「屋上防水」と言われても、どんな工事なのか、どんな種類があるのか、専門的過ぎてよくわからない方も多いのではないでしょうか。
専門業者に「この工法がいいですよ」言われても、ピンと来なかったり、本当かなぁと不安になったり。
ですが、実は大きく分けると屋上防水の種類は、たったの3つだけです。
もちろん、より細かく分類すると種類は増えますが、まずはこの3つを理解すれば全く問題ありません。一番主要で、一般的に多く選ばれている施工方法だからです。
そこで、本記事ではこの3つに絞って、屋上防水の種類をわかりやすく且つ、具体的にお伝えします。
特徴やメリットデメリット、注意点などをご紹介しますので、建物にあった施工方法を、ぜひ見つけてみてください。
1章 屋上防水とは
屋上防水とは、主に陸屋根(りくやね・ろくやね)と呼ばれるビルやマンションの屋上などの屋根に行われる防水工事です。
一般戸建て住宅のように傾斜のある屋根は、雨が降ると水がそのまま流れ落ちます。
ですが、平らである陸屋根の場合は水が流れ落ちず溜まりやすいため、建物の中に水が入りこまないようにするための、防水工事が重要となります。
また、建物は経年劣化などの様々な事象によって、ヒビや亀裂がはいります。そこから水が侵入してしますので、防水の「膜」や「層」が必要になってきます。
2章 屋上防水の種類と特徴
屋上防水の施工方法は大きく分けて3種類あります。建物の大きさや、雨漏りやひび割れなどの劣化状況によって施工方法が異なってきます。
そのため、防水工事の施工方法を決めるときは、建物の状況や、それぞれの防水工事の特徴をおさえた上で検討しましょう。
まずは、それぞれの防水工事の特徴をまとめましたので、見てください。
2-1 ウレタン防水
ウレタン防水は、「塗装」をおこなう防水工法です。塗膜防水とも言われます。液状のウレタン樹脂防水材を塗り、化学反応で防水の膜をつくります。
日本で行われている防水工事の中で最も普及している工法です。材料が液状のため、平らな場所以外にも使用でき、幅広く施工できるのが特徴です。
※工期は80~100㎡の広さです。
〈ウレタン防水の費用相場や見積もりチェックポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。チェック!〉
ウレタン防水のメリット
・材料が液状なので、狭い場所や複雑な箇所でも幅広く施工が可能
・比較的安価
・防水層が軽いため、建物に負担がかからない
・シート防水と違い、継ぎ目がない防水層を形成しやすい
ウレタン防水のデメリット
・人による施工のため、完全な均一にならず塗膜の厚み確保が難しい
・材料の乾燥期間が各工程で必要になるため、他工法と比較して全体の工期がかかりやすい
・定期的(5~10年ごと)にトップコートによるメンテナンスが必要
※「トップコート」:仕上がった塗膜の保護や艶を出すために、塗装の表面に塗る保護材のこと。
2-2 アスファルト防水
出典:東海防水改修工事協同組合
アスファルト防水は、高温に熱した液状のアスファルトと、防水性の高いアスファルトシートを貼り重ねて、厚みのある防水層をつくる工法です。
防水工法の中で最も歴史が古く、信頼性が高いとされています。
※工期は80~100㎡の広さです。
アルファルト防水のメリット
・シートのつなぎ目に液状のアスファルトを染み込ませるため、防水性能を確保しやすい
・防水層が厚いため、水密性が高い
・耐用年数が長い
※「水密性」:密閉した液体が外部に洩れない、または内部に液体が流入しない性質を言う
アルファルト防水のデメリット
・高熱でアスファルトを溶かすため、臭いが発生する(熱工法の場合)
・シートを重ねた上からアスファルト材を入れるため、工事期間が長い
アスファルト防水には「トーチ工法」と「熱工法」などの種類があります。
トーチ工法:
防水シートの裏面に液状のアスファルトがコーティングしてあり、アスファルトを溶かし出しながら施工する工法です。匂いが発生しないために、屋上の防水工事では広く普及している工法です。
熱工法:
特殊な釜でアスファルトを熱して液状にして、ルーフィングを張る防水工法です。アスファルト特有の匂いが発するために、現在の屋上防水工事では施工されることが少なくなりました。ですが、アスファルト防水を代表する施工方法です。
2-3 シート防水
出典:株式会社濱建
シート防水は、塩ビ(塩化ビニル)またはゴムでできたシートを用いる防水工法です。シートを下地に貼り付ければ完成です。特に広さのある屋上や倉庫、商業施設などの鉄骨造の建物に多く採用されています。
上からシートを被せるため、既存の防水層を撤去することなく、施工できるのが特徴です。
※工期は80~100㎡の広さです。
〈シート防水の費用相場や見積もりチェックポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。チェック!〉
シート防水のメリット
・既存の防水層に影響されず、どんな防水層の上でも施工可能
・上にシートを被せるため、既存防水層の撤去作業やゴミが発生しない
・雨が降っても施工できるため、工期の短縮が可能
・耐候性に優れている
・色のバリエーションがある
シート防水のデメリット
・突起物や凹凸がある箇所や、複雑な建物は、施工しづらい
・シートのつなぎ目から雨水が侵入しやすく、専門業者でないと施工不良が発生しやすい
・1枚の防水のため、外部から衝撃を与えると損傷しやすい
3章 建物にあった防水工法の選び方
今までお伝えしてきたように、屋上防水の施工方法は大きく分けて3種類あります。ですが、建物の大きさや、施工する場所の状況によっては工法が異なってきます。
そのため、建物の状況や、それぞれの防水工事の特徴をおさえた上で、防水工事の施工方法を決めましょう。
この章では、建物に適した防水工法の選び方を、簡単にフローチャートでまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
屋上防水工事の全体像や各工法の違いを、ご理解いただけたと思います。
建物によって適した工法が違い、またそれぞれの長所と短所もありますので、それを理解して選ぶことが大切です。
専門用語が多い工事なので少しわかりづらいですが、分解するとたった3種類(ウレタン防水・アスファルト防水・シート防水)なので、色々覚えようとせず、要点だけ抑えることが失敗しないコツです。特徴を抑えて、適した工事をしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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