築10年前後で塗り替えが必要になるサイディングボード。
使う塗料の質はとても重要ですから、「どうやって塗料を選べばいい?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
サイディングに使える塗料は、各メーカーから多数の製品が発売されています。
非常に種類が多く、それぞれ性能も異なるので、何も知らずに1つを選ぼうとするのはとても大変です。
でも実は、ここで紹介する通りの方法で選べば、誰でも簡単に最適なサイディング塗料が分かるようになります。
本記事では、実際にたくさんのお客様の住宅点検と塗料提案を行ってきた筆者が、サイディング塗料選びの具体的な選定方法3ステップと注意点をお伝えします。
さらに後半では、筆者おすすめの国内メーカー塗料と、良い塗料提案をしてくれる業者の見極めポイントもまとめました。
本記事の内容を実践すれば、サイディングの塗料選びで失敗することはありません。
後悔しない外壁塗装ができるようになります。
大切なお家のメンテナンスのために、ぜひ最後までお読みくださいね。
1章 サイディング塗料の選び方3ステップ
サイディングボード用の塗料は数百種類以上ありますが、失敗しない塗料選びに必要なのは、たったの3ステップです。
これから見積もりを取る方も、すでに見積もりを取って塗料カタログを見比べている方も、どんなポイントを見て決めれば良いか分かるようになります。
順番に見ていきましょう。
① 金額・耐用年数で【グレード】を選ぶ
サイディングの塗装工事に使われる塗料のグレードは主に、ウレタン・シリコン・フッ素・無機の4種類です。
※アクリルは耐久性が低いため、塗り替えではほとんど使われません。
長く持つ塗料ほど金額も高くなります。
希望の年数と予算とを照らし合わせて、この中から1つを選びましょう。
この時のポイントは、金額よりも将来のライフサイクルを考えることです。
なぜなら、塗料の耐用年数=次回の塗り替え時期、だからです。
次の塗装工事を何年後にしたいかを考えて、それに合う塗料を選びましょう。
■塗料選びの例
子どもがまだ5歳。本人が望むなら大学までは行かせてあげたい。
→お金がかかる進学時期と被らないように、15年は持つフッ素にしよう。
息子夫婦から、あと10年しないうちに一緒に暮らそうと言われている。そうなったらこの家は売りに出す予定だ。
→最低限で済むようにウレタンにしよう。
★水性と油性について
塗料の中には「水性」と「油性」の違いもあります。
昔は「油性の方が絶対に耐久性が良い」と言われていましたが、近年は環境にやさしい水性塗料が世界的に推奨されるようになって、技術開発もすすみ、水性でも油性に劣らない性能の製品が増えました。
そのため、基本的には水性塗料で考え、状況に応じて油性を取り入れる、というのがおすすめです。
水性がおすすめ
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油性がおすすめ
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>水性・油性についてより詳しくはこちら
② 見た目の好みで【色柄・艶】を選ぶ
グレードが決まったら、お家の見た目・デザインをどうしたいか考えて、種類を絞りましょう。
仕上がりの見た目に関わる塗料の種類は、以下のようなものがあります。
■色柄のタイプ
着色(エナメル) | 一般的な不透明タイプの塗料。元の色を完全に塗り替えることができる。 |
クリヤー | 無色透明な塗料。サイディングの元の色柄をそのまま活かせる。 |
多色塗料 | 2色以上を重ねて使う特殊な塗料。サイディングの目地模様を活かすもの、石材調の質感に変えるものなどがある。 |
■艶のタイプ
艶あり | 塗装後に綺麗な光沢が出る塗料。一般的な塗料は基本的に艶あり。 |
艶なし(艶消し) | 光沢を抑えてマットな仕上がりになる塗料。完全な艶消しの他、5分艶、3分艶などの中間タイプもある。 |
それぞれ、ご自身はどんな仕上がりにしたいかイメージして、塗料を決めていきましょう。
特にサイディングはおしゃれな色柄のものが多いので、「新築時に気に入って選んだ柄をクリヤー塗料で残す」というお家も多いです。
まだよく分からない、イメージが湧かないという方は、以下のページでたくさんの事例を見てピンとくるものを見つけてみてくださいね。
③ お悩みに応じて【特殊機能】を選ぶ
最後に、塗装でお家のお悩みを改善できる特殊機能が必要かどうかを決めましょう。
塗料の中には、付加価値として様々な特殊機能を持ったものがあります。
代表的なのは遮熱、低汚染、防カビ坊藻などです。
遮熱塗料 | 日光を効率よく反射して建物にたまる熱を低減させる塗料。室内の温度が2~3度下がり、切電やエコ効果を期待できる。 日当たりが良い、夏場は2階が暑い、エアコンの効きを良くしたい方などにおすすめ。 |
低汚染塗料 | 汚れが付きにくく、またついても雨の時にセルフクリーニングしてくれる塗料。主に「親水性」や「光触媒」という性質によるもの。 排気ガス・土埃が多い立地、汚れが目立ちやすい白系の色にしたい方などにおすすめ。 |
防カビ・防藻塗料 | カビ、コケ、藻などが繁殖しにくい塗料。美観維持、シックハウス症候群の対策、建材の劣化を防ぐ効果が期待できる。 日当たりが悪い、湿気が多い立地の方などにおすすめ。 |
近所の交通量が多くて排気ガス汚れが付きやすいから低汚染塗料がいいかな…など、気になる点は皆さまそれぞれです。
塗装することで解決できるお悩みがあれば、ぜひ特殊機能付きの塗料を検討しましょう。
2章 危険!塗料選びの注意点
基本的には1章で紹介したステップの通りに選べば、塗料選びで大きな失敗することはありません。
ただサイディングのお家では、注意しなければいけない点が2つだけあります。
・弾性塗料はNG
・難付着サイディングは専用下塗りが必要
というものです。
誤った塗料選びをしてしまうと、せっかく塗ったのにすぐ剥がれる、などの不具合が起きやすくなりますので、ここだけはしっかり覚えておきましょう。
2-1 サイディングに弾性塗料はNG
サイディング外壁の塗装では、「弾性塗料」は避けてください。
この塗料を塗ると膨れ・剥がれなどの不具合が起こる可能性が高いからです。
弾性塗料とは、伸縮性が高くてひび割れを防いでくれる効果を持った塗料です。
ひび割れしやすいモルタル壁などには非常に適しています。
しかし、サイディングには向いていません。
なぜならサイディングは熱を溜めやすい建材で、弾性塗料は熱で柔らかくなる性質があることから、サイディング上で熱を受けた塗料がお餅のように膨らんでしまう恐れがあるからです。
せっかく塗装したのに膨れてきてしまっては意味がありませんよね。
弾性塗料はサイディングには不向きなので、万一業者がすすめてきても、使わないようにしましょう。
2-2 難付着サイディングには専用下塗りを使う
サイディング外壁の中には、特殊なコーティングがされた「難付着サイディング」と呼ばれるものがあります。
この難付着サイディングの場合には、専用の下塗り材を必ず使うようにしましょう。
難付着サイディングとは、2001年以降から販売され始めた「汚れが付きにくい」「色褪せしにくい」などの高機能コーティング加工が施された製品です。
綺麗が長持ちする優れた外壁材なのですが、「塗り替え時の塗料も密着しにくく、普通に塗ると塗膜が剥がれてしまう恐れがある」という問題が見つかりました。
そのため塗装時には、密着性の高い専用の下塗り材が必要です。
難付着サイディング対応かどうかは塗料カタログに記載がありますので、ご自宅がこの外壁だという方は、必ずチェックしておきましょう。
代表的なメーカーの対応塗料
関西ペイント:アレスダイナミックシーラーマイルド
日本ペイント:ファインパーフェクトシーラー
菊水化学工業:キクスイSPパワーシーラー
エスケー化研:エスケーハイブリッドシーラーEPO
など
カタログの例
出典:関西ペイント アレスダイナミックシーラーマイルド
難付着サイディング=無機、光触媒、親水性などのコーティングがされたボードのことです。
このような処理がされた建材にも塗装可、と書いてあればOKです。
>ご自宅が難付着サイディングかどうか判別したい、という方は以下のページをお読みください。
3章 プロ厳選おすすめ塗料5選
ここでは、外壁塗装のプロの目線から、サイディング塗装におすすめの塗料を具体的に5つご紹介します。
信頼できる国内メーカーの塗料から、それぞれに異なる特徴を持ったものを揃えました。
とにかくわからない、決められない、という方はぜひ参考にしてください!
3-1 王道スタンダード|アレスダイナミックTOP
出典:関西ペイント株式会社
グレード | シリコン |
水性/油性 | 水性 |
単価相場(㎡) | 2,300~3,500円 |
耐用年数 | 13~15年 |
特徴 | ラジカル制御による高い対候性、コストパフォーマンスの良さ |
アレスダイナミックTOPは、創業100年を超える大手・関西ペイントの塗料です。
「ラジカル制御」という、外壁劣化の原因物質ラジカルを抑制する機能を取り入れており、紫外線に対して強いのが特徴です。
これにより、数あるシリコン塗料の中でも上位の、約15年という高い耐久性を持っています。
■ラジカルの発生と活動を抑える機能
出典:関西ペイント株式会社
外壁が劣化する大きな原因の一つ「紫外線」を無害化し、塗膜劣化を引き起こすラジカルの発生を抑えます。
ちょうど良い耐久性とコストパフォーマンスの高さから、幅広い層の方におすすめできる、まさに王道の塗料です。
3-2 超高耐久|セラスターウォール
グレード | 無機 |
水性/油性 | 水性 |
単価相場(㎡) | 4,300~5,500円 |
耐用年数 | 20~25年 |
特徴 | 無機成分の配合率が高く、非常に強い塗膜。公共建築にも使われている実績がある。 |
セラスターウォールは、重防食塗料※の世界的メーカー「カーボライン社」の開発した無機塗料です。
※重防食塗料…簡単に塗り替えできない大型物件、橋、道路など向けの塗料。高い耐久性が求められる。
日本でも東京国際フォーラムや中部国際空港などにも使用実績があるメーカー塗料なので、特に信頼性が高く安心できます。
ただ、単価は少し高めです。価格よりも耐久性重視の方におすすめです。
■白系にしたい方にもおすすめ
白はどうしても汚れが目立ちやすい色ですが、耐久性のある無機塗料なら、長期間美しさを維持することができます。
3-3 元デザインを活かす|ロイヤルセラクリヤー
出典:菊水化学工業
グレード | シリコン |
水性/油性 | 油性 |
単価相場(㎡) | 2,300~3,500円 |
耐用年数 | 13~15年 |
特徴 | 無色透明なクリヤー塗料。難付着サイディングにも使用可。 |
ロイヤルセラクリヤーは、菊水化学工業の販売するサイディングボード・磁器質タイル用クリヤー塗料です。
新築時のサイディングの色柄をそのまま残すことができるため、現状のお家のデザインがお気に入りの方におすすめです。
また非常に密着性が高く、難付着サイディングにも塗ることができます。
■ロイヤルセラクリヤーの施工後
複雑なデザインも塗りつぶさずに活かせます。
塗装することで色艶も復活するので、まさに新築のような仕上がりになります。
ただし、クリヤー塗料は、色褪せやチョーキング、大きなひび割れなどが発生しているお家には使えません。
クリヤーを使いたい方は、築10年目までに塗装を検討しましょう。
→クリヤー塗装について詳しくはこちら
3-4 高級感のある仕上がりに|RSインプルーヴ
グレード | シリコン、フッ素 |
単価相場(㎡) | 6,000~11,000円 |
耐用年数 | 10~20年 |
特徴 | 複数色の塗装を重ねる特殊なシステム。単色塗装にはない複雑な質感、高級感が出せる。 |
※目地色・凸部色で使う塗料のグレードを選択できるため、それにより金額や耐用年数が変わります。
RSインプルーブは、関西ペイントが開発した高意匠塗装シリーズです。
サイディングの凹凸に合わせて複数の色を重ね塗りすることで、ワンランク上の美しい外壁に塗り替えることができます。
■実際に施工したサイディング
目地(細い凹んでいる部分)と凸部(広い長方形部分)で違う色を使い、さらに上に細かな模様を乗せていくことで、重厚でおしゃれな外観に仕上がります。
■塗り重ねのイメージ図
塗り重ねる模様、回数の違いによって4種類の仕様があり、それぞれカラーバリエーションも豊富です。
ただ、通常よりも工程が増える分、価格は高めになります。
これまでとはガラッと違う、高級感あるお家にしたい方におすすめです。
3-5 コケ・汚れ防止|ナノコンポジットW
出典:水谷ペイント
グレード | シリコン |
水性/油性 | 水性 |
単価相場(㎡) | 3,200~3,400円 |
耐用年数 | 10~12年 |
特徴 | 独自のナノテクノロジーによる対汚染性、対変色性など。同シリーズでフッ素タイプや防カビ防藻特化タイプもある。 |
ナノコンポジットWは、水谷ペイントを代表するロングセラー塗料です。
一番の特徴は、独自のナノテクノロジーによる汚れ・色褪せへの強さです。
汚れが目立ちやすい白系の外壁にしたい方や、大通りが近くて排気ガス汚れが気になる方などに、ぜひおすすめです。
また2004年の販売開始から15年以上お客様に選ばれ続けてきた実績があり、随時品質の改良をされている点でも、非常に安心できます。
■施工後の様子
セルフクリーニング機能により、汚れの付着を防いでくれます。
美観を長く維持したい方にはぜひおすすめしたい塗料です。
4章 最良の塗料提案・施工をしてくれる業者の見極め方
ここまで塗料について解説してきましたが、実は塗料選びと同じくらい重要なのが、業者選びです。
なぜなら、どんなに優れた塗料であっても、その性能が正しく発揮されるかどうかは業者次第だからです。
そもそも塗料があなたのお家のサイディングに合っていなかったり、適当な工事をされたりしたら、意味がありませんよね。
最後のこの章では、本当にあなたのお家に合った塗料提案と、適切な塗装工事をしてくれる業者を、見極めるポイントを3つに絞ってご紹介します。
最良の工事にするために、必ずチェックしてくださいね。
4-1 見積もり前の点検が丁寧
塗料の提案・見積もりは、必ず現地で詳細な点検をしたうえで作ってもらいましょう。
事前点検がなければ、あなたのお家のサイディングの種類・状態に合った塗料かどうかは判断できないからです。
たまにパッと外観を見ただけや図面を受け取っただけで見積もりを出す業者がいますが、これは絶対にNGです。
特にサイディングは、クリヤー塗装が可能かどうか、難付着サイディングかどうか、などの判断が必要になります。
点検なしでの塗料選びは将来不具合が起きたり、工事がはじまってから仕様変更が出て混乱したりする可能性がありますので注意してください。
しっかりした点検をすると、お家全体で60分程度は必要です。
まずはこのくらい丁寧に見てくれる業者かどうか確認しましょう。
4-2 複数メーカーの提案をくれる
見積もりを取るとき、「見比べたいので、いくつかのメーカーの塗料で提案をもらえますか?」と聞いてみましょう。
もしも「いや、おすすめがあるのでそれで出しますよ」「○○の塗料が一番ですからそれだけ見れば十分ですよ」などと断ってきたら要注意です。
特定のメーカーとしか取引していない、その商品だけ重点的に売りたいという業者側の都合がある、他のメーカーは使ったことがないから提案できない、という可能性があるからです。
それでは選択肢が狭まって、本当にあなたのお家に適した提案というのはしにくくなってしまいます。
優良な業者は、様々な塗料を扱った経験があるからこそ、より良いものを選んで提案してくれます。
サイディング用の塗料はたくさんあって選ぶのが大変だからこそ、業者も幅広い知識・経験があって多様な提案ができるところを選びましょう。
4-3 塗料メーカーからの保証が出る
業者は、「塗料メーカーからの保証がつく」ところを選びましょう。
メーカー保証とは、その業者の技術力、信頼性の証拠だからです。
実は、一般的には塗装にメーカー保証はありません。
どんなに良い塗料でも、現場の職人が正しく使わなければ本来の性能は発揮できないためです。
しかし優良業者の中には、メーカーから技術力や工事品質などを認められて、メーカー保証を出せるところもあります。
メーカー保証が出る=その業者がメーカーという第三者から信頼されている証拠、と言えます。
塗料選びにこだわったからには、当然その性能を100%発揮してもらいたいですよね。
そのためにはぜひ、メーカー保証が出る業者かどうかを確認しましょう。
※メーカーに認められた業者でも、全ての塗料にメーカー保証が付くわけではありませんのでご注意ください。 使いたい塗料でメーカー保証がつくのが一番ですが、もし対象外の塗料だったとしても、「メーカーから認められた塗装業者」であれば対象外の塗料も適切に取り扱うと考えられますので、業者の信頼度のポイントとして考えておくと良いでしょう。 |
まとめ
■サイディング塗料の選び方3ステップ
- ① 金額・耐用年数で【グレード】を選ぶ
- ② 見た目の好みで【色柄・艶】を選ぶ
- ③ お悩みに応じて【特殊機能】を選ぶ
■塗料選びの注意点
- ・サイディングに弾性塗料はNG
- ・難付着サイディングには専用下塗りを使う
■プロ厳選おすすめ塗料
- ・王道スタンダードなら⇒アレスダイナミックTOP
- ・超高耐久なら⇒セラスターウォール
- ・元デザインを活かすなら⇒ロイヤルセラクリヤー
- ・高級感のある仕上がりなら⇒RSインプルーヴ
- ・コケ・汚れ防止なら⇒ナノコンポジットW
■最良の塗料提案・施工をしてくれる業者の見極め方
- ・見積もり前の点検が丁寧
- ・複数メーカーの提案をくれる
- ・塗料メーカーからの保証が出る
塗装工事における塗料選びはとても重要です。
ご自宅のサイディングにぴったりの塗料をえらんで、最高の工事にしてくださいね。
最後までお読み下さりありがとうございました。
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