健康被害などのニュースでよく耳にする“アスベスト”。
我が家のスレート屋根は、アスベストは入っていないだろうか…
そもそもアスベスト屋根の危険度はどのくらいなのだろう…
と不安に思われている方も多いのではないでしょうか。
アスベスト(石綿)は、耐久性が高いのに安価という非常に優れた素材で、かつては建設資材にも広く使われていました。
健康被害の危険が報告されて、2006年に製造が全面禁止されましたが、それ以前の建物の多くにはアスベストが使われているとされています。
特に戸建て住宅で一般的なスレート屋根にもよく使われていましたから、決して他人事ではありません。
そこでこの記事では、ご自宅のスレート屋根がアスベスト入りかどうか見分ける方法と、実際のその危険性を解説します。
まずは慌てず、ご自宅の状況を判断しましょう。
それから、アスベスト入りスレートの対処法として、おすすめのリフォーム工事についてもご紹介します。
依頼する業者選びの注意点も踏まえて、適切な対応ができるようになりましょう。
大切なお家、そしてご家族の健康に関わる問題です。
ぜひ最後までじっくりお読みくださいね。
目次
1章 アスベスト入りスレート屋根の判別方法
まずはご自宅のスレートがアスベスト入りかどうか確認をしましょう。
ただ、見分け方は3つご紹介しますが、一つ当てはまったからといって確実にそうだとは言い切れません。
できる限りすべて確認してみて、最終判断は業者に点検してもらって確認してください。
1-1 2006年以前に製造された屋根材
アスベスト(石綿)入りの製品は、2006年に製造・輸入などが完全禁止されました。
これ以前に作られた屋根の場合、アスベストが含まれている可能性があります。
ただし、2006年以前だからといって100%アスベスト入りというわけではありません。
実際には多くの建材メーカーが、1990年代頃からノンアスベストの製品を販売しているからです。
2006年以前、というのはあくまで「アスベスト入りの可能性がある」という目安です。
年数だけでは判別できませんので、2006年以前のお家の方は次以降のチェックも行いましょう。
1-2 築15年以上でもひび割れ、欠けがほとんどない
アスベストはとても粘り強く頑丈で、耐久性が高い建材です。
そのため、アスベスト入りの屋根は10年20年と過ぎても経年劣化でのひび割れをほとんどしていないことが多いです。
業者に屋根点検をしてもらい、劣化状態を確認してもらいましょう。
■1999年築・アスベスト入りスレート
2016年、築17年目に点検した写真です。
表面にカビ・コケは付着しているものの、ひび割れはありませんでした。
築年数も合わせて考えると、アスベスト入りの可能性が高いです。
逆に、ノンアスベストになってからの屋根は、代わりの素材を使っていますがアスベストほどの強度はなかなか出せず、10年をすぎると傷みが目立ってきます。
■2005年築・ノンアスベストスレート
全体に小さなひび割れが出始めています。
2006年以前に建てられていますが、2000年頃から既に販売されていたノンアスベスト屋根と推定できます。
※ノンアスベスト切り替え時期のスレートに注意!
ノンアスベストに切り替わった直後(2000年代前半)の製品の一部は、強度不足などの不具合が多数報告されています。
一般的な塗装によるメンテナンスが適さないことがありますので、この時期の屋根の方はご注意ください。
>詳しくはこちら
1-3 メーカーが公表している商品名・品番が該当
各建材メーカーや国土交通省のWebサイトでは、過去に製造されたアスベスト含有建材の名前や品番などを調べることができます。
ご自宅の屋根の品名が分かる方は、こちらで検索してチェックしてみましょう。
商品名のほか、メーカー名でも検索できます。
その建材の製造時期や含有量などがわかります。
スレートの品名などは主に設計図面に記載があります。
ただ、図面と実際に使われている屋根が異なる場合も意外と多いので、ご注意ください。
建築現場では、急な仕様変更や現場判断での変更も多く、図面が100%正しいとは言い切れないのが現状です。
一番確実なのは、屋根を1枚剥がして内側や裏面などに刻印されている品番をチェックすることですが、これは手間もお金もかかってしまいます。
実際には1-1~1-3を総合的に見て、判断をしましょう。
2章 実は、解体しない限りはほぼ無害
「アスベスト入りの屋根=このままじゃ危険!!すぐにどうにかしないと!!」
と非常に心配されている方もいるかもしれません。
しかし実際には、解体や破砕をしない限り、スレート屋根からアスベストが飛散する心配はほとんどありません。
スレート屋根に使われるアスベストはセメントに混ぜこまれてがっちり固定されており、飛散しにくい状態だからです。
また、万が一割れたりしても、屋根は外にあるもののため、人がすぐに吸い込む危険は非常に少ないです。
アスベストは“石綿”の名の通り細くて小さい繊維状のもので、吸い込むことで人体に悪影響が出ます。
そのため、吸い込みやすさ(飛散しやすさ)によって危険度が分かれていますが、スレートは危険度が最も低い「レベル3」です。
発塵性 (飛散しやすい危険度) |
|
レベル3 発塵性が比較的低い =人が吸い込む危険性は低い | その他石綿含有建材(成形板など)
など |
レベル2 発塵性が高い =人が吸い込む危険がややある | 保温材・耐火被覆材・断熱材
など |
レベル1 発塵性が著しく高い =人が吸い込む危険性が非常に高い! | 吹付け材
など |
お家の屋根がアスベスト入りだったからといって、「もう有害物質を吸い込んでいるかも…」という心配は要りませんので、どうかご安心ください。
悪徳業者が「すぐ撤去しないと大変なことに!」などと脅しのように言ってきても相手にせず、冷静に対処しましょう。
それでは次の章で、アスベスト屋根への対処としてのリフォーム方法をご紹介します。
3章 リフォーム方法3種のオススメ度
アスベスト含有スレートに対するリフォームとしては 葺き替え/カバー/塗装 の3パターンあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、どれを選ぶかは皆様の状況やお考え次第です。
ここでは将来のことも踏まえたおすすめ順に紹介していきますので、うちはこれかな、というものを選択しましょう。
※費用は2階建て80~100㎡の場合の概算
★★★ カバー工法
メリット
・工事による飛散の心配がない
・20年以上もつ、耐久性の高い屋根に変えることができる
デメリット
・屋根の下地が劣化している、雨漏りしている場合は工事できない
・屋根が重くなり、建物に負荷がかかる
屋根カバー工事は、今の屋根の上に新しい屋根を重ねる工事です。
現状のアスベスト入りスレートを解体せずに覆ってしまうため、飛散するリスクがありません。
またカバー屋根材は、ガルバリウム鋼板などスレートより耐久性が高いものが多く、今後のメンテナンス回数を減らすこともできます。
撤去・処分費用もかからないため、とてもコストパフォーマンスの良い工事でおすすめです。
ただ、屋根の下地が傷んでいたり、すでに雨漏りしていたりする場合は、カバー工事はできません。
傷んだ中身をそのまま閉じこめて、どんどん劣化をすすめてしまうからです。
万が一カバー工事後に雨漏りなどが起こってしまうと、結局すべて撤去して葺き替えが必要になり、非常に高額なリフォームになってしまいます。
現状の屋根が健康なうちならおすすめできる工法ですので、業者に点検してもらって選択肢に入れましょう。
>屋根カバー工法について詳しくはこちら
★★ 葺き替え
メリット
・アスベスト含有スレートを完全撤去できるため、今後の心配がいらない。
・20年以上もつ、耐久性の高い屋根に変えることができる
デメリット
・費用が高額
・撤去の際に飛散リスクがあるため、対策した工事が必要
※通常の葺き替え費用に加え、アスベスト処分用の費用が発生する
葺き替え工事は、今の屋根を撤去して新しい屋根に交換する工事です。
アスベスト入りの屋根と完全に離れることができます。
「現状でもほぼ無害とは分かっていても、やっぱりそんな屋根がずっと乗っているのは不安…」という方におすすめです。
ただ、葺き替える時にはアスベストが飛散する危険性もあります。
周辺への配慮のための養生(覆い)をきちんと行い、できる限り破砕しないように手作業での解体、また飛散しにくいように水を撒きながらの作業となります。
通常よりも手間や処分費がかかり、費用が高くなってしまいます。
今後のことと費用面のバランスを見て、工事を選択しましょう。
>葺き替え工事について詳しくはこちら
☆自治体の補助金が使えることも!
アスベスト入り屋根の撤去は、自治体による補助金・助成金制度が使える可能性があります。
危険度の低いレベル3である戸建ての屋根に適用できるかなど、条件も厳しいことが多いですが、出費を抑えて工事できるチャンスです。
葺き替えをお考えの方は、一度お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。
★ 塗装
メリット
・工事による飛散の心配がない
・最も安価に工事できる
デメリット
・今後も10年置き程度で塗り替えが発生する
・いつか寿命が来た時には葺き替えが必要で、アスベストについては先送りにしかならない
塗装工事は、スレート屋根では最も一般的なメンテナンスです。
アスベスト入りスレートは非常に頑丈で割れにくいため、定期的な塗装で十分長持ちさせることができます。
葺き替えやカバー工事と比べても非常に安価にできる工事です。
ただ、メンテナンスをしていても20~30年を過ぎるとスレートにも寿命が来ます。
その時には屋根の下地も傷んでいることがほとんどなので、いつか結局葺き替え工事は必要です。
つまり、アスベストの撤去・処分の時期を先延ばしするということでしかありません。
予算の都合がある方や、いずれ家を手放す・その頃にはどのみち建て替えるので今わざわざ葺き替える必要がない、という方におすすめです。
>スレート屋根の塗装工事について詳しくはこちら
4章 アスベスト屋根リフォームの業者選びの注意点
アスベスト入りスレート屋根の工事をするときは、業者選びをきちんと行いましょう。
万が一にも不適切な工事をされてしまっては健康被害にもつながりますし、屋根工事は大きな金額が動くものだからです。
悪徳業者に騙されたり失敗したりしないためのポイントを4つまとめました。
確認して、しっかりした業者を見極めましょう。
4-1 様々な屋根工事を取り扱っているか
屋根のリフォームを、塗装、補修からカバー、葺き替えまで、幅広く扱った実績のある会社を選びましょう。
屋根の状態や、皆様のご家庭の状況も考えて、最適な提案をしてもらえるからです。
アスベスト屋根のリフォーム方法はどれが最適かは、お家の状態やお住まいの方の考えによって異なります。
自分たちの得意な工事しかすすめないようなところでは、比較検討もできません。
また、本当は必要ないのに、不安をあおって大がかりな高額工事ばかりすすめる悪徳業者もいます。
プロとして様々な工事の知識経験があり、ご自宅に合った方法を教えてくれるところを選びましょう。
4-2 屋根の状態を写真に撮って報告してくれるか
点検診断の段階で屋根の状態をきちんと見て、写真を撮って説明もしてくれる会社を選びましょう。
そもそもアスベスト入りスレートなのか、工事内容はこれで適切なのか、の判断材料になるからです。
特に屋根を見ないで「築年数的にアスベストが入っているので葺き替えないとまずいです!」などと言う業者は論外です。
年数だけで判別できないことは1章で解説した通りです。
また、工事方法を選ぶにしても、現在の屋根全体の状態によってはおすすめする・しないがあるので、事前点検は必須となります。
さらに、単に口頭で言われるよりも、実際に写真を見せながら、「現在はこういう状態だったので、このような工事をおすすめします」と分かりやすく説明してもらえるのが最も信頼できます。
きちんと状態を教えてくれる誠実な会社を選びましょう。
4-3 アスベスト撤去の資格を持っているか(葺き替え時)
葺き替え工事をする場合は、アスベストの撤去・処分に関わる専門の資格を持った人がいるところを選びましょう。
安全で確実な作業に必要なものだからです。
具体的には、以下のような資格を持っている人がいると安心です。
■アスベスト取り扱いに関する資格
資格 | 内容 |
石綿作業主任者 | 技能講習を受けて発行される国家資格。 現場で被害防止の指揮、監督を行う人に必要となる。 |
石綿取扱作業従事者 | 特別教育講習を受けて発行される資格。 作業する者全員がこの資格を持っていなければならない。 |
※特別管理産業廃棄物管理責任者 | 吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材等の除去の場合に必要。スレートは該当しない。 |
※アスベスト診断士 | 一般社団法人による発行。アスベスト取り扱いについての適切なアドバイスができる。 |
※の2つは、工事の際に必須ではない。
安全に関わる工事ですから、きちんと教育を受けた人がいるに越したことは有りません。
有資格者がいる会社に依頼して、解体作業時の心配をなくしましょう。
4-4 ご家族のライフプランに沿った提案をしてくれるか
どの工事方法を選ぶにしても、あなたやご家族の事を考えた提案をしてくれる業者に依頼しましょう。
アスベスト入りスレートの工事は種類があり、費用や今後のお家のお手入れにも関わってくるからです。
特に、ご家庭のライフプランをきちんと考えて、それに沿った工事をすることが大切です。
「10年後には建て替えて2世帯住宅にしよう」という方に、今葺き替えをすすめてもあまり意味がありません。
どのみちそのとき解体するなら、今は塗装で持たせれば十分です。
逆に、「塗装なら安く済むけども、次の塗り替え時期が子供の進学時期に重なって出費が大変そう…」という方なら、カバー工事などをして長持ちさせたほうが良いでしょう。
それぞれの屋根の状態、予算、そしてご家族の将来によって、ベストな方法は異なります。
あなたのお家のために考えて提案をしてくれる業者を選び、これからも安心して暮らすためのリフォームにしましょう。
まとめ
アスベスト(石綿)は、以前は戸建て住宅のスレート屋根にも広く使われていました。
自宅の屋根がアスベスト入りかどうかは、築年数だけでは判別できません。
- ・2006年以前に製造された
- ・築15年以上でもひび割れ、欠けがほとんどない
- ・メーカーが公表している製品名・品番が該当
の3点を総合的に見て判断しましょう。
ただ、アスベストというと非常に危険な恐ろしいイメージですが、実はスレート屋根なら解体しない限りはほぼ無害です。
不安をあおってくる悪徳業者には騙されないようにしましょう。
リフォーム方法は3種類あります。
メリット・デメリットを踏まえて、ご自身に合ったものを選びましょう。
リフォーム工事の際は業者選びに注意してください。
- ・様々な屋根工事を取り扱っているか
- ・屋根の状態を写真に撮って報告してくれるか
- ・アスベスト撤去の資格を持っているか
- ・ご家族のライフプランに沿った提案をしてくれるか
以上4点を確認して、失敗しない工事にしましょう。
これからも安心して長くお住まいいただくために、お役に立てれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
>屋根工事の具体的な費用感については以下のページもご参照ください。
・屋根カバー工法の費用相場を解説!見積例とお得な良い工事6つのコツ
・屋根葺き替え費用相場がわかる!適正見積りのコツと費用を抑える方法
・知らないと損!屋根塗装の費用相場と安くて良い工事をする9大原則