家の屋根は「スレート」と聞いたけれど、実際どんなものなの?
業者から言われて、初めて名前を知ったという方も多いのではないでしょうか。
スレートとは、セメントが主成分の薄い板状に加工された建材です。
人工(化粧)スレート、カラーベスト、コロニアルとも呼ばれています。
現在、日本の住宅の8割がこの屋根材を使用して建てられています。
とても人気のある屋根材ですが、何もメンテナンスしないままにすると劣化し、雨漏りの原因となってしまいます。
雨漏りが起きてしまってからでは、高額な修繕費用が余計に掛かってしまって非常にもったいないです。
そこでこの記事では、スレートの長所や短所、メンテナンスが必要な時期と方法を紹介します!
費用の無駄なくお家を守るためにも、ぜひ最後まで読んでみて下さいね。
1章 スレートとは
スレートとは、内壁、外壁や、屋根、天井に使用される建材の一種です。
主成分はセメントで、そこに木片パルプなどの繊維質をつなぎとして練り込んでいます。
コロニアル、カラーベスト、化粧スレートとも呼ばれています。
日本の一戸建てでは主に屋根材として最も普及しています。
なぜなら、和瓦の半分程度の軽さ(約21kg/㎡)で、地震の際の揺れを軽減できる屋根材だからです。
この屋根材が普及したのは、阪神淡路大震災で瓦屋根のお家が倒壊してしまい、軽量な屋根材にする取り組みが始まったことがきっかけでした。
「天然スレート」と「人工スレート」 スレートには2種類あります。 粘板岩や頁岩という天然の石が材料の「天然スレート」と、 セメントや繊維質のものが材料の「人工スレート」です。
日本の一戸建てで普及しているのは、人工スレートです。 なぜなら、天然スレートは生産量が少なく、施工できる業者が少ない為です。 また人工スレートよりも高額なため施工している建物も少ないです。 但し天然スレートは、ほかの屋根材に出せない高級感のある風合い、高い防火性と防水性を持っている為、東京駅などの公共建築や旧邸宅などの屋根に使われています。
■東京駅(丸の内駅舎)
■旧岩崎邸 |
2章 6つのメリット
スレート屋根は非常にたくさんのメリットがあります。
ここでは大きく6つに分けて紹介します。
金額だけはなく、良いところもしっかり知っていると安心して選べますよ。
2-1 軽くて地震に強い
スレート屋根は地震に強いことで知られており、とても人気のある屋根材です。
重量が和瓦(約40kg/1㎡)の半分ととても軽いので、地震の際の揺れを抑えられるためです。
その為、日本の住宅の8割以上がこの屋根材を使用しています。
2-2 カラーバリエーションやデザインが豊富
人工スレートは商品ごとにその色やデザインも少しずつ異なります。
そのため、新築や葺き替えの際は沢山あるデザインや色からお家にピッタリなものを選べます。
最近では板状のシンプルなデザインだけでなく、意匠性の高いものも増えてきています。
また、屋根塗装の際も、様々な色の中から外壁に合った色で塗り替えることが可能です。
人工スレートの商品と施工例3選
■グランネクスト(ケイミュー株式会社)
■施工例
出典:ケイミュー株式会社
施工した際に、ひし形の模様になるのが特徴です。
外壁にも施工できるので、より意匠性の高い建物にすることが出来ます。
■プラウドナチュラルグラッサ(ケイミュー株式会社)
■施工例
出典:ケイミュー株式会社
天然石のような凹凸のある風合いや、グラデーションの色合いで高級感のある印象に仕上がります。
■シャッフルカラー(ケイミュー株式会社)
同じシリーズの色違いの屋根材を混ぜて施工する屋根材です。
屋根・外壁どちらにも施工可能で、1色では出せないデザインや雰囲気を演出できるのが魅力です。
出典:ケイミュー株式会社
スレート屋根の色を塗装で塗り替えた施工例2選
■屋根をグリーン、外壁をイエロー系で
色の違いがはっきりした組み合わせと、鮮やかなグリーンで若々しい印象になるのが魅力です。
■屋根をダークブラウン、外壁を白とブラウンに塗装
外壁の一部と同系色を使うことで、統一感を出しています。モダンな印象の配色がお洒落です。
2-3 早めのメンテナンスで長持ちさせられる
傷みを放置せず早めに塗装メンテナンスを行うことで、20年以上は長持ちさせられます。
なぜならスレートの劣化は水を吸収することで起こるものが殆どだからです。
防水塗装で水による劣化をなくせば雨漏りも防げるので、屋根だけでなくお家全体を守ることができるようになります。
2-4 様々な形状の屋根で使える
スレート屋根は施工方法や形状がとてもシンプルで、横長の屋根を半分から三分の一ずつ重ねて葺く方法となっています。
そのため、様々な形状の屋根に施工が可能です。
■スレート屋根の形状
■スレート屋根
出典:ケイミュー株式会社
2-5 施工できる業者が多く、何かあった時も相談しやすい
新しくスレート屋根にする時はもちろん、メンテナンスの際も対応できる業者が多いのが魅力です。
なぜなら、扱いやすく日本で一番普及している屋根材の為です。
相談できる業者が多い分、数あるなかから一番納得できる業者を選べます。
2-6 他の屋根材と比べ、施工費用が安価
スレートは、同じ面積の屋根を施工する場合、他の瓦や屋根材と比べ安価で施工できます。
なぜなら、ほかの屋根材とくらべシンプルな構造で、必要なものがスレートと金具のみと、材料が少なくコストも抑えられるためです。
■屋根材ごとの材料費と施工費用(㎡あたりの価格)
スレート | 5,000~7,000円/㎡ |
金属屋根(ガルバリウム) | 6,000~8,000円/㎡ |
和瓦 | 8,000~10,000円/㎡ |
和瓦を同じ面積で施工する場合、瓦だけでなく漆喰や桟木、のし瓦等、瓦を固定するために必要なパーツが多いので材料費が多く掛かってしまいます。
その為、コストを抑えつつお家を守りたい!という方の多くはスレートを選びます。
3章 2つのデメリット
スレートはとても優れた建材ですが、当然デメリットも存在します。
大きく2つをご紹介します。
デメリットや対処法も理解して、大切に住んでくださいね。
3-1 衝撃で破損する場合がある
台風で飛んできたものがぶつかったり、雹があたってしまったことが原因で割れてしまう場合があります。
スレート自体が薄い分、ほかの屋根材よりも衝撃に弱いためです。
その為、最低年に一度は割れている箇所がないかどうか、必ず点検で見てもらい、早期発見をしましょう。
例えば台風の後に見てもらえば、台風が原因で割れてしまったものがあっても早めに補修ができます。
万が一割れた箇所が見つかっても、そこだけ補修したり一部交換が可能です。
割れの程度により金額は変わりますが、約1~5万円程で補修可能です。
一部が破損したからと言って突然大掛かりな工事になることはありませんので、ご安心ください。
ただし放っておくと割れが広がったり、落下してきてケガの原因となる危険もあります。
スレートの割れは早期発見し、必ず補修を行いましょう。
割れてしまったスレートの補修方法・価格についてはこちらの記事をご覧ください。
3-2 経年劣化が雨漏りの原因となる
建ててから何年か経つと、スレートが傷み、雨漏りの原因となります。
何年も雨風や紫外線を浴びることで表面が劣化し、屋根の表面やひび割れから雨水が侵入してしまうためです。
それを防ぎ長持ちさせる為に、再塗装などの適切なメンテナンスが必要となります。
次の章で、メンテナンスが必要な目安を紹介します。
4章 メンテナンスが必要な時期と症状
メンテナンスが必要な時期と、どんな症状がでたらするべきなのかを紹介します。
屋根は外から目視で確認するのが難しいだけでなく、年数が経っていなくても、劣化してしまうケースもある為です。
定期点検をしっかりしてもらい、症状をチェックしましょう。
4-1 築5年目以降は点検必須!
築5年以上経ったら、年に一回は必ず屋根点検を業者に依頼しましょう。
その際に、少しでも劣化症状が出ていれば塗装が必要です。
一般的に塗装は10年置き、と耳にするかもしれませんが、お家の立地条件によっては、築10年未満でも劣化し始める場合があるからです。
劣化は再塗装しない限り止められません。
劣化が進むことでスレートが割れるだけでなく、そこから雨漏りしてしまう恐れがあります。
次の4-2でどのような症状が出てきたら必要になるのかを紹介します。
あてはまるものが1つでもあれば、再塗装を依頼しましょう。
4-2 メンテナンスが必要な症状
メンテナンスが必要な症状を4つ紹介します。
1つでも当てはまるものがあれば、メンテナンスが必要です。
症状が出ているということは、雨水が侵入する状態となっているサインのため、放置すれば雨漏りの原因となり、家の寿命まで縮んでしまうためです。
点検を依頼する際は、このポイントはかならず見てもらうようにしましょう。
①苔
屋根が茶色に変色している箇所があれば、苔が繁殖しているサインです。
スレートが劣化し水をはじかなくなると発生します。
苔の胞子はじめじめしているところを好む性質があるためです。
苔が繁殖すると、スレートに根を張り強度を落としてしまう原因となります。
②ひび割れ
ひび割れは、スレートが吸水し、晴れた日に乾いて乾燥するのを繰りかえすことで発生します。
なぜなら、水分を含むことで膨張し、乾くと収縮する、という動きを繰り返すことで、その負荷に耐えきれなくなるためです。
細いひび割れでも、そこから雨水が侵入することで雨漏りする原因となります。
③欠け・割れ
スレート自体が欠け落ちて割れてしまっています。
小さなひび割れも放置すると広がってしまったり、衝撃で割れてしまうことがある為です。
割れは数か所程度なら、補修や割れてしまったスレートの交換のみで直せますが、全体が割れてしまうと塗装や補修では直せず、修繕費用が多く掛かってしまう場合があります。
④反り
スレートが端から反っている状態です。
水を吸ったスレートが晴れた日に乾燥した際、端から乾くためです。
反った状態をそのままにしていると、隙間から雨水が侵入し、雨漏りの原因となります。
状態によっては補修だけでなく、ふき替えやカバー工事が必要となり、余計にリフォーム費用が掛かってしまう場合があります。
補足:棟板金の釘 スレート本体の劣化以外にも、屋根の頂上にある「棟板金」も一緒に点検をしてもらいましょう。 棟板金は屋根の頂上からの雨の侵入を防ぐためのパーツです。 これを固定する釘が抜けていると、その隙間から雨が侵入し雨漏りの原因となってしまいます。
■棟板金の釘が抜けている状態 ■補修後の棟板金 浮いてしまった釘を全て打つだけでなく、上からコーキングという補修材で釘が抜けにくくしてもらうと安心です。 早いと、お家を建てて3年から5年ほどで症状が現れます。 少しでもあてはまる症状があれば、スレートのメンテナンスのついでに浮いている釘を打ってもらいましょう。 |
5章【症状別】メンテナンス方法3種
スレート屋根のメンテナンス方法は以下の3つです。
■メンテナンス方法とその費用の比較
メンテナンス方法 | 工事費用(30坪、80㎡の場合) |
塗装工事 | 37~70万円 |
カバー工事 | 70~130万円 |
葺き替え工事 | 75~160万円 |
屋根の劣化状態により、適切な方法が異なります。
点検を依頼し、どのような状態か知ったうえであてはまるものを選ぶ必要があります。
症状ごとの適切な工事についてそれぞれ解説していきます。
5-1 表面が傷んでいる場合は塗装工事
スレート表面の苔やひび割れが出ているのみの状態なら塗装工事で長持ちさせられます。
塗装工事は、屋根を洗浄したあとに補修や塗装を行い水の侵入を防ぐ工事です。
スレートは紫外線や雨風で劣化してしまっていますが、塗装することで再度水をはじくようになり、苔やひび割れが起こらない状態にできるからです。
既存のスレートをそのまま使用できるので、3つのなかでは最もコストを抑えられるのも魅力です。
どのように施工を行っているのかを、当社の施工事例を使って紹介します。
①施工前 ②表面の苔や汚れを洗い流してから、ひび割れの補修も一緒に行います。 汚れたままだと、折角塗装しても剥がれてきてしまうためです。 また、補修も一緒におこなった上から塗装すればひび割れから再び水が入ってしまう心配がありません。 ③その後、塗料を定着させる為の下塗り材を塗り、上塗り用の屋根塗料を塗装し、完成です。 【施工後】 |
劣化症状が少しでも出ているなら、早めに塗装を行うことで長持ちさせましょう。
また、使用する塗料によって、どの位長持ちさせられるかが異なります。
耐用年数や費用についてはこちらの記事をご覧ください。
5-2 全体がひび割れている場合はカバー工事
屋根全体がひび割れている場合は、カバー工事をすることでお家を長持ちさせましょう。
カバー工事とは、既存のスレートの上から新しい屋根材を被せる工事です。
屋根全体が弱っている状態だと、塗装を行っても割れやすいままで、あまり長く持たせられない可能性があるからです。
全体がひび割れているかは、メンテナンスせず何年経っているかや、立地条件によっても差が出ます。
15年以上何もメンテナンスしていないのであれば、塗装以外にカバー工事もメンテナンスの候補に入れておきましょう。
カバー工事がどのように行われているのかを、紹介します。
ここでは、スレートに「オークリッジスーパー」という屋根材を使用しています。
薄くて軽い屋根材なので、重ねても家に負担がかかりにくい素材です。
①施工前 30年以上何も塗装をしていなかったため、苔やヒビが屋根全体に出てしまっています。 ②塗装はしないため、既存のスレートの上からこのまま工事します。 最初に、雨水の侵入を防ぐ為の防水紙を屋根全体に敷いていきます。 ③屋根材を下から上に葺き、完成です。 【施工後】 ゴムシートの表面に、細かい石の粒を接着した屋根材のため、一色での塗装では出せない落ち着いた風合いも魅力の一つです。 |
カバー工法のメリットや注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
★「塗装が適さない屋根材」の場合も、カバー工法がおすすめ
屋根全体がひび割れている状態でなくても、カバー工事が最適なケースがあります。
塗装してもすぐ割れやすい・剥がれてしまうといった、塗装が適さない屋根材の場合です。
スレート屋根の中には、こうした商品もいくつか存在しています。
折角行った工事での失敗を防ぐためにも、点検をしてもらった際に、塗装が出来る屋根材かどうかも合わせて質問しましょう。
塗装が適さない種類の屋根材については、こちらの記事をご覧ください。
5-3 屋根が雨漏りしている場合は葺き替え工事
屋根から雨漏りが発生している場合は、葺き替え工事を行いましょう。
葺き替え工事とは、傷んでしまったスレートやその下地を撤去し、新しい屋根材や下地で屋根を作り替える工事です。
なぜカバーではだめかというと、
雨漏りしている状態で塗装やカバー工事を行ってしまうと、屋根やその下地に浸み込んだ雨水がそのまま残ってしまい、お家の劣化が止められないためです。
本来葺き替えが必要な状態で、塗装やカバー工事を行っても、余計な費用や時間がかかってしまいます。
それを防ぐためにも、一番屋根の状態にあった工事を行いましょう。
■スレート→スレートへの葺き替え工事 ①【施工前】 ②既存の屋根材やその下地をすべて撤去し、新しい下地を施工します。 ③上から、防水紙を全体に施工します。 ④新しいスレートを上から葺き、完成です。 【施工後】 この事例では、外壁の塗装も一緒に行っています。 屋根のふき替え・外壁塗装を一緒に行うことで建て替えることなく、お家を長持ちさせられます。 また、スレートを外壁の色に合わせて選べるのもメリットです。 |
工事の内容や費用について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
スレートは軽く、地震に強いだけでなく、早めにメンテナンスを行うことで、長持ちさせられることが魅力です。
また、意匠性の高い製品が多いうえに、塗装でも色を変えられるので、お家の雰囲気に合った色で美観を保てます。
4つの劣化症状のうち、1つでも表れた際には早めに塗装メンテナンスをしましょう。
スレートをそのまま長持ちさせられるので、コストも抑えやすくなります。
屋根の劣化症状は目視での確認が難しいです。
必ず業者に点検を依頼し、状態を確認したうえで最適なメンテナンスを選びましょう。
お読みいただきありがとうございました。
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