我が家も築年数がだいぶ経ち、屋根の傷みが目立つ様に…
いざ塗装を、と考え屋根の点検してもらったところ、「屋根が寿命です」「塗装はできません」「葺き替えを検討して下さい」と言われている…
うちで使用している屋根は本当に寿命なの?
葺き替えする以外メンテナンスの方法はないの?
そう気になって調べているのではないでしょうか。
本来屋根は、お家を守る傘の役割をしています。
屋根の「寿命」が来ているとは、
・屋根の劣化が原因で雨漏りをしている
・今後、いつ雨漏りしてもおかしくない状態(本来のお家を守る機能を果たせない状態)
のことを指します。
そして寿命=耐用年数は屋根の種類によっておおよそ決まっています。
屋根の寿命を縮める原因には大雨、大雪、台風(自然災害)酷暑、酷寒など厳しい気候条件が関係しています。
通常と違った特殊な気候の後は特に注意が必要です。
ただ、現在の状態によっては適切なメンテナンスを行う事で寿命を延ばす事も出来ます。
そこで今回は、屋根の寿命(耐用年数)と種類別寿命の症状例、メンテナンスや寿命を延ばす方法まで詳しくご紹介していきます。
屋根の寿命を正しく知って、自宅に最適なメンテナンスを行って下さいね。
目次
1章 屋根の寿命と症状
屋根の寿命=耐用年数は、屋根の種類によって違います。
何が原材料で、どういう工程を経て作られた屋根なのか、によって耐久性に差が出るからです。
■屋根材ごとの耐用年数
【瓦屋根】 |
スレート瓦:20~30年 |
日本瓦:50~60年 |
セメント瓦:20~30年 |
【金属屋根】 |
ガルバリウム鋼板:20~30年 |
ジンカリウム鋼板:30~50年 |
トタン:30~50年 |
銅板:60~100年 出典:FIRE WORLD |
ステンレス:50~60年 出典:住宅購入体験談ブログ |
アルミ:50~60年 出典:住宅総合研究所 |
【アスファルト素材屋根】 |
アスファルトシングル:15~30年 |
【自然素材屋根】 |
茅葺き:15~20年 出典:KYOTO SIDE |
また、寿命を判断する症状もそれぞれ異なります。
ここでは屋根が寿命を迎えていることを示す傷みの症状を詳しくご紹介していきます。
ご自宅の屋根材と現状の傷みの状況を見比べて、判断材料にしてみましょう!
※特殊な気象条件(台風や強風など)ではどの屋根材も剥がれ、部分的な欠損が出る可能性があります。
ここでご紹介する症状はあくまで気象に関わらず起こる、経年劣化での症状と認識して下さい。
1-1 極端な割れ
屋根材の極端な割れは、スレート瓦・セメント瓦に見られる症状です。
”よく見ると分かる”程度の割れではなく、遠目で見ても分かるような大きなひび割れや破損、欠損している箇所が複数ある場合、寿命と言えます。
屋根材自体が脆くなり割れが複数箇所起きている状態のため、補修しても数年ももたず同じような傷みが出ます。
■スレート瓦 ひび割れ
■スレート瓦 複数の欠損
セメント瓦の場合、現在は製造されていない屋根材のため、部分的な割れや欠損であっても一枚だけの差し替えや部分補修は出来ません。
■セメント瓦 ひび割れ
■セメント瓦 欠損
1-2 建材表面の塗膜の剥離
表面の剥離は、主にスレート瓦に見られる症状です。
屋根材全体に塗膜の剥離が起こっている場合、寿命と言えます。
■スレート瓦 塗膜剥離
塗膜剥離は以前の塗装の品質が悪かった場合に見られる症状です。
塗装が機能を果たしていない=水を屋根材が吸って弱っている状態であるため、再塗装しても、もちません。
また、スレート自体が層状にパリパリと剥がれてくる(層状剥離)の状態が見られる場合、パミールと言う種類の屋根で、これも寿命を迎えています。
■パミールの層状剥離
★パミールとは 以前は住宅用の屋根材強度を高めるのに、アスベスト(石綿)が使われているのが一般的でした。 しかし人体に吸収されると起こる悪性中皮腫や肺がんなどの健康被害が問題視され、平成16年10月にアスベスト入り屋根の製造等が禁止されています。 この直後に製造されたノンアスベスト(アスベストが含まれていない)製品のいくつかは、アスベストの代替となる製品開発の技術や長期使用の検証が不十分であったため、現在のスレート系屋根材やアスベスト入りの屋根材と比較すると耐久性が弱いと考えられています。 簡単に言えば不良品です。パミールは、その代表的な製品です。 この症状が出たら塗装・補修も意味がなく通常の屋根としての機能が果たせない状態のため、寿命と判断しましょう。 |
1-3 凍害による割れ
凍害によっておこる割れは、日本瓦に見られる症状です。
凍害とは、小さなひび割れや隙間に入った水が中で凍って体積が増え結果、内側から建材を壊してしまう状態です。
瓦がボロボロになり割れが全体に出ている症状が見られる場合寿命です。
■凍害による割れ
寒暖差が激しい地域に多く見られ、この症状が出ると既に屋根としての機能を果たせない状態のため、全体の葺き替えが必要になります。
日本瓦は大きく分けて『釉薬瓦』と『いぶし瓦』がありますが、この症状が出るのは『いぶし瓦』です。
★いぶし瓦とは いぶし瓦は炭素膜で表面仕上げを行っている瓦です。 色は炭素膜の銀色のみで、経年で自然な色むらが出ます。 仕上がりにつやがなくマットな見た目が特徴で、高級感があります。
★釉薬瓦(ゆうやくがわら)とは 釉薬瓦は表面を釉薬で発色させて色を出している瓦です。 釉薬は陶器の食器などと同じで変色したり、剥がれたりすることはありません。キラキラとした艶が特徴です。 釉薬瓦は下地が傷まない限り繰り返しの補修でもたせることができます。 下地の補修を行う際も瓦を一度おろして補修を行い、再度同じ瓦を利用することが出来ます。 |
1-4 錆び、穴あき
錆びや穴があくというのは、金属屋根全般に見られる症状です。
屋根に錆が出ている、又は錆が出ている箇所の付近から穴が開き始めている場合、寿命だと言えます。
■錆
■穴あき
症状が表面のみ、の軽度なものであれば補修出来る可能性はありますが、内部まで傷みが侵食してボロボロになっている場合、補修は出来ません。
ガルバリウムなど他の金属屋根は、トタン屋根と比べて耐久性が高いイメージがありますが、「もらい錆び」や「電触」で傷んでしまうことが多くあります。
※もらい錆び …金属の屋根材自体に傷が無くても、錆びている他の金属が触れていると、その部分から錆が広がる現象。
※電蝕 …工事時に屋根材と違う異種金属のビスを使用したり、切断面のバリ(金属の屑)を適切に処理しなかったのが原因で見られる錆や穴あきなどの現象 違う種類の金属をそばに置かない、施工時に使用しない工夫が必要です。 |
1-5 屋根材本体の剥がれ・めくれ
屋根材の剥がれやめくれは、主にアスファルトシングルに見られる症状です。
屋根材全体、もしくは部分的に屋根材自体が広範囲に剥がれて無くなっている、ずれがひどく下地が見えている等の症状が出ている場合、寿命と言えます。
■剥がれ
■下地が見えている
アスファルトシングルは6mm程度の薄いシート状素材のため、耐風性能が低く下から巻き上げる強風によって剥がれや破れが起きる可能性があります。
1枚程度の剥がれや下地が見えていない状態であれば部分補修も出来ますが、広範囲の場合補修は難しいでしょう。
1-6 下地の劣化が原因の雨漏り
屋根の下地の劣化が原因で雨漏りが起きている場合、屋根の寿命と言えます。
これはどの屋根材の場合も起こり得ます。
■天井雨漏り
■屋根裏雨漏り
※屋根の下地とは 屋根を支える骨組み(垂木など)の上に、屋根本体を乗せるために使用する材料です。 主に①野地板(のじいた)と②ルーフィング(防水シート)のことを指します。 また③貫板(ぬきいた)という、屋根を葺いたあとに頂部の棟に被せる板金を留めるための下地もあります。
■住宅屋根の構造 出典:『建築知識』2014年11月号 |
雨漏りをしている=既に下地が傷んでいる=下地の補修・もしくは交換を行う必要がある=屋根を剥がさなければ直すことが出来ません。
ほとんどの屋根は一度剥がすと再利用できないため屋根の葺き替えが必要になります。
※釉薬瓦は再利用が可能です。
①野地板(のじいた)
野地板の耐用年数は30~40年です。
屋根の構造材である垂木(たるき)の上に載せ、屋根材と防水シートを固定し、支える重要な下地の部分です。
木製のため、経年劣化や湿気などによる傷みが年数の経過とともに徐々に出てきます。
■野地板の腐食
■野地板の貼り直し
木材としての強度を発揮できない状態(常に水分を含んでいる状態)になると補修や交換が必要です。
②ルーフィング(防水シート)
ルーフィングの耐用年数は30~40年です
屋根材から浸入した雨水を室内まで通さずに防水する重要な役割をもった、シート状の下地材です。
透湿性(湿気を逃がす性質)のあるルーフィングを使用していないと、湿気や雨水によって徐々に傷みが出ます。
■ボロボロの防水シート
■カビ(白い部分)が生えた防水シート
屋根を剥がした時にシート状の形を保てていない、ボロボロ、カビが生えている等の傷みが見られる場合は交換が必要です。
③貫板(ぬきいた)
貫板の耐用年数は15~20年です。
屋根を葺いたあとに棟抑え板金を取り付けるための、木材で出来た下地材です。
こちらも木材のため経年劣化で腐食し、板金を留めていた釘が緩くなって強風が原因で板金が飛ぶ、などの傷みが出始めます。
■棟抑え板金
■貫板の腐食・釘の抜け落ち
釘が抜け落ちている箇所がある場合は交換を行いましょう。
■飛んだ板金
放っておくと板金が強風などの際に飛ばされてしまい、雨水が内部のルーフィング、野地板に浸食し雨漏りに直結します。
1-7 素材が劣化して薄くなる・穴が開く
茅葺き屋根は、素材が劣化して薄くなる、部分的に穴が開いてしまった場合は寿命です。
■綺麗な状態
出典:丁子屋
■茅が痩せた状態
出典:丁子屋
・鳥に茅が食べられ穴が開いた
・茅が部分的にやせて隙間が開いてきている
などの症状が出始めると、茅葺き屋根は屋根材の下に下地がないので、雨が降るタイミングで即刻雨漏りにつながります。
2章 寿命を迎えたら葺き替えかカバー工事が必須
屋根が寿命を迎えたら、葺き替え工事かカバー工事を行いましょう。
それぞれの工事の内容と、工事が適した屋根の状態を解説します。
2-1 葺き替え工事をするべき状態
葺き替えとは、今現在使用している屋根材を撤去して、新しい屋根材に変える事を言います。
費用は100~250万円程度かかります。※お家の㎡数など条件によって変動します
お家の築年数や劣化状況によって、「一部屋根葺き替え工事」と「全面屋根葺き替え工事」の2種類があります。
現在使用している屋根材の種類やお家の屋根の形を問わず工事出来るのが特徴です。
葺き替え工事をするべき状態は以下の3点です。
症状が出ている場合、現状以上に傷みが進行する前になるべく早く葺き替え工事と補修を行って下さい。
①屋根が原因の雨漏りをしている
■雨漏りで発生したカビ
■雨漏りで腐食した軒
屋根が原因で雨漏りしている事が分かる場合、内部は確実に傷んでいます。
剥がして傷みの状態に合わせた補修、葺き替えが必要です。
②屋根の建材が脆くなっている
屋根の建材が脆くなっている場合、維持するために手を入れても応急処置にしかなりません。
雨漏りに繋がる恐れもあるので早めに葺き替えを行いましょう。
③屋根の下地が傷んでいる
■野地板が水を吸っている状態
屋根の下地が傷んでいる場合、これから結露や雨漏りなどを起こして傷む危険があります。
水気を含んだ状態ではカビなどが原因となる健康被害や、屋根材以外の構造体を傷める心配もあります。
下地が傷んでいることが分かったら早めに補修や張り替え、葺き替えを行いましょう。
>葺き替え工事について詳しくはこちら
2-2 カバー工事をするべき状態
カバー工事(重ね葺き)は、今現在使用している屋根材を撤去せず、そのままうえに防水シート(ルーフィング)と新しい屋根材をかぶせる工事方法のことです。
費用は80~200万円程度かかります。※お家の㎡数など条件によって変動します
どんな屋根でも工事が出来るわけではなく、通常、スレートやアスファルトシングルなど厚みがない屋根材の上に行います。
カバー工事は、比較的軽い建材を上にかぶせます。
そのため、現状のお家に必要以上の負荷をかけずに工事が出来、屋根を剥がさなくてすむので、廃材処理費がかからないのが魅力です。
カバー工事を行った方が良い状態は「屋根に傷みは出ているが下地は傷んでいない」状態です。
例えば雨漏りをしている場合は、屋根より下の内部が傷んでいる可能性高いので、一度剥がして内部の補修や張り替え、交換などの大工工事が必要となり、カバーができません。
■野地板の張り替え
また、下地が傷んでいて水分を含んでいる場合、新しい屋根材をのせて固定するためのビスを打ち込んでも、下地が緩くて打ち込めないため、下地の交換や補修を行わなければ工事自体ができません。
屋根材は寿命ですが、下地が傷んでいないときはカバー工事を行いましょう。
>カバー工事について詳しくはこちら
3章 屋根の寿命を延ばす方法
屋根の寿命を延ばす為には2つ方法があります。
1つめはとりあえず現状の状態からの進行を一時的に食い止める「補修」です。
2つめはしっかり手を入れる事で機能性を維持し長持ちさせる「修理・メンテナンス」です。
それぞれ内容をご紹介していきます。
3-1 応急処置–補修–
応急処置の方法は屋根材によって違います。
以下、屋根材ごとの方法です。
【スレート瓦、セメント瓦】 割れ:コーキングで割れている箇所を埋める、くっつける 剥離:剥離している塗膜を削り防水塗装を一部分かける |
【日本瓦、アスファルトシングル】 ビニールシートなどで傷んでいる箇所全体を覆い強風であおられないよう留める |
【金属屋根】 錆:表面を削り部分的に塗装をかける 穴あき:異種素材、もしくは同じ素材で穴を塞ぐ |
【茅葺き】 出典:ブログ禅 痩せている、穴が開いている箇所に新しい茅を差し込む |
あくまでも現状の傷みを進行させないように行う処置ですので、早めにきちんとした修理を行って心配事を解消しましょう。
3-2 延命措置–修理・メンテナンス–
延命措置も屋根材の種類によって違います。
以下、屋根材ごとの方法です。
【スレート瓦、セメント瓦、アスファルトシングル】 築後7年~10年を目処に塗装を行う。 |
【日本瓦】 築10年~漆喰の詰め直し、瓦の締め直しを行う。 |
【トタン】 築5年~10年を目処に錆止めの塗布、塗装を行う。 |
【ガルバリウム鋼板】 築15年~20年を目処に塗装を行う。 |
【その他金属屋根】 10年毎に点検、悪い箇所があれば補修。 |
【茅葺き】 出典:吉崎工務店 築10年過ぎ~部分的な葺き替え。 |
それぞれ、適切な時期にメンテナンスを行うことで屋根の寿命を延ばす事が出来ます。
表の時期を目処に早めにメンテナンスの計画を立てましょう。
まとめ
屋根の寿命は症状を確認することで分かります。
ご自宅の屋根は寿命が来ているのかどうか、照らし合わせて確認を行いましょう。
寿命の症状が見られる場合、葺き替え工事かカバー工事を検討しましょう。
また現状の状態から少しでも寿命を延ばしたい方は応急処置、補修を行いましょう。
屋根にはそれぞれ適切なメンテナンス時期があるので時期を把握し、屋根の寿命を少しでも長く出来るよう、メンテナンスを行って下さいね!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
◆屋根は普段あまり見えない分、お手入れが重要です。きちんと点検してメンテナンスしてあげましょう。
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