モニエル瓦っていったい何?
他のお家の屋根とどう違うの?
と、初めて聞く言葉でお困りの方も多いのではないでしょうか。
モニエル瓦は、乾式コンクリート瓦とも呼ばれ、非常におしゃれなデザイン、しかも災害にも強いという、大変優れた屋根材です。
塗装によるメンテナンスで寿命を延ばすことができます。
しかし、特殊な屋根のため、塗装の際は注意が必要です。
万が一誤った施工をすると、剥がれなどの不具合が出てしまう可能性があります。
この記事では、モニエル瓦の基本的な特徴から経年で起こる劣化症状、そして塗装で失敗しないための注意点を、塗装のプロが写真付きで解説していきます。
おすすめ塗料や費用相場も紹介しますので、ぜひメンテナンス時に役立ててください。
とても性能が高く、高級感もある素晴らしい瓦です。
最後までお読みいただくことで、特徴とメンテナンス方法がわかりますので、長く大事にお住まいになってくださいね。
目次
1章 モニエル瓦とは
「モニエル瓦」とは、セメント瓦の一種です。
正式には乾式コンクリート瓦と呼ばれます。
乾式洋瓦と言うこともあります。
■モニエル瓦とセメント瓦の見分け方 遠目だと良く似ていますが、小口を見ることで判別できます。 ↓セメント瓦について知りたい方はこちら |
もとは、「旧:日本モニエル株式会社(ラファージュルーフィング株式会社)」が販売していた屋根材の商品名なのですが、非常に広く普及したため、そのまま屋根材名として業界に定着しました。
現在はメーカーが解散しており、製造はされていません。
モニエルの特徴は、機能面とデザイン面が非常に優れていることです。
この2点をそれぞれご紹介します。
1-1 機能:耐震性・断熱性が高い
モニエル瓦は、主成分がセメントと砂であるため、日本古来の粘土瓦(和瓦)よりも軽量です。
そのため耐震性、断熱性に優れている、とても性能の高い建材です。
ただ、セメントは水分を吸収すると劣化してしまうため、モニエル瓦も防水塗装によるメンテナンスが必要です。
メンテナンスすることで40~50年以上使い続けられます。
1-2 デザイン:着色スラリーにより色彩豊か
モニエル瓦は、デザイン性が非常に高いのが特徴です。
様々な形状、色彩のものがあります。
モニエル瓦最大の特徴は、この色彩部分です。
“着色スラリー”という着色剤を表面に塗っており、“スラリー層”という層を形成しているのが、一般のセメント瓦と異なる点です。
詳細は3章で解説しますが、塗装メンテナンスをする際はこのスラリー層に注意しなければいけません。
それさえクリア出来れば、塗装後の仕上がりも非常に美しく、長く使い続けられる優秀な屋根材と言えます。
次の章では、具体的に塗装メンテナンスのタイミングについてご紹介します。
2章 塗装必須!築10年前後で現れる劣化症状
モニエル瓦は、築10年前後で塗装をしましょう。
なぜなら、新築時の塗膜が紫外線や風雨によって劣化し、屋根材が傷み始めるのがこの時期だからです。
遅くても15年頃までには塗装してあげましょう。
10年くらいで現れ始める代表的な劣化症状を解説します。
ひとつでも当てはまったら、塗装メンテナンスの時期です。
ハウスメーカーや専門業者の点検時にチェックしてもらいましょう。
※屋根にご自身で上るのは大変危険です!必ず専門業者に見てもらってください。 |
2-1 色あせ
モニエル瓦の表面が色あせて、くすんで見えます。
新築時は綺麗に色づいていたはずですが、日々の紫外線や風雨により、着色スラリー層が弱って、色が抜けてきている状態です。
劣化の初期症状と言えます。
遠目に屋根が見えたとき、なんか色あせたかな、新築時よりぼんやりした色に見えるな、と思ったら、専門業者に点検してもらいましょう。
2-2 カビ・コケの繁殖
瓦の表面にある、黄色~茶色っぽいブツブツの正体は、コケやカビです。
コケなどは緑色のイメージだと思いますが、日当たりの強い屋根の上で乾いて仮死状態になると、このような色になります。
北面や梅雨時期などは緑色に復活していたりします。
モニエル瓦が水分を含んでジメジメした状態になると、カビやコケの胞子が付着して、根付いてしまうのです。
表面の防水性が切れてしまっている証拠です。
カビ、コケは瓦の内部に根っこを張っていくため、モニエルの主成分であるセメント自体をもろくしてしまいます。
繁殖するとひび割れやすくなり、耐久性も落ちますので、見つけたらすぐ塗装を検討しましょう。
2-3 ひび割れ、欠落
厚みがあるモニエル瓦も、経年劣化でひび割れてしまいます。
セメントは水を吸うと膨張し、乾くと収縮するため、その動きで負荷がかかるためです。
塗装の防水性が切れてからしばらく経っている状態です。
放っておくとひびは広がり、やがて欠落も起こってきます。
万が一、お庭やベランダに破片が落ちてきては大変ですので、早急に塗装業者に問い合わせ、塗装メンテナンスを検討しましょう。
3章 費用相場&見積もり事例
モニエル瓦の塗装工事は、40万~80万円ほどの相場です(洗浄や足場代も含め)。
金額は屋根の大きさや、塗料のグレードにもよって変わってきます。
実際の見積事例を2パターンご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
※「スラリー層除去」の項目は、下地調整や高圧洗浄と一緒の項目として入っている場合もあります。
4章 塗装で失敗しないための注意事項3点
モニエル瓦の塗装メンテナンスの際、必ず注意してほしい3点をご紹介します。
これらを押さえておかないと、せっかく塗装したのに不具合が出てやり直し、余計な費用が掛かったり、見た目が悪くなったりする危険があります。
モニエル瓦ならではのポイントをしっかり押さえて、適切なメンテナンスをしましょう。
4-1 高圧洗浄で“スラリー層”の除去が必要
モニエル瓦は、高圧洗浄で表面のスラリー層をしっかり落としてから塗装してもらいましょう。
スラリー層が残ったままだと、劣化したスラリー層と一緒に塗装も剥がれてきてしまうからです。
具体的には、高圧洗浄を念入りにしてもらうようになります。
また、洗浄で取り切れなかったものは手作業(ケレン作業とも言います)で落とします。
■洗浄後のモニエル瓦
工事の際は、業者に「洗浄時の写真を撮って見せてください」と伝えておくと、きちんと作業してくれているか確認出来て安心です。
※屋根にご自身で上るのは大変危険です!必ず専門業者に見てもらってください。 |
4-2 モニエル瓦専用塗料が必要
モニエル瓦の塗装の際は必ず、「モニエル瓦適用」の下塗り塗料を使いましょう。
下塗り塗料とは、一般的な3回塗りの1回目に使う塗料で、瓦との接着剤の役割をする塗料の事です。
この下塗りが適したものでないと、せっかく良い塗料を塗ったのに剥がれるなど、不具合を起こす危険があります。
例えば、皆さんが普段使うボンドや接着剤も、木材には使えるけど金属には使えないタイプ、など素材を選びますよね。
塗料の下塗り材も同じで、全ての塗料がモニエル瓦に使えるわけではありません。
どの素材に使えるかは、塗料のカタログやホームページなどに記載があります。
|
4-3 築後10~15年までの塗装がおすすめ
モニエル瓦は、築後10年程度で塗装するのが理想的です。
最初の塗装の効果が切れて、劣化が進んでくるのがこのくらいの年数だからです。
遅くとも15年頃にはやってあげましょう。
傷んでもそこだけ交換すれば・直せばいいと思うかもしれませんが、モニエル瓦に限ってはそれができない可能性があります。
現在は廃版となって製造・販売されていないためです。
万が一割れて瓦の交換が必要になっても、同じ瓦がなかなか手に入らない場合があるのです。
(屋根屋さんなどに在庫があるかどうかです。)
かといって、それで屋根全体を新しくする葺き替え工事になっては、大工事で費用もかさんでしまいます。
余計な出費を出さないためにも、おしゃれなデザインの瓦をそのまま残すためにも、築10年前後で塗装メンテナンスをしてあげましょう。
↓劣化が進んでおり葺き替えを検討する方は、こちらもご覧ください
5章 厳選!モニエル瓦用おすすめ塗料2選
4-2でも述べたように、モニエル瓦は使用できる塗料が限られています。
その中でも、特におすすめの塗料を2種ご紹介します。
5-1 モニエル専用と言えばこれ!スラリー洋瓦用シーラー
スラリー洋瓦用シーラー(水谷ペイント)は、その名の通り、スラリー層を持つモニエル瓦のために開発された専用下塗り塗料です。
経年劣化で弱ったスラリー層が、塗装の剥がれの原因にならないように、しっかりと固めてガードしてくれます。
水谷ペイントは、特に屋根用塗料の技術力が高いメーカーとして有名です。
この塗料も2001年の販売開始以降、モニエル瓦の塗り替えに広く使われ続けています。
実績の多い、まず安心できる塗料を選びたい方はこちらがおすすめです。
※一般的に下塗りは1回ですが、この塗料は2回塗りを推奨しています。 工期が1日増える・塗料代がかかる等、費用が少し高くなる場合があります。 |
5-2 お得に工事したい方向け!ハイルーフマイルドフッ素
ハイルーフマイルドフッ素(大同塗料)は、通常の塗装が3回塗りであるのに対し、2回塗りでしっかり仕上がる、という画期的な塗料です。
しかも、あらゆる素材に対応できる高い密着性が特徴です。
モニエル瓦、薄型スレート瓦、金属屋根はもちろん、これまで塗装は不向きとされていた陶器瓦にも使えるという高性能な塗料です。
お客様にとっては、2回塗りなので工期も短くなり、使う塗料の量自体も減るので、人件費・塗料代のコストカットになります。
業者にとっても、あらゆる屋根材に使えるため在庫を抱えるリスクがなくなり、廃棄も減って環境に良い塗料です。
お得に工事をしたいという方は、こちらの塗料がおすすめです。
6章 最適なメンテナンスをしてくれる業者選び3つのコツ
モニエル瓦はメンテナンスする業者の知識、経験がとても重要です。
なぜなら、工事する際は普通の屋根より注意点が多い屋根材だからです。
せっかくお手入れをしたのに、業者が悪くて失敗してしまったら悔しいですよね。
そうならないために、業者を見極めるコツを3つに絞ってご紹介します。
点検・見積もり時に聞いてみたり、ホームページをチェックしておきましょう。
6-1 詳細に屋根点検をしてくれる
モニエル瓦は、見積もりを作る前の点検をしっかり行ってもらいましょう。
実際に上るか、性能の良いドローン・高所カメラなどで、20枚以上写真を撮ってくれるところが安心です。
なぜなら、きちんと確認しないと、そもそも屋根材を間違えて見積もりをつくる業者もいるからです。
モニエル瓦は、セメント瓦(プレスセメント瓦)の一種ですから遠目だと良く似ています。
しかし普通のセメント瓦と同じ塗料では不具合が起きる可能性もあります。
事前のチェックは非常に大事なのです。
また、ひび割れや欠けがあったところは別途補修が必要です。
補修せずただ塗装すると、結局同じところからまた割れてしまいます。
地上から遠目に見ただけではまず見つけられません。
丁寧に見てあげることで、補修の必要箇所が分かります。
きちんとした業者なら、素材や劣化状態を確認しないで見積もりをつくることはありません。
大事なお家のメンテナンスのために、詳細な点検をしてもらいましょう。
6-2 モニエル瓦の施工実績がある
見積もりを取る際には、「モニエル瓦の施工実績を見せてください」と伝えましょう。
きちんと工事をした経験があるか確認するためです。
単に件数を教えてもらうだけでなく、実績写真を集めて見せてもらいましょう。
さらに、近隣で工事したお家があると、依頼する前に仕上がりを見ることもできて安心です。
実際に工事をした知識・経験があるか判断するために、ぜひ施工写真を見せてもらいましょう。
6-3 工事中の様子を写真報告してくれる
屋根の上の工事はご自身の目で確認することができません。
最後の仕上がりだけでなく、途中どんなふうに作業が進んでいるのか、工事途中の写真も撮ってもらいましょう。
特にモニエル瓦は洗浄や下塗りの際の写真は必ずもらいましょう。
なぜなら、一番大事な工程ですが、塗り終わった後では確認できないからです。
■下塗り作業の様子 |
作業中写真があることで、見えないところでの手抜きの心配がなくなります。
業者側もきちんとした工事をしているという証明になります。
業者が全て、見えないところで手抜きをするわけではありませんが、見えて安心できるに越したことはありません。
また、お忙しくて毎日確認できなくても、写真は後にも残って確認できますので、工事終了後でもまとめて施工中写真をもらうようにしましょう。
まとめ
モニエル瓦は機能もデザイン性も高い、とても優秀な屋根材です。
塗装メンテナンスによって長くお使いいただけます。
適切な時期にお手入れをしてあげましょう。
ただ、スラリー層など、一般の屋根より注意が必要な点もあります。
しっかり知識・経験のある業者を選んで塗装しましょう。
もともとが洋風のおしゃれな屋根材です。色選びもこだわると、より楽しい塗装工事になりますよ。
- ◆参考記事
ここまでお読みいただきありがとうございました。