「油性塗料って水性塗料とどう違うの?」
「結局外壁塗装にはどっちがいいの?」
と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
油性塗料とは、シンナーを混ぜて使う塗料のことで、以前は外壁塗装の主流でした。
一方水性塗料は、水を混ぜて使用します。いまではこちらの人気が高まっています。
油性塗料の方が耐久性も機能性も高いことから、水性よりも外壁屋根塗装に適していると言われていましたが、臭いや環境への影響など課題点もあります。
そのため近年は水性塗料の技術開発がすすんで性能も上がってきたので、一言で「こちらの方が優れている/絶対におすすめする」とは言えないのが現状です。
そこで本記事では、油性塗料のメリット・デメリットを、水性塗料と比較しながら解説していきます。
油性・水性どちらを選ぶかは、使う人の好み・考え次第です。
具体的な特徴を知ったうえで、自分にあっている方を選びましょう。
また最後にはおすすめの油性塗料もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
油性塗料は、水性にはない特徴もたくさん備えた優れた塗料です。
ぜひ最後までしっかり読んで特徴と違いを理解し、後悔しない塗料選びをしてくださいね。
目次
1章 油性塗料とは~水性との違い~
まず塗料とは、そのままでは固くて屋根や外壁に塗ることができないため、希釈材(薄め液)を混ぜて加工します。
こうして初めてハケやローラーで塗装することができます。
この希釈材にシンナー(有機溶剤)を使う塗料のことを「油性塗料(溶剤系塗料)」とい言います。
普通のシンナーでは臭いが強いので、外壁屋根塗装では弱いシンナーを使う「弱溶剤系塗料」が一般的です。
「水性塗料」は、その名の通り水で希釈して使う塗料のことです。
シンナーは水に溶けないような成分もたくさん溶かすことができるため、油性塗料の方がより多くの機能を持たせやすい、という違いがあります。
また、シンナーならではの扱い方の差などもあります。
次の章から、水性と比べた時の具体的なメリット・デメリットを見ていきましょう。
2章 油性塗料のメリット
油性塗料のメリットは、なんといってもその機能性です。
外壁屋根塗装は、建物の保護のためという役割が主ですので、様々な性能が良いというのはとても重要なメリットになります。
① 耐久性が高い
油性塗料は水性と比べて、より強靭な塗膜を作ることができ、耐久性が高いです。
塗料を劣化させる紫外線に対しても強さを発揮するため、屋外にある物の塗装に非常に適しています。
外壁屋根塗装で昔から油性塗料が使われていたのは、この理由がとても大きいです。
② 光沢感が出る
油性塗料は、塗った後の美しい光沢(つや)が発揮されやすいです。
水性塗料にも光沢はありますが、油性よりはやや控えめに感じることが多いでしょう。
つやの持続期間も油性の方が長いので、綺麗な状態をずっと楽しむことができます。
■光沢保持率の比較 『水性セラタイトF』 『セラタイトF』 出典:SK化研 上が水性塗料の『水性セラタイトF』、下が油性塗料の『セラタイトF』の光沢保持率の実験結果です。 5000時間のところを見てみると、水性塗料は90%を少し下回っていますが、油性塗料の方は90%以上の光沢を保ち続けています。 |
③ 密着性が高く様々な素材に塗装できる
油性塗料は素材への密着性が高く、剥がれにくい塗膜にできるという特徴があります。
例えば、金属などのつるつるした表面は水性塗料だと剥がれやすいため不向きですが、油性塗料ならしっかり塗装することができます。
様々な素材に対応できるので、お家の塗装でも様々なパーツを保護するのに役立っています。
④ 低い気温でも乾燥時間が一定
油性塗料は環境に左右されにくいため、気温が低いときでも乾燥しやすいです。
水性だと、気温が低いときはその分長い時間をかけないと乾燥しないのですが、油性なら時期や時間帯に関係なく作業ができるので、工事スケジュールを立てやすいというメリットになります。
■水性塗料の例 水性塗料は気温が低いと乾燥に時間がかかるため、寒い時期の塗装は工期が多少長くなる可能性があります。 |
※乾燥時間は塗料ごとに異なります。正しい乾燥時間は、必ず各塗料のカタログや仕様書をチェックしましょう。
⑤ 摩耗や薬品に強い
油性塗料は、耐摩耗性や耐薬品性も強いという特徴があります。
『耐摩耗性』とは例えば風雨による摩擦などによる劣化に強い性質、
『耐薬品性』とは酸性雨や塩害などによるダメージに強い性質です。
このような性質もあって、油性塗料は建物の保護に向いているといえます。
紹介した油性と水性の機能の比較は、あくまでも“その傾向が強い”というものです。
実際の性能は、塗料によってそれぞれ異なりますのでご注意ください。
水性塗料でも油性と同じくらいの耐久性の製品や、多様な素材に使える製品などもあります。
具体的な性能は、各塗料のカタログやメーカーHPなどを確認してください。
3章 油性塗料のデメリット
油性塗料は非常に優れた機能をもっていますが、デメリットや注意が必要な点もあります。
選ぶ際は、長所だけではなく短所も把握したうえで、総合的に判断しましょう。
① 臭いや健康、環境への配慮が必要
油性塗料は希釈材にシンナー(有機溶剤)を使うため、塗装時にはどうしても有機溶剤独特の臭いが発生してしまいます。
有機溶剤はVOC(揮発性有機化合物Volatile Organic Compounds)を含んでいるため、大量に吸い込みすぎると人体にも悪影響が出ます。
またVOCは大気汚染の原因にもなるため、国でもVOC削減を推進しています。
外壁塗装で使われる油性塗料のほとんどは「塗料用シンナー」という弱いシンナーを使った弱溶剤系塗料なので、臭いやVOCもかなり少なくなっていますが、人によっては工事中に気分が悪くなってしまうこともあります。
臭いや化学物質に敏感な人のいるところでの使用は向きません。
※水性塗料も臭いやVOCが全くないわけではありませんのでご注意ください。
② 扱い・保管に注意が必要
シンナーは引火性が高いという性質があり、扱いを誤ると火事などの危険がでてしまいます。
そのため、消防法や各市町村の条例に従って適切な保管・管理が必要です。
また、水性塗料を塗ったハケやローラーは水洗いして何度も使いまわせますが、油性塗料は水では洗い流せません。
油性塗料のついた道具を洗うにはまた専用の有機溶剤(ラッカーシンナー、ペイントうすめ液など)が必要となります。
業者や塗装職人からしても、道具の手入れにとても手間がかかってしまいます。
③ その日のうちに使い切らないといけない
油性塗料は「2液型」という種類の塗料が多く、塗るときには「硬化剤」も混ぜて使います。
硬化剤を入れるとその時点から少しずつ塗料が固まっていき、完全に固まると再利用できません。
そのため、2液型塗料は一度混ぜたものはほとんど保存できず、数時間~その日のうちに使い切らないといけないのです。
(1液型は余った塗料はそのまま次の日も使うことができます。)
作業をする職人や業者にとっては、2液型は塗料の無駄を出さないようにスケジュール管理などを慎重にしないといけません。
| 1液型 (水性塗料に多い) | 2液型 (油性塗料に多い) |
混ぜるもの | 主剤+希釈材 | 主剤+希釈材+硬化剤 |
メリット | ・希釈材を入れるだけで簡単に扱える ・余っても翌日に使用できる ・価格が安い | ・耐久性が高い ・様々な素材に塗装できる ・混ぜる前なら長期間保管できる |
デメリット | ・耐久性が2液型よりも劣る ・製造から半年~1年程度しか保存できない | ・混ぜた後は一定時間内に使い切らないといけない ・価格が高い |
④ 完全な艶消しができない
外壁の塗料は基本的に光沢感・艶が出ますが、中には艶を抑えた仕上がりにできる塗料もあります。
しかし油性塗料は完全な艶消し塗料がありません。
油性塗料の成分の関係で、どうしても若干の艶が出てしまうからです。
完全に艶のないマットな仕上がりにしたい方は、水性の艶消し塗料を選びましょう。
ただし、油性塗料でも「3分艶」「5分艶」「7分艶」などの、ある程度まで艶を抑えたタイプは選べます。
油性塗料を使いたいけど艶感も抑えたい方は、このような種類をお選びください。
■選べる艶の例 パーフェクトトップ:水性塗料
ファインパーフェクトトップ:油性塗料 出典:日本ペイント その塗料で選べる艶の度合いは、各塗料カタログやメーカーHPに記載があります。 上記は日本ペイントHPの例ですが、一番右の欄に記載があります。 水性塗料の「パーフェクトトップ」はつや消しがありますが、同シリーズの油性塗料「ファインパーフェクトトップ」は3分つやまでしかありません。 |
⑤ やや金額が高い
油性塗料は水性塗料よりもやや金額が高い傾向があります。
希釈剤として水ではなく有機溶剤を使用するためです。
また、2液型タイプの塗料も多いので硬化剤の価格や、それらを正確に計量、撹拌する手間などの人件費も増える可能性があります。
油性塗料は強い塗膜を作ってくれますが、その分費用が高くなってしまいます。
■費用差の例
| 種類 | メーカー設計価格 |
水性セラタイトSi | 水性 | 2,100円/m2 |
セラタイトSi | 油性 | 2,600円/m2 |
出典:SK化研
同じシリーズ製品でも油性のセラタイトSiの方が、メーカーの出している設計価格も高くなっています。
4章 失敗しない水性・油性の選び方
水性塗料と油性塗料はどちらも一長一短あり、こっち方が絶対に良い、と言えるものではありません。
結局のところ、戸建塗装でどちらを選ぶかは、皆さんご自身の「今回の塗装工事で何を重視するか」という考えに合っている方を選ぶのがベストです。
また、外壁以外の細かいパーツなどは素材によって使い分けをした方が良い場合もあります。
具体的に見ていきましょう。
4-1 機能性重視なら油性
「やるからには、とにかく耐久性が良い塗装をしたい」
「日中は仕事で不在にしているから、臭いが気になることはほとんどない」
という方は、油性塗料が適しています。
油性の中でも臭いや有害物質の少ない弱溶剤系塗料を選びましょう。
このほか、海沿いで塩害の心配があるお家なども、油性の強い塗膜でしっかり保護してあげるのがおすすめです。
また最近は、一番日光を浴びて劣化しやすい屋根は油性、生活空間に近い外壁は水性、というパターンも人気があります。
4-2 臭いが気になるなら水性
「小さい子供がいてやっぱりシンナーの影響が心配」
「敏感な方なので、できるだけ臭いを抑えたい」
という方は、水性塗料を選びましょう。
特に最近は、水性でも油性に匹敵するような耐久性、機能性の塗料も出てきました。
業者からカタログをもらったり説明を受けたりして、できるだけ性能の良い水性塗料を選ぶのがおすすめです。
健康や環境にも配慮しつつより良い塗装工事をしましょう。
4-3 その他素材による使い分け
外壁や屋根と一緒に塗装することの多い付帯部分(雨どいなど、お家の細かいパーツ)は、素材によって油性・水性を使い分けた方が良い場合があります。
見積を取った時には、各部材をどの塗料で塗るのか分かるように記載してもらいましょう。
油性が適している | ・鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属 ・つるつるした樹脂素材 |
水性が適している | ・軒天 ・ブロック塀、門など |
つるつるした密着しにくい素材→油性塗料
鉄、アルミなどの金属や、樹脂系の素材のものは、表面がつるっとしていて、水性塗料では剥がれやすくなってしまいます。
そのため、密着性の高い油性塗料の方が適しています。
※水性でも下塗りや下地処理によって塗装可能な塗料もあります。
■ひさし(霧よけ、天板)
お家の換気フードやひさしなどは特に金属が多いので要チェックです。
通気性が必要な場所→水性塗料
油性塗料は強靭な塗膜を作る分、通気性は悪くなってしまいます。
そのため、通気性・透湿性が必要な軒天やブロック塀などを塗装するときは、水性塗料を選びましょう。
■軒天
軒天は屋根裏の熱を逃がす場所でもあるので、通気性が必要です。
■ブロック塀
ブロック塀は地面から湿気を吸い込んでしまうので、通気性・透湿性がない塗料を使うと膨れや剥がれを起こしてしまいます。
>付帯物やブロック塀の塗装について詳しくはこちら
5章 主要メーカーおすすめ油性塗料5選
最後に、おすすめの油性塗料(弱溶剤系)をご紹介します。
どれも信頼できるメーカーから選びましたので、油性での塗装を検討する方はぜひ参考にしてくださいね。
【外壁用塗料】
■ファインパーフェクトトップ
出典:日本ペイント
ファインパーフェクトトップ | |
メーカー | 日本ペイント |
種類 | 弱溶剤1液型 ラジカル制御塗料 |
特徴 | ラジカル制御技術による高耐久、作業性の良さ |
日本ペイントで大ヒットしている「パーフェクトシリーズ」の、外壁用弱溶剤塗料です。
塗膜を劣化させるラジカルという物質の発生を抑える技術で、通常のシリコン塗料を超える耐久性を実現しています。
また、作業中に飛び散りにくい、1液性である、など作業する職人にとっても扱いやすいのが特徴です。
■RSゴールドF
RSゴールド F | |
メーカー | 関西ペイント |
種類 | 弱溶剤2液型 フッ素樹脂 |
特徴 | 色・光沢の持続、低汚染性、認定施工店のみの取り扱い |
国内最大手の関西ペイントの、弱溶剤フッ素塗料です。
色・光沢の持続性や汚れの着きにくさにこだわって作られており、美しい外観を長く保つことができる高グレード塗料となっています。
またこの塗料は、関西ペイントの認定を受けた信頼できる施工店しか扱えません。
この塗料を扱っている=高い技術・品質・サービスの会社、という目安のひとつとして、業者見極めの参考にもなります。
■ロイヤルセラクリヤー
出典:菊水化学工業
ロイヤルセラクリヤー | |
メーカー | 菊水化学工業 |
種類 | 弱溶剤2液型 シリコン樹脂 |
特徴 | オールマイティークリヤー塗料 |
菊水化学工業が販売するサイディングボード・磁器質タイル用のクリヤー塗料です。
通常の塗料と違って無色透明なので、今の外壁の柄を塗り潰さずにそのまま残して塗装することができます。
現状の外壁のデザインがお気に入りの方におすすめです。
【屋根用塗料】
■快適サーモF
出典:水谷ペイント
快適サーモF | |
メーカー | ジャパンカーボライン |
種類 | 弱溶剤2液型 フッ素樹脂 |
特徴 | 遮熱効果で室内を快適にする |
屋根用塗料で高い技術力をもつ有名メーカー・水谷ペイントの製品です。
遮熱効果付きの塗料なので、お部屋が涼しくなる、エアコンが効きやすくなることから、節電やエコにつながります。
夏場の二階が暑くて困っている、日当りが良いお家の方には非常におすすめです。
■セラスタールーフ
出典:ジャパンカーボライン
セラスタールーフ | |
メーカー | ジャパンカーボライン |
種類 | 弱溶剤2液型 無機塗料 |
特徴 | 最高グレードの超高耐久 |
世界的に有名な重防食塗料メーカー・カーボライン社の無機塗料です。
東京国際フォーラムや中部国際空港などにも採用されている実績から、耐久性も信頼できます。
通常の外壁用のセラスターウォール、多色サイディング用のクリヤースターウォール、屋根用のセラスタールーフとシリーズが揃っているのも選びやすいポイントです。
まとめ
油性塗料とは、希釈材にシンナー(有機溶剤)を使う塗料です。
水で希釈する水性塗料と比べて、耐久性などの機能が優れているのが特徴です。
■油性塗料の特徴
メリット | デメリット |
・ 耐久性が高い ・ 光沢感が出る ・ 密着性が高く様々な素材に塗装できる ・ 低い気温でも使用できる ・ 摩耗や薬品に強い | ・ シンナー臭が出る ・ 扱い・保管に注意が必要 ・ その日のうちに使い切らないといけない ・ 完全な艶消しができない ・ やや金額が高い |
水性塗料とは一長一短ですので、ご自身が「今回の塗装工事で何を重視するか」で選ぶのがベストです。
★機能性重視なら油性
★臭いが気になるなら水性
を選びましょう。
その他、金属や樹脂など密着性が悪い素材には油性が、軒天やブロック塀など通気性が必要な場所には水性が適しています。
各メーカーも様々な製品を販売していますので、おすすめ塗料も参考にしてみてくださいね。
大切なお家の塗料選びに、お役に立てていただければ幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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