割れが多く発生していたため、今後劣化しにくいガルバリウムに葺き替えました。
事例2 和瓦からガルバリウム鋼板へ
施工面積:117.8㎡
耐震性を気にされていたお家だったので、重たい瓦を全て降ろして軽量なガルバリウムへの葺き替え工事になりました。
事例3 スレートからアスファルトシングルへ
施工面積:104.6㎡
アスファルトシングルはコストパフォーマンスが良く、見た目も洋風なため近年人気の建材です。
事例4 セメント瓦から軽量瓦へ
施工面積:136.5㎡
瓦の重厚感を残しつつ耐震性のために軽くしたい、という方には、軽量瓦(防災瓦)への葺き替えがおすすめです。
事例5 トタンからガルバリウム鋼板へ
施工面積:91.2㎡
トタンはもともと軽いため耐震性の変化はあまりないですが、ガルバリウムにすることで色あせや錆びの心配を減らす事ができます。
4章 費用が高くなるケース
屋根の葺き替え工事の相場費用をご紹介してきましたが、あくまで目安でしかありません。
実際にはお家の状況次第でかなり金額が変わってしまうからです。
ここでは、良くある金額が高くなってしまうケースを3つ解説します。
お見積もりを取ったときに「どうして思った金額と差があるの?!」と慌てずに済むように、知識として持っておきましょう。
4-1 屋根の形状が複雑
形、造りが複雑な屋根の場合は、費用が高くなることが多いです。
形状が複雑になればなるほど、壁際やつなぎ目などの板金の必要数も増えるからです。
例えば、切妻(きりづま)屋根という形よりも、寄棟(よせむね)屋根の方が、板金処理部分が多くなります。
■形状による違い
また、同じ形状の屋根でも造りが複雑になると、屋根の外周・壁との境目などが増えるため、必要な板金も多くなります。
■複雑さによる違い
このように、建坪が同じくらいのお家だとしても屋根の形によって金額に差が出るということを知っておきましょう。
4-2 屋根の勾配が急
傾きが急な屋根の場合も費用が高くなることが多いです。
屋根の面積が増えるのと、安全作業のための「屋根足場」を追加で設置する必要が出るからです。
■勾配と面積
急勾配の方が屋根面積が増えます。
■屋根足場
急勾配の屋根でも安全に作業するための足場です。
相場で900~1,100円/㎡ほど追加費用がかかります。
5~ 6寸勾配※以上の傾斜のとき、屋根足場をかける場合が多いです。
※屋根の勾配の呼び方 |
屋根の勾配によっても費用差が出てきますので、覚えておきましょう。
4-3 アスベスト(石綿)含有の屋根
2006年以前に建てられたお家のスレート屋根には、アスベスト(石綿)が含まれている可能性があります。
このような屋根の場合は、アスベストの調査費用、撤去・処分費が追加でかかります。
アスベストが飛散して健康被害を起こさないための、適切な処置が必要になるからです。
追加でかかる費用はおよそ、調査で4~8万円、撤去処分2,000~5,000円/㎡です
ご家族やご近隣の方のためにも必要な対応ですので、きちんと見積もり金額に含まれているか確認しましょう。
5章 適正見積もりをもらうコツ
葺き替え費用はお家によって変わってくる、ということをご理解いただけたかと思います。
そこでこの章では、ご自宅に合った適正な見積もりを出してもらうコツをご紹介します。
要点を3つに絞りましたので、業者から見積もりを取るときにぜひチェックしてください。
5-1 葺き替え工事の実績が多い業者に頼む
まずは、実際に葺き替え工事をした実績がきちんとある業者に依頼しましょう。
葺き替えはお家ごとに金額や内容も変わってしまうので、知識・経験がとても重要だからです。
万が一適切な提案・施工をしてもらえないと、工事のやり直しになったり、後々に不具合がでてしまったりする危険性があります。
担当者に聞いたりホームページを見たりして、地元での実績数や工事した屋根の写真などが掲載されているかチェックしましょう。
5-2 事前に詳細な点検をしてもらう
葺き替えの見積もりを依頼するときは、必ず現地に来て詳細な点検をしたうえで見積もってもらいましょう。
お家ごとの細かい造りの違いや現在の状態で、見積もり内容も変わるからです。
例えば、点検してみたら傷んでいるのはごく一部だったので”部分葺き替えで十分”、という診断であれば、全面葺き替えより無駄な出費を抑えられます。
逆に、とても頑丈なつくりの瓦屋根で普通より撤去に手間がかかりそうな場合などは、少し単価を上げなければいけません。
工事が始まってから「思ったより日数がかかるので追加費用が必要です」と言われては困ってしまいますよね。
屋根の点検は、実際にのぼるか、高所カメラやドローンなどでしっかり写真を撮りながらの確認が必須です。
図面だけで見積りを出すのは、詳細や現在の状態が分かりませんのでNGです。
必ず実際の屋根を見てもらいましょう。
5-3 見積もり書の内容説明を受ける
見積もりを出してもらったら、その内容についてはきちんと説明の場を設けてもらいましょう。
見積書は金額だけではなく、工事内容についても詳しく書いてあるからです。
「現状はこのようになっているため、こんな工事が必要です」
「見積書のこの項目は、こういう作業のことを指します」
「この工事はここからここまでを、このような材料で施工します」
というように、皆様ご自身に分かりやすく説明してくれるのが優良な業者です。
屋根の葺き替え工事には普通は分からない専門用語もありますし、そもそも工事の様子が見えないものです。
悪い業者は、皆さまが何も知らないのを良いことに、不要な作業項目を作って高額な見積もりを出したり、
逆に大事な工程を省いた見積もりで安く見せ、あとで「それは見積もりに書いてないので」といって追加請求したりすることもあります。
騙される心配をなくすためにも、見積書についてはきちんと説明を受けて、納得のいく工事内容かどうかを確認するようにしましょう。
6章 費用を抑える2つの方法
葺き替え工事は屋根をまるごと交換する大がかりな工事のため、どうしても費用がかかってしまいます。
しかし、できることなら出費は低く抑えたい…という方がほとんどですよね。
そこで最後に、費用を少しでも抑えるために実践できることを2つご紹介します。
実際に使えるかどうかはお家次第ではありますので、工事業者などに確認をしてみてください。
6-1 自治体の補助金をもらう
重たい瓦屋根を軽量のものに葺き替える場合、耐震補強工事として補助金がもらえる場合があります。
ご自宅に適用できる補助金制度があるかどうか、各自治体に問い合わせてみましょう。
例:神奈川県市町村地域防災力強化事業 耐震改修工事の場合、最大で25万円の補助 など |
◆参考サイト
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
こちらのサイトでは、地方公共自治体による支援制度を検索できます。
お住まいの都道府県をクリック
→①耐震化 にチェック
→検索ボタン を押して探してみてください。
◆補助金についてより詳しい内容ややり方については、以下のページもお読みください。
6-2 葺き替えではなく“カバー工事”にする
屋根を交換する「葺き替え」に対し、新しい屋根をそのまま重ねる「カバー工法」というものがあります。
こちらは既存屋根材の撤去・処分がないため、その分約20~30万円ほどお安く収まります。
また、工期も1~2日は短くなります。
現在の屋根がスレート、トタン、金属系のお家はこのカバー工法ができる可能性があるので、出費を抑えたい方は、ぜひ業者さんに聞いてみてください。
ただし、以下の場合は施工できませんのでご注意ください
カバー工事ができないケース ・屋根が瓦の場合 ・劣化が進行している場合 |
瓦屋根は形状の関係で、カバー工事をすることができません。
また、屋根の劣化が激しい場合は、下地まで傷んでいる可能性が高いです。
その状態のまま上に屋根を重ねても結局雨漏れしてしまうので、カバー工法が施工可能かは業者にきちんと点検してもらいましょう。
◆カバー工法について詳しくはこちら
まとめ
屋根葺き替え工事の大まかな費用相場は以下の通りです。
現在の屋根 | 葺き替え費用相場 |
瓦 | 120~250万円 |
スレート | 95~220万円 |
金属(トタン) | 90~200万円 |
※2階建て、屋根面積100㎡とした場合の概算
現在の屋根材、新しく使う屋根材、屋根の状況によって金額は変わるため、工事をご検討の際は必ずご自宅用の見積もりを作ってもらって下さい。
実際、相場より高くなるケースも多いです。特に
- ・屋根の形状が複雑
- ・屋根の勾配が急
- ・アスベスト(石綿)含有の屋根
という場合には、同じ大きさのお家でも費用が大きく異なることがあります。
ご自宅に合った適正見積もりをもらうコツとして、
- ・葺き替え工事の実績が多い業者に頼む
- ・事前に詳細な点検をしてもらう
- ・見積もり書の内容説明を受ける
の3点はぜひ実施してください。
費用を少しでも抑えたいという方は、
- ・自治体の補助金をもらう
- ・葺き替えではなく“カバー工事”にする
という対応ができるかどうか、業者の方に相談してみましょう。
大切なお家の工事のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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