そろそろ屋根のメンテナンスをしなくては…とお思いのあなた。
しかし、業者から聞いた屋根の素材は耳慣れないもの。
カラーベスト?コロニアル?
うちは近所でもよくある「スレート」という屋根だと思っていたけど?
と、聞きなれない言葉に戸惑われているところかもしれません。
実は、カラーベストやコロニアルは、日本住宅の8割シェアを誇る、「スレート屋根」の仲間です。
では具体的にどういう物なのか、カラーベスト・コロニアルの特徴から、維持するために、どんなメンテナンス方法があるかまで、徹底ガイドしていきます。
お読みいただくことで、カラーベスト・コロニアルがどういう物かの初歩知識を得て、いつ・どんなメンテナンスをするのが良いかを判断できるようになります。
ご自宅に合った適切なメンテナンスができるようになるので、屋根をより良い状態で保てるように、知識を付けていきましょう。
目次
1章 カラーベスト・コロニアルとは
まずは、カラーベスト・コロニアルとは、一体どういうものなのかを知っていきましょう。
正しく理解することで、適切なメンテナンスにも繋がります。
1-1 カラーベスト・コロニアル・スレートは同じ物
「カラーベスト」・「コロニアル」は、セメントをベースにした屋根材「スレート(住宅屋根用化粧スレート)」の商品名の1つです。
カラーベストもコロニアルも、製造会社である「株式会社ケイミュー」がつけた名前が一般的に普及したために、スレートとは別物と思われがちですが、実質はスレートと同じ物です。
▲スレートの写真
▲カラーベストコロニアルクァッドの写真。
屋根の見た目も差はありません。
まとめると
■「スレート」…セメントを主成分に繊維素材をつなぎにして加工した屋根材。 ■「カラーベスト」…ケイミュー社製の平形スレート屋根材のシリーズ名。 ■「コロニアル」…カラーベストの商品(商標)名。 |
例えばiPhoneは「スマートフォン」の1種であり、「iPhoneシリーズ」は8や10、11と個々の「商品」がありますよね。そのようなイメージです。
厳密に言うと、カラーベストもコロニアルも、製造しているケイミュー社の前身、旧クボタ社の商品名でした。
のちに松下電工外装と合併し、現在のケイミュー社となった今も、家を建てられた頃に一般的だった「カラーベスト」や「コロニアル」という名称が使われることがあります。
少し紛らわしいかもしれませんが、カラーベスト、コロニアル=スレートと思っていただいて大丈夫です。
1-2 他の屋根材との比較
カラーベスト・コロニアルは、他の屋根材と比べて、
- ・初期費用
- ・減震効果
- ・カラーバリエーション
に優れています。
他の屋根材より安価で、屋根を葺く工事期間も短く済むため、多くの家で選ばれています。
またとても軽いので、建物自体に重みがかからず、地震が来ても揺れが少なく済みます。
カラーも他の屋根と比べるとバリエーションが豊富で、デザイン性も高いです。
また太陽光発電装置が設置可能なのも魅力です。
| 初期費用 | 減震効果 | カラー バリエーション | 耐用年数 |
カラーベスト・コロニアル | ◎ | ○ | ○ | 約20年~ |
和瓦(日本瓦) | × | × | × | 約50年 |
ガルバリウム鋼板 | △ | ◎ | ○ | 約40年 |
減震効果
カラーベスト、コロニアルは軽い屋根材なので、和瓦などに比べて建物への負荷が少なく済みます。
屋根が軽く、重心が低いままになるので、地震時は建物の揺れが最小限で抑えられます。
カラーバリエーション
▲カラーベスト・コロニアルクァッド(ケイミュー社)製品カタログより
▲同製品カタログより
ミックスカラーでより意匠性も高くなります。
2章 【チェック表】耐用年数とメンテナンス時期の目安
カラーベスト・コロニアルにも耐用年数や、メンテナンスをすべき時期があります。
耐用年数やメンテナンスが必要な症状を知っておくことで、ご自身がいつ頃メンテナンスをするかの目安にもなります。
2-1 耐用年数は20年が目安
カラーベスト・コロニアルの耐用年数は、約20年ほどです。
経年劣化(紫外線劣化やカビコケの繁殖など)で、屋根としての機能を果たせなくなってしまうからです。
ですが、適切なタイミングでのメンテナンスは耐用年数以上に屋根材を長持ちさせることができるので、10年に1度を目安に塗装をすると、20年以上もたせることができます。
雨漏りしていないから築20年だけど平気!と思っていても、実際には色褪せや割れなどが起きていることがほとんどです。
定期的なメンテナンスは品質も美観も守ってくれます。
2-2 メンテナンス時期判断チェック表
メンテナンスの時期が来ているかどうか、劣化症状をチェック表にまとめたので、ご自身の家の症状と見比べてみましょう。
劣化の症状は年数に関係なく、環境(日当たりの良し悪しや、気候など)に左右されることが多いです。
そのため、以下と同じ症状が1つでも出ていれば、もうメンテナンスの時期が来ていると言えます。
今の状態がどうなっているかを明確に知っておくことで、メンテナンス時期を判断しましょう。
※但し、ご自身で屋根を隅々までチェックして見比べるのは難しく危険なので、業者の点検を実施してもらった上で結果報告の写真をもらい、その上で見比べてみましょう。
| 症状 |
□ | 色あせ |
屋根の色が全体的に色あせて見えます。塗膜効果が切れて劣化し始めている証拠で、吸水しやすくなります。 おすすめメンテナンス:塗装工事 | |
□ | カビ・コケの繁殖 |
表面に黒ずみや茶色の汚れがあれば、カビやコケが繁殖しています。屋根自体が水分を吸収している証拠です。 おすすめメンテナンス:塗装、カバー工事 | |
□ | ひび割れ |
水の含みと渇きを繰り返した屋根材が歪みを起こし、ひび割れます。 おすすめメンテナンス:塗装、カバー工事 | |
□ | 欠け |
ひび割れをそのままにしておくと、欠けてしまいます。大きく欠けてしまうと補修ではなく、交換工事などになります。 おすすめメンテナンス:塗装、カバー工事 | |
□ | 反り |
水を含むようになった瓦が晴れた日に表面から乾くことで反り、二度と元には戻せません。また脆くなり、工事のために屋根に上ると割れる場合もあるため、交換やカバー工事が必要です。 おすすめメンテナンス:塗装、カバー、葺き替え工事 | |
番外編 | |
□ | 棟板金の釘抜け |
棟板金とは、屋根の頂点にある貫板のカバーです。金属製なので、熱膨張によって動きが出て、留めている釘が抜けてくるため、釘打ちをする必要があります。 おすすめメンテナンス:塗装工事 |
>チェック表をご自身で記入して確認できます。
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3章 メンテナンス方法は3種類
メンテナンスが必要と分かったら、その方法を選択しましょう。
メンテナンスの方法は3種類に分けられます。
今の屋根の状態と、何年くらい持たせたいかという観点で、ご自身に一番あったメンテナンスを選んでいきましょう。
3-1 【塗装工事】家の総合メンテナンス
塗装工事は、屋根だけでなく家全体の総合メンテナンスをして長持ちさせたい方におすすめです。
屋根の傷みが初期の劣化なら、塗装工事で修繕し、更に防水機能を復活させることができるからです。
防水機能があれば、水を吸い込まなくなるため、カラーベスト・コロニアルの劣化も遅らせることができます。
更には、外壁や雨樋など、至る所の塗装も同時に可能なため、一緒に行うと足場代も余分にかからずに済みます。
使用する塗料のランクにもよりますが、塗装することにより5~20年ほどの耐用年数がつくので、次の塗装の目安にしておくと良いでしょう。
【豆知識】
メーカーや施工店が出す保証年数と塗料の耐用年数は同じではない。
屋根は環境によって劣化が異なるため、メーカーや施工店が保証できる年数は、塗料の耐用年数より短いのが通常です。
日当たりの良い高台と平地の住宅街では、同じ条件で施工しても傷みの出方も異なります。
そのため、耐用年数≠保証年数と覚えておきましょう。
3-2 【カバー工事】屋根を長くきれいに保つ
カバー工事は、屋根の上から新しい防水紙と屋根材を葺く工事で、既存の屋根の上に新しい屋根ができるため、長くきれいな状態が保てます。
塗装よりも耐用年数が永くなるためです。
カラーベスト・コロニアルの瓦が薄い屋根材だからこそできるカバー工事は、塗装では対処できない劣化が出ている場合や、メンテナンス回数を減らしたい場合におすすめです。
カバーに使用する屋根材にもよりますが、耐用年数は20~40年ほどです。
3-3 【葺き替え工事】屋根が寿命なら最終手段
葺き替え工事は、屋根が著しく劣化して塗装もカバーもできない時や、雨漏りしてしまっている”寿命が来た”状態の時に実施します。
素材がダメになり、雨漏りまでいくと、根本からの解決が必要なためです。
そのため既存の屋根を撤去し、最初から屋根の葺き替えを行うと新品になり、屋根の耐用年数も長くなります。
葺き替えに使用する屋根材にもよりますが、耐用年数は20~40年ほどです。
☆屋根の一部補修だけでは、応急処置にすぎません。
釘が抜けていたり、瓦に割れがあったりしても、「雨漏りしていないから、せいぜい補修だけで大丈夫なのでは?」と思われている方は要注意!
釘の抜けや割れ部分があると、劣化が内部に広がり、木造部分が腐る・大きな雨漏りが起きるなどの原因になります。
どうしても都合で簡単な補修だけにしたい時でも、数年内には何らかのしっかりしたメンテナンスをする合図と思って計画を立てておきましょう。
▲棟板金の抜けた釘を打つ修繕
▲ひび割れ補修をしている様子
▲割れた瓦を1枚だけ差し替えた状態
4章 メンテナンスの費用相場
メンテナンスは工事内容によって幅があり、50~200万円ほどします。
塗装工事以上に手間が掛かるカバー工事や葺き替え工事の方が、より高くなるため金額に幅があります。
- ・今の屋根の状態
- ・予算
- ・耐用年数
- ・次のメンテナンスをいつ頃に考えるか
を軸に考えて、総合的にご自身に合った工事を選びましょう。
| 費用相場 | 耐用年数 |
塗装工事 | 50~70万円 | 5~20年 |
カバー工事 | 80~150万円 | 20~40年 |
葺き替え工事 | 100~200万円 | 20~40年 |
※相場は一般的な約30坪、屋根面積80~100㎡の概算
5章 まずは点検で、今の状態を知ろう!
ここまで劣化の症状からメンテナンス方法まで触れてきましたが、一番大切なのは、ご自宅のカラーベスト・コロニアルが今どんな状態なのかを知っておくことです。
色あせているだけ、劣化している、割れている…など、ご自身では見えない症状を点検で自覚して、どうするかを考えることが大切です。
自分では見えない屋根だからこそ、撮影した写真を印刷してもらったり、高所カメラや最新のドローン点検でリアルタイムに屋根をタブレットに映して見せてもらったりすることで、より鮮明に今の家の状態を知ることができます。
何か劣化症状がある場合は、専門業者の見解を聞いて、今後のメンテナンス計画に役立てていきましょう。
まとめ
カラーベスト、コロニアルについてお分かりいただけたでしょうか。
カラーベスト・コロニアルは、実はスレートと同じ物を指し、
■「スレート」…セメントを主成分に繊維素材をつなぎにして加工した屋根材。 ■「カラーベスト」…ケイミュー社製の平形スレート屋根材のシリーズ名。 ■「コロニアル(クァッド)」…カラーベストの商品(商標)名。 |
という呼びかたの違いがあります。
ケイミュー社(旧クボタ社)が製造したシリーズ名・商品名があまりに有名になったために、そのまま屋根の種類のように言われるようになったのが由来です。
またカラーベスト・コロニアルの特徴として
他の屋根材より
- ・初期費用
- ・減震効果
- ・カラーバリエーション
が優れています。
カラーベストやコロニアルは、耐用年数は何もしなければ約20年が目安です。
次のような症状が出ていたら、メンテナンスの時期のため、判断基準として知っておきましょう。
- ・色あせ
- ・カビ・コケの繁殖
- ・ひび割れ
- ・欠け
- ・反り
- ・棟板金の釘抜け
メンテナンス方法は3種類
- 1【塗装工事】…家の総合メンテナンス
- 2【カバー工事】…屋根を長くきれいに保つ
- 3【葺き替え工事】…屋根が寿命なら最終手段
現在の劣化状態と何年先まで持たせたいかで、メンテナンスを選びましょう。
なお、メンテナンスの費用相場は50~200万円で、詳細は以下の通りです。
| 費用相場 | 耐用年数 |
塗装工事 | 50~70万円 | 5~20年 |
カバー工事 | 80~150万円 | 20~40年 |
葺き替え工事 | 100~200万円 | 20~40年 |
※相場は一般的な約30坪、屋根面積80~100㎡の概算
いずれにしても、まずは点検で、今の状態を知ることが大事です。
ご自身では見えない部分の現状が、どうなっているかを知ることで次のメンテナンスを考えることができるため、専門業者に写真などで点検結果を報告してもらい、今後のメンテナンス計画に役立てていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
カラーベスト、コロニアル屋根の長い維持にぜひお役立てください。
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