うちもそろそろ防水工事を…と思って調べていたら、「シート防水」の文字が。
見慣れない言葉で、どんな防水なのか想像しにくいですよね。
シート防水とは、塩化ビニールやゴム製のシートを専用の接着剤や機械で施工箇所に固定し、水の侵入を防ぐ工事です。
■防水工事の種類
シート防水は耐用年数と費用のバランスが良く、費用対効果の高い工事にできるのが特徴です。
また、シートは工場で生産されたものを使うので、いつでも均一な厚みで仕上げられます。
広い面積をむらなく施工できるので、アパートやマンションの屋上等でよく選ばれています。
ただし、シート防水の中でも工法が分かれる工事なので、施工したい場所の状態にあったものを選ぶことが重要です。
そこでこの記事では、シート防水の基礎知識やメリット・デメリット、費用相場などの全体像を紹介します。
後半ではおすすめの施工場所や防水工事が必要な目安となる劣化症状も解説します。
最適な防水工事にするため、是非最後まで読んでみて下さいね。
目次
1章 シート防水とは
シート防水とは、塩化ビニールやゴム製のシートを施工箇所に接着し、水の侵入を防ぐ工事です。
この工事には、以下の2種類の工法があります。
①密着工法
→専用の接着剤で施工箇所とシートを接着する工法
出典:ロンシール工業株式会社
通気性は無いので、まだ雨漏りしていない箇所向けです。接着剤を使用するため、施工箇所を十分に乾燥させる必要があります。
②機械固定工法
→専用の機械で施工箇所とシートを接着する工法
出典:ロンシール工業株式会社
密着工法と違い、施工箇所からシートの一部が浮いた状態になる工法です。通気性を確保できるので、雨漏りしていても施工可能です。
施工箇所に合っていないものを選ぶと、工事後に不具合が発生する原因となります。
施工を依頼する際は、工事前に必ず専門業者に点検を依頼し、どちらの工法か決定しましょう。
補足:使用する材料で耐用年数が変わる シート防水で使われるシートの材質で、耐用年数は変化します。
■耐用年数・シートの厚さの比較 塩ビシートに比べゴムシートは薄いため、鳥についばまれてしまったり外からの衝撃で傷みやすいです。 その為、現在では傷みにくい塩ビシートを使って施工するのが一般的です |
2章 シート防水のメリット・デメリット
2-1【メリット】下地を選ばず施工可能
1度目の防水工事はもちろん、前に行った防水工事がシート防水以外のものでも、シート防水は施工可能です。
理由は以下の2つです。
①シートをそのまま上から被せて防水機能を発揮する工事のため、前にシート防水以外の工事を行った箇所でも施工できる。 ②直接接着しない工法(機械固定工法)を使用することで、湿気の影響をほとんど無くすことができる。 |
例えば、ウレタン防水を行った屋上の上にFRP防水を行うと、後から表面が膨れてしまうケースがありますが、シート防水なら施工後に不具合が起こってしまう心配がありません。
シート防水なら、下地と防水材の相性が原因で起こる不具合を防げます。
2-2【メリット】耐久性に優れている
防水工事の種類 | 耐用年数 |
ウレタン防水 | 8~10年 |
FRP防水 | 10~12年 |
シート防水 | 10~15年 |
アスファルト防水 | 15~20年 |
シート防水は、防水工事の中でも耐久性に優れています。
熱や紫外線に強く防水性のあるシートの為、最大で15年程度長持ちさせられます。
何度も足場を建てるのが難しいビル・アパートにおすすめです。
※使用するシートがゴムシートか塩ビシートかで耐用年数は変化します。
ゴムシートの方が薄く、鳥についばまれて穴が開いてしまうことが多いため、最近では塩ビシートで施工することが一般的です。
2-3【メリット】広い面積を一度に施工できるので、工期短縮が可能
防水工事の種類 | 工期 |
ウレタン防水 | 3~10日 |
FRP防水 | 1~2日 |
シート防水 | 2~4日 |
アスファルト防水 | 5~7日 |
※面積、下地処理・準備等で日数は変動します。
シート防水ならビルやアパートも短期間で施工可能です。
防水材が既成のシートで厚さが一定なので、広い面積も一度にむらなく施工可能だからです。
ウレタン防水のように、液体の防水材を塗装する方法の場合、乾燥する時間が必要な上、職人の腕次第でムラが出てしまう恐れがあります。
効率よく、綺麗に仕上げるならシート防水がおすすめです。
2-4【デメリット】複雑な施工箇所には不向き
シート防水は、凹凸や固定されている物が多い箇所には不向きです。
なぜなら防水材がシート状なので、複雑な形状の箇所を覆うのが難しいためです。
シートの隙間から水が入り、施工後に漏水するおそれがあります。
複雑な形状の箇所への防水を検討されているなら、ウレタン防水も候補に入れた上で専門業者に相談しましょう。
<ウレタン防水について詳細はこちら>
2-5【デメリット】工事中に振動音が発生する
シート防水のうち、機械固定工法を行う場合は振動音が発生してしまいます。
シートを接着するための金具の固定の際、ドリルを使う必要があるためです。
そのため、工事前に入居者の方へのあいさつ・作業時間帯の案内が必須になります。
なにも説明をせず工事にはいってしまうと、トラブルの原因となります。
スムーズに工事をするためにも、入居者の方への説明も丁寧にしてくれる業者に依頼すると安心です。
3章 シート防水の費用相場
シート防水を30坪、80㎡の屋上に施工した場合の費用相場は、約80~100万円程です。
(実際には使う材料や屋上の形、置いてあるもの、人件費などによって変動します。)
■見積もり書の例
見積もり書を見る際は
- ①「工事一式」でなく内訳の記載がある
- ②施工する面積が大きすぎor小さすぎない
- ③材料名・数量の記載がある
この3箇所を最初にチェックしましょう。
内訳や面積、数量が間違っていると、材料費を正確に計算できないため後から追加費用が掛かってしまったり、余計な費用を払ってしまうケースもあります。
必ず具体的に、どこをどの範囲どんな工事をするのか明記してもらいましょう。
また費用は、下地の劣化状況(ひび割れの数や傷みの状態)により変わります。
正確な金額で見積もりを作成してもらうためにも、見積もり前に必ず現地調査をしてもらいましょう。
<詳しい内訳や、それぞれの単価について詳しくはこちらをご覧ください>
4章 シート防水の工程
シート防水の工事の流れを、工法ごとに紹介します。
一つ一つが防水するための重要な工程です。実際の工事がどのように進むのか把握しておきましょう。
4-1 密着工法
①下地清掃
下地が乾燥した状態で行います。砂埃、汚れがついていれば掃除します。
②下地処理
接着力を高めるための下塗り材を全体に塗ります。
③接着剤を塗る
シート防水用の接着剤を塩ビシートの裏面か下地に塗っていきます。
④塩ビシートを貼る
空気やシワが入らないよう、塩ビシートを下地に貼ります。十分に接着できるよう、モップやローラーで上から全体をおさえます。
⑤塩ビシート同士の継ぎ目を接着する
床面のシート同士の継ぎ目を溶剤や熱風で溶かして接着します。
⑥立ち上がり(床面に対し、垂直になっている箇所)の施工
接着剤を立ち上がりに塗り、塩ビシートを貼ります。
⑦隙間の空いている塩ビシート同士の隙間を接着し、完成
シーリング材で隙間が埋まっていないシート同士の隙間を埋めて完了です。
4-2 機械固定工法
①下地処理
水たまりになる程の凹みがあれば、最初に補修します。
②絶縁用シートを敷く
施工箇所に湿気を逃がすためのシートを敷きます。
③固定用金具の取り付け
シートと施工箇所を固定する為の金具を取り付けます。
④塩ビシートを敷き、接着する
⑤施工箇所の隅や排水溝の周りに、成形役物を固定します。
成形役物とは隅や排水口の隙間から、水が入らないようにするための部材です。
■成形役物 出典:JWMA防水用語辞典 |
⑥シートとシートの継ぎ目を接着し、完成
塩ビシート同士の継ぎ目を、専用の接着剤で接着して、完了です。
工事の進捗を報告してくれる業者だと安心!
業者に依頼する際は、工事中に工事の進捗やその日行った内容を報告してくれる所がおすすめです。
なぜなら、工事後の仕上がりだけでは工事が適切に行われているかを判断するのは難しいからです。
作業日誌のような形で毎回報告をくれる所なら、作業に抜け漏れが無いかや進捗状況も分かりやすくなります。
■このサイトを運営しているユーコーコミュニティーでは、ノートを使ってお客様への進捗の報告を行っています。
その日に行った作業や、明日の予定等を記入して毎日お渡ししています。
5章 シート防水をお勧めしたい屋上2選
シート防水は主に屋上に使用されますが、特にどんな状態の屋上におすすめなのかを紹介します。
5-1 貯水槽やトップライトがない屋上
シート防水は、貯水槽やトップライト(天窓)がない、できるだけ平坦な所にはおすすめです。
なるべく障害物がない屋上の方がシートの継ぎ目が少なくでき、あとから水が入ってきてしまう心配がないためです。
反対に、固定されている物が多い場所には不向きです。
シートを接着するのが難しいので、障害物と屋上の隙間から水が入ってきてしまう恐れがあります。
シート防水を施工するなら、なるべく固定されているものが無い屋上がおすすめです。
■トップライト(天窓) 出典:株式会社菱晃 トップライトとは、屋上から光を入れるための天窓の一種です。
■貯水槽 出典:株式会社山陽ポンプ工業所 貯水槽とは、防火用水や水道水等を貯めておくためのタンクです。 |
5-2 防水工事が2回目以降の屋上
防水工事が今回で2回目以降の屋上なら、シート防水がお勧めです。
なぜなら、下地の状態を選ばず施工ができるからです。
既に行われている防水と違う種類のものを施工する場合、組み合わせによっては相性が悪く、不具合が起こることがあります。
(NG例:ウレタン防水の上にアスファルト防水やFRP防水を施工する等)
シート防水は前に防水工事を行った箇所の上にそのままシートをかぶせる為、下地の状態によって後から不具合が起こる心配がありません。
下地の状態を選ばないシート防水で、失敗の無い工事にしましょう。
6章 シート防水を行うべき症状4つ
シート防水を行うべき劣化症状を4つ紹介します。
屋上への施工を検討中で、一つでも当てはまるものがあれば、一度専門業者に点検を依頼した上で防水工事を行いましょう。
①表面がひび割れている
経年劣化で屋上自体がひび割れてしまっています。1箇所でもひび割れがあるなら、業者に点検を依頼しましょう。
このままにしておくと、ひび割れから水が侵入し、建物の中に水が入ってしまう為です。
ひび割れだけ直しても根本的な解決はできない為防水工事が必要です。
②雑草や藻が発生している
雑草や藻が発生すると、屋上やベランダに根をはります。
このまま放置すると屋上やベランダが傷み、雨漏りの原因となるため、早めに業者に点検を依頼しましょう。
③水たまりがある
屋上に水たまりがある場合も、一度業者に点検を依頼しましょう。
そのままにしていると水が溜まった箇所から徐々に水が侵入し、雨漏りの原因となるためです。
水たまりがある場合、屋上の排水口が落ち葉や泥で詰まっていることが考えられます。詰まっている場合は、防水工事と一緒に清掃をお願いしましょう。水はけを良くすることで、劣化をおさえられます。
④防水シートの浮き・破れがある
経年劣化や外部からの衝撃により、防水シートに浮き・破れが発生しています。1箇所でもあれば業者に点検を依頼しましょう。
小さな隙間からでも、雨水が侵入することで雨漏りの原因となるためです。
浮き・剥がれがある範囲が狭い場合は、そこだけ部分補修が可能な場合があります。なるべく早めに業者に相談しましょう。
まとめ
シート防水は、塩化ビニールやゴムでできたシートを専用の接着剤や金具で固定する工事です。
最近は塩化ビニール製のシートで施工することが一般的で、耐用年数は約10年~15年程です。
【シート防水のメリット】
- ①下地を選ばず施工可能
- ②耐久性・耐火性に優れている
- ③広い面積を一度に施工できるので、工期短縮が可能
【シート防水のデメリット】
- ①トップライトや貯水槽のある屋上には不向き
- ②工事中に音や振動が発生する
- 貯水槽やトップライトなどの無い平坦な屋上や、今回で防水が2回目以降の場合におすすめの工法です。
目安となる劣化症状をチェックして、適切なタイミングで工事をしてお家を長持ちさせてあげましょう。
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