海外のお家によく使われる洋瓦。
これから屋根材を選ばれる方も、すでに洋瓦のお家に住んでいる方も、
詳しい特徴などは把握されていないのではないでしょうか。
普段あまり気にしない屋根ですが、特徴やメンテナンス方法は知っておくことが大切です。
正しいメンテナンス知識を持っていれば、状態が良いまま長持ちさせることが出来ます。
本記事では、洋瓦の種類・特徴と劣化症状・メンテナンスについて解説していきます。
洋瓦はとても丈夫な屋根瓦ですが、一生メンテナンスが不要なわけではありません。
適切な時期に、適切なメンテナンスをして、長持ちさせていきましょう!
目次
1章 洋瓦とは
洋瓦とは、海外の住宅で用いられていた屋根材で、洋風の瓦全般を指します。
現在では日本でも製造され、様々な種類の洋瓦が販売されています。
この章では、洋瓦の種類と特徴を解説していきます。
1-1 形状の種類
洋瓦には主に2種類の形状があります。
形によって全体での印象が変わり、デザインにも違いが出ます。
F型
CERAM-F2(出典:新東株式会社)
平たい形で、凹凸が少ないです。
かっちりとしたイメージになり、明るい色でなくシックな色も人気です。
●実際に葺くと…
出典:新東株式会社
おしゃれかつ重厚感のある仕上がりになります。
S型
CERAM-21(出典:新東株式会社)
丸みを帯びた屋根でかわいらしい印象になります。
オレンジや黄色など明るい色が使用される場合が多いです。
●実際に葺くと…
出典:新東株式会社
明るく南国風の仕上がりになります。
★さらに混ぜ葺きでおしゃれに! 出典:新東株式会社 混ぜ葺きとは一つの屋根に数色の瓦を混ぜて葺く、人気のデザインです。 和瓦にはないデザインでおしゃれな仕上がりになります。 |
1-2 主原料の種類
洋瓦は、主原料が異なる4つの種類があります
主原料によって、耐久性や単価、メンテナンス時期も変わってきます。
間違ったメンテナンスを行なわないように主原料はチェックしておきましょう!
粘土瓦
粘土を練って焼いて作られた瓦です。
洋瓦の中でも最も多い瓦になります。
粘土で作られた瓦は、耐久性が高く塗装工事が必要ありません。
本記事では、基本的には粘土瓦の洋瓦について解説していきます。
セメント瓦
主原料がセメントで作られているセメント瓦は、現在は製造されていません。
表面は塗装で色付けされており、紫外線によって劣化します。
放っておくと色褪せや吸水による劣化が進むため、再塗装が必要となります。
>セメント瓦について詳しく知りたい方はこちら
モニエル瓦
主原料が「軟化コンクリート」で作られた屋根をモニエル瓦といいます。
セメント瓦の中に分類され、こちらも現在製造されていません。
モニエル瓦は“着色スラリー”と呼ばれる着色剤が塗られており、独特の風合いがあります。
モニエル瓦もセメント瓦同様、塗装メンテナンスが必要です。
>モニエル瓦について詳しく知りたい方はこちら
☆セメント瓦とモニエル瓦の見分け方 |
金属瓦
出典:株式会社カナメ
金属製で出来た洋瓦もあります。
耐久性も高く、他の洋瓦よりも軽いので地震にも強いです。
金属瓦では錆に強いガルバリウムやアルミなどを使用されていることが多いので、20~30年塗装が不要です。
※素材によっては塗装が必要になるケースもあります。
1-3 メリット・デメリット
洋瓦(粘土瓦)の主な特徴(メリット・デメリット)は以下の通りです。
安心して快適にお過ごしいただくためにどちらも把握しておきましょう。
4つのメリット
・耐久性が高い
…一般的な屋根材の寿命が20~30年に対し、洋瓦は40~60年と長寿命です。
・デザイン性が高い
…カラーバリエーションも多く、形も選べるので、おしゃれな仕上がりになります。
・通気性が良い
…瓦に少し隙間が空いているので湿気がこもらずに通気性が良いまま保つことができます。
・断熱性が高い
…断熱の効果があるので、夏でも快適に過ごすことが出来ます。
3つのデメリット
・施工費用が高い
…洋瓦はスレート屋根などと比べるとおよそ1.5~2倍ほど差があります。
・スレートなどと比べると重い
…洋瓦はスレートや軽量瓦などに比べると重さが2~3倍以上なので地震などの際に負担がかかりやすいです。
・廃板になる可能性が高い
…洋瓦は約10~15年ごとにデザインが変わるため廃板商品が多く存在します。例えば台風などの自然災害で瓦が一枚割れてしまった場合、その時に同じデザインの洋瓦が製造されておらず1枚だけ似た別の瓦になってしまう恐れがあります。
2章 メンテナンス時期と劣化症状
洋瓦のメンテナンス時期と劣化症状をご紹介します。
耐久性が高い洋瓦ですが、40~60年何もメンテナンスがいらないわけではありません。
何もせずに放置してしまうと、劣化に気付かずに後々大きな工事になってしまいます。
起こりうる劣化を把握しておきましょう。
2-1 時期は10年が目安
10年を過ぎると、屋根の細かい部分が劣化してきます。
例えば、瓦を支える漆喰などです▼
また、強風などで知らない間に瓦がズレてしまったり、割れてしまっている可能性もあります。
細かい部分が劣化・破損してしまうと、雨漏りの危険性も有ります。
築10年を過ぎたら定期的に点検して状態をチェックしましょう。
2-2 5つの劣化症状
実際にメンテナンスや修理が必要な劣化症状をご紹介します。
屋根点検をして、同じような状態になっていたらメンテナンスを行ないましょう。
漆喰の劣化
洋瓦は瓦自体の耐久性40~60年ですが、瓦をおさえる漆喰は約10~20年が寿命です。
漆喰が劣化してしまうと瓦がズレてしまったり、隙間から雨水が侵入してしまう恐れも。
屋根に悪影響を及ぼさないように、定期的なメンテナンスが必要になります。
瓦の割れ
瓦は耐久性が高いですが、物理的に衝撃が加わると割れてしまいます。
例えば
・台風で何か固いものがとんできた
・屋根の上のアンテナアが倒れた などのケースです。
瓦の割れは放っておくと周りの瓦のずれや雨漏りの原因になる場合もあります。
こちらも放っておかずに早期に修繕することが大切です。
瓦のずれ
台風や地震などで瓦がずれてしまうことがあります。
放っておくと、雨漏りしてしまう原因にもなりますので、早期発見・早期修繕が必要です。
雨漏り
洋瓦自体が劣化していなくても、雨漏りしてしまうことはあります。
なぜなら瓦の下には、ルーフィングという防水紙が敷いてあり、この防水紙が劣化して穴が開くとそこから雨が入ってしまうからです。
防水紙の寿命は20~30年ほどと言われていますが環境や屋根の状態でも変わっていきます。
例えば20年経っていなくても、瓦がズレたり割れたりしていて防水紙がむき出しになっている場合は劣化のスピードが速まり雨漏りすることもあります。
瓦の劣化
洋瓦も寿命が過ぎてしまうと、瓦の耐久性が落ちてしまい、強度が下がります。
最悪の場合は瓦がボロボロになって落ちてくることもあります。
この状態になったら、瓦を全て交換する葺き替え工事が必要です。
3章 メンテナンス方法と費用相場
洋瓦のメンテナンス方法と費用相場をレベル別にご紹介します。
洋瓦は瓦自体の耐久性が高いので、ちょっとしたメンテナンスで屋根全体を長持ちさせることが出来ます。
しかし、このちょっとしたメンテナンスを怠ると大規模な工事が必要になってしまいます。
小さい劣化を見逃さずに早めに対処していきましょう。
3-1 漆喰補修・瓦一部交換
漆喰補修=2,200~7,000円/m
漆喰の劣化が軽度で瓦もズレていない場合は詰め直しを行ないます。
詰め直しのみの作業であれば価格もおさえられます。
ただ、詰め直しの作業は瓦のずれを直すことが出来ないので、瓦がズレている場合は、瓦の積み直しを行ないましょう。
瓦一部交換=20,000~50,000円/枚
衝撃が原因で瓦が一部割れている場合は、瓦の一部交換を行ないましょう。
一枚だけでも割れたまま放置すると屋根のずれや雨漏りの原因になります。
※瓦が寿命を過ぎている場合は劣化による割れの可能性が高いので、一部ではなく全体の葺きかえをおすすめします。
3-2 積み直し(取り直し)
瓦がズレている場合は積み直しを行ないましょう。
積み直しは、瓦を取り外し、漆喰の補修などを行なった後に再度瓦を積みなおす作業です。
費用の相場は1m当たり8,500~19,000円です。
棟瓦の段数が多いほど費用が上がります。
3-3 葺き直し
瓦の寿命が来る前に防水紙や内部の木材が劣化してしまった場合は、瓦の葺き直しを行ないましょう。
葺き直しは、既存の瓦を取り外して、内部補修、防水紙の交換を行った後に既存の瓦を葺き直す作業です。
葺き直しの費用相場は1㎡あたり約8,000~15,000円です。
同じ瓦を使うので、葺きかえよりも費用はおさえられます。
ただし、瓦が劣化してしまっている場合にはおすすめできません。
3-4 葺き替え
瓦の寿命も近く、防水紙も劣化してしまってる場合は、葺きかえ工事をしましょう。
葺き替え工事は既存の瓦を撤去し、内部補修、防水紙を交換して新しい瓦を葺く工事です。
葺き替え工事の相場は1㎡あたり約15,000~20,000円です。
既存の瓦の撤去などで屋根の工事の中では一番費用が高くなります。
葺き直し工事になるか、葺き替え工事になるかは、防水紙の劣化の時期で変わってきます。
防水紙が早くに劣化してしまったら、瓦はそのままに葺き直しができます。
防水紙が長持ちすれば、劣化したときには葺き替え工事になることが多いです。
★セメント瓦・モニエル瓦は塗装 セメント瓦・モニエル瓦は築10~15年で塗装メンテナンスが必要です。 なぜなら紫外線によって表面の塗料が劣化し、防水性が無くなってしまうからです。 放っておくと、瓦が水を含んで脆くなり、割れや欠けなどの症状が出てしまいます。 長持ちさせるためにも、適切な時期に塗装メンテナンスを行ないましょう。
>セメント瓦塗装 >モニエル瓦塗装 |
4章 10年を過ぎたら年に一度の屋根点検
洋瓦の屋根を長持ちさせるために築10年を過ぎたら年に一度の定期点検を依頼しましょう。
洋瓦はもともと耐久性が高い屋根材ですが、屋根は下からでは見えないので、傷んでいても気付きにくい場所です。
「雨漏りしてないから大丈夫」と点検も何もしていないと、瓦の割れやズレなどを見逃して20年も経たずに葺き直し工事が必要になる場合があります。
部分的な修繕で長持ちさせられるように定期的に屋根の状態を確認し小さい症状を早期発見・早期修繕を行なっていきましょう。
まとめ
いかがでしたか。
洋瓦はデザイン性が高く人気の屋根材ですが、耐久性が高いことも洋瓦の長所の一つです。
しかし屋根はお家を自然から守ってくれている場所なので、寿命が来る前にちょっとした劣化症状が発生します。
劣化症状を見逃さないためにも定期的な点検を行い、気になる箇所が見つかったら大きな工事になる前に修繕してください。
無駄なお金をかけずにおしゃれな屋根を長持ちさせていきましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
◆瓦の寿命についてはこちらの記事もご覧ください。
【種類別】屋根瓦の寿命(=耐用年数)と長持ちさせるメンテナンス方法
◆瓦の漆喰についてはこちらの記事をご覧ください。
瓦の漆喰(しっくい)とは:補修すべき劣化症状と費用相場を徹底解説