「屋根工事の見積もりを取ったけど、この単価は妥当?」
思っていた金額と違っていて、そんな疑問をもった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
屋根のリフォームや修理工事には、決まった定価のようなものはありません。
工事業者やお家の状態、細かい工事の仕様、人件費、地域など様々な要因で変動するからです。
ただ、このように費用が分かりにくいのを良いことに、高額な単価で見積もりを作ってくる悪質な業者も存在します。
ひどい見積もりで損しないためには、だいたいの目安として単価相場をおさえておくことが重要です。
そこで本記事では、屋根工事の単価相場を工事種類ごとに解説します。
お手元の見積もり書をチェックしてみてくださいね。
後半では、お得に工事できる火災保険についてと、適正価格業者かどうか見極めるチェックポイントもまとめました。
屋根工事は、リフォームの中でも特に金額が大きい工事です。
失敗しないために、ぜひ最後までしっかりお読みくださいね。
目次
1章 屋根葺き替え工事の単価相場
屋根葺き替え工事とは、古い屋根を撤去して、新しい屋根に交換する工事です。
見積もり書の内容は主に、「撤去・処分」「本体葺き」「その他諸経費」からなります。
それぞれの単価は以下の通りです。
■既存屋根撤去・処分費
撤去・処分費 | ㎡単価 |
瓦 | 3,000~5,000円 |
スレート | 2,000~4,000円 |
金属、トタン | 1,200~3,000円 |
※スレート屋根がアスベストを含むものの場合、さらに追加で1,000~2,000円/㎡ほどかかります。
撤去・処分費は、今現在のお家の屋根の素材によって変わります。
ご自宅の屋根の種類を確認しましょう。
■本体葺き(新しい屋根の設置)
屋根本体葺き | ㎡単価 |
ガルバリウム鋼板 | 5,000~10,000円 |
アスファルトシングル | 5,000~8,500円 |
軽量瓦 | 6,000~12,000円 |
スレート | 4,500~8,000円 |
本体葺きの費用は、新しく使う屋根材に何を選ぶかで変わります。
耐久性の高いガルバリウム鋼板やアスファルトシングルが特に人気です。
■その他諸経費
葺き替えの諸経費 | ㎡単価 |
足場代 | 800~1,100円 |
野地板補修・交換 | 2,000~4,000円 |
ルーフィング | 500~1,500円 |
棟板金設置 | 3,000~5,000円 |
各所板金処理 | 1,500~4,000円 |
雪止め設置 | 1,500~3,000円 |
諸経費、管理費など | 30,000~50,000円/一式 |
※板金や雪止めは、仕様によっては行わない場合もあります。
その他諸経費は、工事をするための足場架設や、屋根の下の下地材の補強、細かいパーツの設置などが含まれます。
このような細かい作業をわざと省いた安い見積もりで契約して、あとから追加費用を請求する悪徳業者もいますので、見積もりの項目もしっかりチェックしておきましょう。
新しくする屋根材の特徴や、諸経費の詳しい内容などを知りたい方は、以下のページをご覧ください。
2章 屋根カバー工事の単価相場
屋根カバー工事とは、主にスレート屋根に行うもので、既存屋根を撤去せず上にそのまま新しい屋根を重ね葺きする工事です。
見積もり内容は「本体葺き」と「その他諸経費」からなります。
葺き替え工事と比べて撤去・処分がない分が安く済んでコストパフォーマンスが良いため、近年人気のある工事です。
■本体葺き(新しい屋根の設置)
屋根本体葺き | ㎡単価 |
ガルバリウム鋼板 | 5,000~10,000円 |
アスファルトシングル | 5,000~8,500円 |
軽量瓦 | 6,000~12,000円 |
本体葺きの費用は、新しく使う屋根材に何を選ぶかで変わります。
カバー工事をすると屋根の重さが増えるので、非常に軽いガルバリウム鋼板やアスファルトシングルの人気が高いです。
■その他諸経費
葺き替えの諸経費 | 単価 |
足場代 | 800~1,100円/㎡ |
下地補修 | 500~2,000円/㎡ |
ルーフィング | 500~1,500円/㎡ |
既存棟板金、金具等撤去・処分 | 1,000~3,000円/m |
棟板金設置 | 3,000~5,000円 |
各所板金処理 | 1,500~4,000円 |
雪止め設置 | 1,500~3,000円 |
諸経費、管理費など | 30,000~50,000円/一式 |
※板金や雪止めは、仕様によっては行わない場合もあります。
その他諸経費は、工事をするための足場架設や、新しいルーフィング(防水シート)、細かいパーツの設置などが含まれます。
またカバーのときは、既存の屋根本体はそのままですが、棟板金(屋根の頂上などにある鉄板)や雪止め金具などの突起物は撤去が必要ですので、注意しましょう。
新しくする屋根材の特徴や、諸経費の詳しい内容などを知りたい方は、以下のページをご覧ください。
3章 屋根塗装工事の単価相場
屋根塗装工事は、紫外線や経年劣化から素材を守るために塗料を塗って防水する工事です。
「塗装」と「その他諸経費」からなります。
スレート、トタン、金属屋根のほか、モニエル瓦やセメント瓦という一部の瓦屋根のメンテナンスとして行われます。
■塗装
塗料の種類 | 平米単価 | 耐用年数 |
ウレタン | 1,700~2,500/㎡ | 8~10年 |
シリコン | 2,300~3,500/㎡ | 10~15年 |
フッ素 | 3,500~4,800/㎡ | 15~20年 |
無機 | 4,300~5,500/㎡ | 20~25年 |
※一般的な3回塗り仕様の場合の概算。
※屋根がセメント瓦、モニエル瓦(洋瓦)の場合は単価が300~500円ほど上がる場合があります。
塗装の費用は、使う塗料の種類によって大きく変わります。
耐用年数の長い塗料ほど単価も高くなります。
■その他諸経費
塗装の諸経費 | 単価 |
足場代 | 800~1,100円/㎡ |
高圧洗浄 | 200~300円/㎡ |
養生 | 300~500円/㎡ |
タスペーサー・縁切り | 300~800円/㎡ |
棟板金釘打ち・コーキング処理 | 15,000~40,000円/棟 |
諸経費、管理費など | 30,000~50,000円/一式 |
※タスペーサーはスレート屋根の場合のみ。
その他の経費としては、足場架設、塗る前に汚れを落とす高圧洗浄のほか、スレート屋根の場合は雨漏り防止のタスペーサー・縁切り作業も必要です。
また、屋根の頂上などにある棟板金から釘が抜けていた場合は、打ち込み直すなどの細かい処理も行います。
屋根塗装の具体的な見積例や工事内容については、以下のページをご覧ください。
4章 その他修理・補修工事の単価相場
屋根工事には、これまで紹介した屋根全体の工事だけでなく、問題のある箇所の修理や部分補修のような小さめの工事もあります。
屋根の種類によって修理方法も費用も異なりますので、それぞれ分けて解説します。
ご自宅の屋根の項目を参考にしてくださいね。
4-1 瓦
■瓦修理の単価
差し替え | 1~5万円/枚 |
漆喰補修 | 4,000~7,000円/m |
棟積み直し | 10,000~16,000円/m |
瓦の差し替え
破損、ひび割れなどがあった場合はそこだけ交換ができます。
瓦自体の価格や作業の手間で費用が左右されます。
ご自宅に予備の瓦がある方はそれを使いましょう。
無い場合は取り寄せが必要なので、業者にご相談ください。
漆喰補修
頂上の棟瓦(むねがわら)を固定している漆喰は、15年ほど経つとひび割れやはがれが起きてきます。
補修として、漆喰の詰め直し・塗り直しを行います。
棟積み直し
棟積み直しとは、棟瓦を一度すべて取り外し、もう一度組み直す工事です。
漆喰の劣化や地震などの揺れで棟瓦が歪んだりズレたりしていた場合に行います。
4-2 スレート
■スレート修理の単価
ひび補修 | 5,000円~/箇所 |
差し替え | 1~3万円/枚 |
棟板金交換 | 5,000~10,000円/m |
ひび補修
ひび割れの修理は、主にコーキング材で行います。
欠け落ちてしまった場所も、破片が残っていればくっつけることができます。
スレートの差し替え
衝撃などで大きく破損していた場合、そこだけ交換することもできます。
屋根材自体の価格や作業の手間で費用が左右されます。
棟板金の交換
屋根の頂上にある棟板金(むねばんきん)が風にあおられて変形してしまった、飛ばされてしまったなどの場合は、交換工事となります。
中の板を木材ではなく樹脂製(腐らない)に変えることも可能です。
4-3 トタン・金属
■トタン・金属屋根修理の単価
部分張替え | 5,000~8,000円/㎡ |
棟板金交換 | 5,000~10,000円/m |
※使用する屋根材の種類やグレードによって金額は変動します。
部分張替え
傷んでいるのがごく一部であれば、部分的に修理もできます。
錆びによる穴あきや、風によるめくれには、そこだけを張り替える工事も可能か業者に確認しましょう。
棟板金交換
金属屋根も頂上には抑えの板金が乗っています。
台風などで飛ばされたときや、錆がひどくなっていたときは、交換をします。
5章 単価が相場より高くなるケース
ここまで屋根工事の単価をご紹介してきましたが、お家によっては単価が相場よりも高くなってしまう場合があります。
業者の見積もり単価が少し高かったとき、きちんと理由があって加算している可能性もありますので、担当者に聞いておきましょう。
また逆に、以下のケースにあてはまるのに通常通りの単価だと、業者が忘れている、気づいていなかった、ということもあります。
そうすると、後からやっぱり費用が足りなくなって、追加費用を請求されてしまうこともあります。
「うちはこれに当てはまっていますが大丈夫ですか?」と確認しておくと安心ですよ。
5-1 3階建て
3階建てのお家は足場代が200~300円/㎡程度高くなる場合があります。
高さがある分、パイプの組み方などをより強固なものにしなければならないため、それだけの資材や手間がかかるからです。
2階建てと同じまま上に伸ばすというだけではできません。
安全な足場にするためには必要な費用ですので、ご自宅が3階建てだという方は念頭に置いておきましょう。
5-2 高所、狭所の立地
建物の立地条件によっても、足場の単価が高くなることがあります。
例えば、隣家との間隔が非常に狭いお家や、切り立った高い場所に建っているお家です。
このように足場資材の運搬や組み立てが非常に難しくて時間・手間がかかる状況の場合、足場単価が100~300円/㎡ほど高くなることがあります。
■一部の敷地が狭いお家
通常よりも資材搬入や組み立てに時間がかかるため、通常よりも職人の作業費が必要です。
■高所に建っているお家
階段を上ったところにあるお家など高低差がある場合も、運搬や組み立てに手間がかかるため、単価が高くなります。
5-3 急こう配の屋根
傾きが急な屋根の場合も費用が高くなることが多いです。
安全作業のための「屋根足場」を追加で設置する必要があるからです。
■屋根足場
急勾配の屋根でも安全に作業するための足場です。
相場で800~1,000円/㎡ほど追加費用がかかります。
5~ 6寸勾配※以上の傾斜のとき、屋根足場をかける場合が多いです。
※屋根の勾配の呼び方 |
このように、屋根の勾配によっても費用差が出てきますので、覚えておきましょう。
5-4 建材の劣化が激しい
これは主に塗装塗装のときで、屋根の劣化が激しい場合は塗装単価が上がる場合があります。
劣化に合わせて下塗り材を変えたり、塗り回数を増やしたりする必要があるからです。
屋根は日光の紫外線や雨風を常に受け続けるので、劣化が進みやすいです。
そのため塗料メーカーも、劣化が激しい屋根には通常とは別の仕様を指定していることがあります。
例:ルーフピアニ(水谷ペイント)の場合 出典:水谷ペイント カタログの仕様書部分に、『基材表面が著しく劣化した箇所は、水系パワーシーラーⅡを2回塗りしてください。』と書いてあります。 通常は下塗り1回+上塗り2回=計3回塗りなのですが、屋根が傷んでいた場合は下塗りが2回に増えて計4回塗りになる、ということです。 こうなると、下塗りの分(600~1,000円/㎡)単価も高くなります。 |
この他にも、『15年以上未塗装の場合』『吸い込みが激しい場合』などの書き方で仕様が定められていることがあります。
良い品質の工事をするためには各塗料の仕様を守る必要がありますので、こういった理由で単価が変わることもあると知っておきましょう。
6章 火災保険を活用してお得にしよう!
屋根工事をしようと思ったきっかけが台風や雪などの自然災害だった場合、火災保険が適用できる可能性があります。
保険の中には、火事以外の自然災害も対応できる「風災補償」が含まれていることが多いからです。
屋根の修理はできるだけはやく対応したいところですが、費用面で不安な方も多いと思います。
保険が適用できれば少しでも負担を減らせますので、修理をする前に、ぜひ加入している保険内容をご確認ください。
※風災保険がついていない場合は適用できません。
条件、貰える金額も保険によって異なりますので、詳しくは各保険会社さんに問い合わせましょう。
>屋根修理の保険申請のやり方についてはこちら
7章 適正価格業者を見分ける5つのチェックポイント
屋根工事で損をしないために最も重要なのは“業者選び”です。
なぜなら、工事費用も品質も、すべて業者次第でバラバラだからです。
中には、早く直したいというお客様の心理に付け込んで高額な提案をしてくる業者もいますし、安いと思ったら見えないところで手抜き工事をされていた…ということもあります。
見積もり書にある単価だけでは、業者の良し悪しを判断するのは難しいのです。
ここでは最後に、信頼できる業者の見極めポイントを解説します。
適正価格できちんとした工事を行ってくれる業者を選んで、安心して屋根工事ができるようにしましょう。
7-1 点検内容を写真付きで丁寧に報告してくれる
屋根点検時に細かく写真を撮ってくれ、その写真を見ながら、どこがどうなっていたのかきちんと報告してくれる業者を選びましょう。
どんな工事内容になるのかを、あなた自身が把握できるためです。
見積り段階で屋根に上って点検してもらうのは大前提です(点検なしは論外)。
きちんと写真を撮ってもらうことで、「はじめは気づかなかった」という追加請求や、急な契約内容の変更を防ぐことができます。
屋根工事は普段見えないところで行うことがほとんどです。
写真チェックで、本当に工事内容であっているのか、そもそも必要ない工事が入れられていないかを落ち着いて判断しましょう。
7-2 見積書の項目が細分化されている
見積書は、具体的な工事内容の項目がしっかり分かれていて、数量(枚数、㎡数など)、使う材料なども明記している業者を選びましょう。
どんな材料をどのくらい使って、ということが分からないと、金額をごまかされやすいからです。
逆に、「屋根修理工事 一式」などと曖昧に書かれている業者は避けましょう。
良い例:
工事の項目が細かく書かれていて、それぞれの単価が明確です。
悪い例:
どんな工事にどれくらいの費用がかかるのか、何もわかりません。
希望していた工事が行われなかったり、追加費用の請求をされたりする可能性があるので、このような見積もりの業者は避けましょう。
7-3 大幅な値引きがない
見積りから50万円以上の大きな値引きは、まず疑いを持つようにしましょう。
完全に赤字で工事してくれる業者はまず存在しないからです。
屋根業者も、材料費や職人の人件費を支払わなければなりません。
それらを差し引いて出た利益で、会社の維持費や全社員の給料をまかないます。
大幅な値引きをしている(それでもまだ利益は出る)ということは、元々にどれだけの利益を上乗せしていたのか…ということになってしまいます。
値引きは嬉しいものですが、すぐに飛びつくのは危険です。
「なぜその値引きができるのか」をきちんと説明してもらいましょう。
(例:近所で同一の工事があるため同じ材料をまとめて発注できる、会社でやっているキャンペーンを適用できる、等)
7-4 大小様々な屋根工事の実績がある
屋根工事を依頼するときは、軽補修から大掛かりな葺き替えまで、多様な工事を行なっている業者を選びましょう。
経験があるからこそ、あなたのお家に最適な工事方法を選んでくれるからです。
逆に、工事経験が少なかったり、特定の得意な工事しかやらない業者だったりすると、
・本当は不要な、大がかりな修理しか提案されない
・本当はしっかり直さないと意味が無いのに、軽補修で済まされる
ということが起こり得ます。
どんな工事が適しているかは、お家ごとに異なります。
あなたのお家の現状に合った適切な屋根工事をしてもらうためにも、担当者に聞いたりホームページを見たりして、実績が多い業者を選びましょう。
7-5 自社施工できる職人がいる
屋根修理は、社内に職人がいる地元の業者を選びましょう。
大手リフォームチェーンやハウスメーカーに依頼すると“中間マージン”が発生して、費用が割高になるからです。
社内に職人がいない会社に頼んでも、実際に工事に来るのは地元の下請け業者です。
同じ工事内容なら下請けを使わない地元の専門業者に依頼した方が、お得に工事できます。
また、間に入る会社がないほうが、「契約時の説明と違う」「言ったことが伝わっていない」などのトラブルも少なくできます。
金額が大きくなりがちな屋根のことだからこそ、下請けを使っていない地元業者を選びましょう。
まとめ
屋根工事の全体費用はお家によって異なりますが、1㎡あたりの単価はだいたいの目安になります。
どんな工事をするかによってそれぞれ単価も違いますので、お手元の見積もり書と一緒にチェックしてみましょう。
また、自然災害がきっかけで屋根工事をする場合は、火災保険が使える可能性が高いです。
ぜひ確認してみてくださいね。
ただ、単価だけで業者の善し悪しは判断できません。
適正価格業者を見極めるチェックポイントは以下の5つです。
- ・点検内容を写真付きで丁寧に報告してくれる
- ・見積書の項目が細分化されている
- ・大幅な値引きがない
- ・大小様々な屋根工事の実績がある
- ・自社施工できる職人がいる
屋根工事は金額が高くなることが多いです。
単価相場のチェックと業者選びをしっかり行うことで、損をせずに安心して工事ができるようになってくださいね。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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